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LIVE REPORT

LUNA SEA

『The Holy Night -Beyond the Limit-』

2016年12月24日
@さいたまスーパーアリーナ

ワンマンライヴとしては、ファンクラブGIGを除いて2015年3月以来となるLUNA SEAの2デイズ公演2日目。10月に行なわれたビジュアル系音楽フェス『VISUAL JAPAN SUMMIT2016』で“LUNA SEAここにあり!”という圧巻のパフォーマンスを魅せ、オーディエンスの期待値はさらに高まっていた。

教会のステンドグラスとキャンドルの映像がステージに投射され、クリスマス・キャロル「O come, O come, Emmanuel」が流れる荘厳な空気の中、メンバーが現れる。パッと全ての音が消え、ピンスポットで照らされるRYUICHI(Vo)。“I’m dreaming of a White Christmas”とアカペラでしっとりと包み込むように「White Christmas」を歌い上げると、客席から歓喜の拍手が沸き上がった。そのまま前方から光が放たれて、アルバム『A WILL』から希望へと向かう力強いナンバー「Anthem of Light」がスタート。冒頭から幸福感にあふれ、オーディエンスはメンバーへ向かって手を差し伸べて一緒に歌う。2曲目はライヴ定番曲「Dejavu」。真矢(Dr)とJ(Ba)のリズム隊が重厚に支え、SUGIZO(Gu&Vi)とINORAN(Gu)のギター隊が華やかな音で舞う。
RYUICHI は最初のMCで12月23日と24日がLUNA SEAにとって大切な日であることを語り、“12月23日と言えば、どこどこの会場でこの曲やったよねとか、みんなあの時こんな感じだったよね。すごい盛り上がったよね、とか。そういうことを思い出しながら作ったのが、昨夜とそして今日のメニューです”と今回の2デイズライヴのセットリストはどういう意図で選ばれたかをファンに伝えた。

続いてプレイされたのは、2016年6月にリリースされた「Limit」。サビではRYUICHIが発する高音が上から飛んできて、剥き出しになった荒々しさが襲ってくるスリリングな曲だ。RYUICHI は途中で“Come on! みんなー!”とオーディエンスも一緒に歌うよう促し、LUNA SEAの新たな曲がライヴで育っていく瞬間を目の当たりにした。
そして2017年、彼らの結成記念日である5月29日に日本武道館でライヴが行なわれることに触れ、RYUICHIが“next song 「LUV U」”と紹介。先ほどMCで“12月23日と言えば、この曲やったよねと思い出した”と話していたように、95年12月23日、初めての東京ドーム公演『LUNATIC TOKYO』でも演奏された艶やかなナンバーが蘇ったことで、高い歓声が上がった。冒頭でJのうねるベースの音が下から突き上げてきて、オーディエンスを底なし沼へと引きずり込んでいく。SUGIZOの倒錯的なギターソロが追い打ちをかける。この日はINORANがクラップを入れることによって、この曲のダンサブルな面も知れたのも、新たな収穫だった。さらにノイズ音が起き、軽やかな「AURORA」へ。「LUV U」が生み出したダークな世界から一転、真っ白な天上の世界へと塗り替えられていった。

SUGIZOがバイオリン、さらにINORANだけでなくRYUICHI のアコースティックギターも加わり、最新シングル「Limit」のカップリング曲である切ないバラード「I’ll Stay With You」へ。RYUICHIのヴォーカルに寄り添うINORANのコーラスがやさしく溶けていく。抑えた演奏と語りかけるようなヴォーカルが新鮮で、LUNA SEAの新しい可能性をまだまだ感じる。INORANとRYUICHIは向き合い、最後の一音まで呼吸を合わせてギターの音を締め括った。
96年12月23日のライヴ『真冬の野外』でも演奏されたインディーズ時代からの大曲「MOON」。SUGIZOのディレイのかかったギターに乗るRYUICHIの声。神秘的な物語へいざなう。後半、RYUICHIの絶叫が響きわたり、目の前で繰り広げられる圧倒的な演奏に、じっと聴き入るオーディエンス。いつ演奏されても特別な存在感を示す曲だ。

ライヴ中盤に行なわれた真矢のドラムソロでは、多彩な音を聴かせてくれる。それに応えるオーディエンスからの真矢コールも負けじと迫力満点。真矢は“みんな、俺のドラムソロより全然いい声しているな。もっともっとその声を聴かせて。まだまだいけんだろ! もっとこいやー!”。会場がより一体になったところで、Jのベースソロに突入。野性味あふれる音をグイグイと鳴らし、観客を煽る。“このステージには、後ろの奴らの声も届いているから、安心していいぜ! 最後の最後の最後の列まで見えるからなー!”。いつでもファンへの思いを熱く伝えてくれるJ。そんな彼のやさしさが詰まった言葉だった。
“今日もドラムソロ、ベースソロで、すっげえボルテージ上がったでしょ? みんな。やっぱこれだな”と満足気に話すRYUICHI。“なんかLUNA SEAの5人の、そしてみんなの思いが集まったここに、何かいるよね? でっかい塊がさ。それをなんて呼ぶか分からないけれど、俺たちとみんなが一緒に育ててきたものだと思うんだよね”。LUNA SEAのライヴを一度でも観たことがある人なら、彼の言うことがよく分かるだろう。目には見えないけれど、彼らが演奏すると、巨大なエネルギーが会場の中で渦巻いていると感じる。それはメンバーも同じで、その塊を体感しながらステージに立っているとRYUICHIは語った。
「TIME IS DEAD」では、コーラスで思い切り熱く叫ぶINORANが印象に残った。こういったふとしたシーンで、各自のソロ活動等で培ってきたものが発揮されて、LUNA SEAで新たな化学反応を起こしているのが分かるのもとてもワクワクする。

