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LUNA SEA ライヴレポート

【LUNA SEA ライヴレポート】 『LUNA SEA 30th Tour -CROSS THE UNIVERSE- GRAND FINAL』 2022年1月9日 at さいたまスーパーアリーナ

2022年01月09日
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世界的巨匠スティーヴ・リリーホワイトのプロデュースによるアルバム『CROSS』を引っ提げ2020年2月にスタートした『CROSS THE UNIVERSE』ツアー。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策によって、各公演は延期/再延期を余儀なくされた。そんな先の見えない中でも“音楽を止めない”というメンバーの意思により、換気休憩を挟む二部構成でのスタイルでツアーを継続。だが、これまでにない状況下で、RYUICHI(Vo)の喉に異変が起きるという事態になった。そのためツアー終了後にRYUICHIは声帯にできた静脈瘤の除去手術を行ない、バンドとして充電期間に入ることが昨年12月に発表された。2022年1月8日と9日のさいたまスーパーアリーナでの『GRAND FINAL』公演は、2年をかけたツアーの集大成であり、どんな状態であっても一途に自分たちの音楽を届けてきた、彼らの生き様を見せるライヴとなった。

RYUICHIが右手を掲げて、希望の光にあふれるナンバー「LUCA」が始まった第一部。オーディエンスはステージに向かって、自分たちのパワーを届けるように手を振り続ける。「LUCA」に《君が羽を 痛めたなら 癒えるまでずっと 星を灯すよ いつまでも》という歌詞があり、そのフレーズ部分が演奏されている時、オーディエンスからLUNA SEAへの気持ちそのものだと感じた。クライマックスのコーラスでは、INORAN(Gu)が力強い声でRYUICHIのヴォーカルを支えていたのも特筆すべきところだろう。2曲目は数えきれないほど演奏されてきた「Déjàvu」だが、これまでにない緊張感が漲っている。“さいたまスーパーアリーナ、お前たちの声を聴かせてくれ。いくぞー!”と声を張り上げるRYUICHI。その切迫した声から、どんなことが起きようとも、一切守りに入ることなく攻め続け、限界へ挑戦していく覚悟であることが痛いほど伝わってきた。クラップとともに始まったのは『CROSS』収録の「Pulse」。アルバムが発表された2019年12月時点では新型コロナのことはまったく予想されなかったが、この曲で訴える《君よ恐れずに この空打ち抜け 今 闇さえ切り裂け》は、まさに今の時代を映している気がした。彼らが強力に演奏してくれるおかげで、コロナ禍の中でも次に向かう気持ちが必要だと感じる。

そして前半、もっとも高いエネルギーが要求されると思われる静と動の「PHILIA」へ。覚醒を促すようなSUGIZO(Gu)のギターがうなりを上げ、RYUICHIの激しいヴォーカルにシンクロしながら、真矢(Dr)が渾身のドラムを叩く。高みへと一気に駆け上がったあと、J(Ba)が弾くピアノの重厚な音が鳴り響いてその熱を鎮める。MCでRYUICHIはコロナ禍により、今まで以上にライヴができることがどれだけ奇跡なのか気がづかされたと語り、“普段モヤモヤしている気持ちを全部拭い去って、みんなにアツい気持ちで帰ってもらいたいと思います。楽しんでください!”と告げる。

前半のハイライトとなる幻想的なナンバー「anagram」でのRYUICHIは、まさに魂を削っての歌唱だった。この日はWOWOWで本公演の様子が中継されていて、映像としても残る。いつでも正確なピッチでどこまでも届きそうなクリアーな歌声をずっと聴かせ続けてきた彼が、今どんな想いを抱いているのか我々には計り知れない。それでも何も隠さず、全てを曝け出す勇気──自由に声が出ないギリギリの状態の中でも、これまでにない表現に昇華しようとしていることが伝わる。どんな時でも高みを目指すその姿を、オーディエンスは息を飲んで見守っている。そんな「anagram」の濃密な世界から、自由に飛び回る「BLACK AND BLUE」の空気感に一瞬で塗り替わる。この曲はいつも多幸感にあふれるが、今日はほろ苦い想いが混ざっていた。特に最後、ひとつになっていくコーラス部分があり、オーディエンスはこの日ほどコロナ禍で声が出せないことをもどかしく思ったことはないのではないか。それでも精いっぱいのパフォーマンスを見せてくれた5人に対して、会場から力いっぱいの拍手が送られた。

20分間の換気が行なわれ、第二部はライヴの盛り上がりを加速させる「JESUS」からスタート。おそらく会場にいる人々は、この待っている間、心配で気が気でなかっただろう。しかし、ステージが再開されると、それを吹き飛ばすような演奏を届けてくれた。30年間最前線を走ってきた彼らの貫禄を改めて実感する。「DESIRE」や「SHINE」など、各時代の楽曲に加え、『CROSS』から「Closer」も織り交ぜ、これまでのバンドの歩みを辿る。MCではRYUICHIが“やっぱりライヴはいいですね、みなさん。やっぱりライヴをやっていると、何かが変わるよね。意識が変わるっていうか、強くなるっていうか、燃えてくるというか。やっぱり俺たちにとってはライヴの注入が大切なようですね”と語ったのも印象深い。

中盤では、各公演日でしか演奏されていない全20曲から、SLAVE(ファンの呼称)が聴きたい曲を募り、その中の上位2曲がファイナルの2デイズで演奏されることが事前に告知されていた。本公演に選ばれたのは、LUNA SEAが終幕をした年にリリースされた7枚目のオリジナルアルバム『LUNACY』に収録されている「FEEL」。前日は同アルバムに入っている「a Vision」が選ばれており、終幕があり、それを乗り越えたというLUNA SEAの歴史を象徴していたとも言える。「FEEL」は緩急のバランスが絶妙で、硬質な音色は2000年アルバム発売当時の色が濃く出ているが、今聴いてもドラマチックだ。また演奏が円熟味を増し、さらに艶っぽさが出ていた。また、本公演で印象的だったのはINORANのコーラスだった。特に「ROSIER」ではサビの部分はRYUICHIとふたりでかけ合うように歌う。INORANのコーラスが全面に押し出されることで、曲に今までとは違った厚みが出て、彼らの代表曲に新たな色が加わった気がした。

そして、アンコール。1曲目に演奏されたのは、コロナ禍で生まれた「Make a vow」。その時の気持ちを忘れず、まだ傷ついた世界にいるのだというメッセージを、この場にいた全員が受け止めたことだろう。RYUICHIの低音ヴォーカルはビロードのように柔らかで深みがあって美しく、まさに唯一無二。いつくしむような演奏を披露し、最後は4人が真矢のドラムを囲んだ。

メンバー