オーディエンスがアンコールの掛け声の代わりに「きよしこの夜」を歌う。しばらく経つと、客席からいくつもの光が灯される。スマホのライトを光らせ、歌に合わせてゆっくりと左右に振る。歌声に応えてステージにJが現れ、笑顔で客席を見つめる。客席の照明が一層落とされて、カメラは彼の背後から客席を映す。夜空のように美しい風景がそこに広がっていた。
“みんなの本当に美しい光と声を聴かせてもらったので、今度はLUNA SEA5人からLUNA SEA初のクリスマスソング「HOLY KNIGHT」を贈ります”。この日のために作られたLUNA SEA初のクリスマスソングである同曲。INORANのクリーンなアルペジオが響き渡る。導入は童話を連想させるかわいさもありながら、ストリングスが入り、次第に壮大になっていく。頭上ではミラーボールが回り、祝福するように雪が降る演出が加わっていく。LUNA SEAらしい、透明感のあるナンバーだった。

ニューソング披露の後、メンバー紹介をすることに。“すごい景色だね、J。”とRYUICHIが問いかけると“雪だね”と返すJに会場から大爆笑が起きる。“そっちじゃない。雪だけど(笑)”と予想を超える回答にRYUICHIは苦笑い。次にINORANを紹介した際も“INORAN、28年前にこの景色想像してた?”と尋ねると、INORANは“雪だ”とJと同じようにボケを披露。そして彼は“でも、本当にこの景色を28年後に、僕ら小さいところから、ライヴハウスから初めてさ。武道館を目標にしてさ...”と話し続けた。“え、ちょっと長い?”と客席に問いかけると“いやいや、まだ始まったばかりです”とINORANをフォローするRYUICHI。さらに“J、ベース置かないでね(笑)。あ、SUGIZOも置こうとしている”とメンバーのリラックスした様子が伝えられ、それまでの緊張感に満ちたステージが和やかな雰囲気に変わっていった。INORANは“でも、まじめな話、28年も経って、このバンドで、この景色をみんな見せてくれて、どうもありがとう!”。SUGIZOは“デビューして25年だから、あと25年は頑張らないとね。生きている以上ステージに立って、これが我々の聖地。そして、みんなが俺たちのホーム。俺たちはここに、生きている限り、必ず帰ってくるつもりです”。終幕を経ながらも、これまで長い年月第一線で活躍し続け、期待に応え続けてきた彼らだからこそ語れる言葉だろう。

最後にRYUICHIが紹介され、彼は真矢に語りかける。“真ちゃんしか見れない景色があるのよ。だっていつも俺たち4人の背中越しにファンのみんなを見ているじゃん?”すると真矢は“あなたたちね、4人の背中越しの君たちの笑顔をご覧なさいって話だよ。本当に感動するよ。今度ドラムのところに、みんなに向けたカメラを置きたいくらい。まぁ、8割は俺の顔アップだけどね”と笑わせ、“今日はみんなの声援と笑顔という、俺たちの演奏でクリスマスの、めっちゃいいプレゼントの交換ができたと思いますので、ありがとう”と締め括った。

INORANが中央で高々と手を上げ、クライマックスの「TONIGHT」へ突入。会場は今日全ての力を出し尽くそうと大盛り上がりに。そして、RYUICHIが“お前ら全員でかかってこいー!”と叫び、“「I wish」!”の掛け声とともに銀テープが舞い、ラストナンバー「WISH」へ。“Lalala...lalala...”と手を振りながら声をひとつにするメンバーとオーディエンス。この場にいる誰もがこの時間を永遠に共有したい、という思いを抱いていたと感じる。

全員で手をつないでジャンプをしたあと、サンタ帽を被ったJがピックを投げながら、SUGIZOに帽子を渡す。Jから受け取った帽子を被り最後まで残ったSUGIZOは、心を込めた長いお辞儀でオーディエンスに感謝を伝える。そのままステージを去るのではなく、もう一度客席をじっと見つめて手を振った。

今年も彼らとすばらしいクリスマスを祝えたこと。またひとつLUNA SEAの歴史に立ち会えたことを、心から喜びたい夜だった。

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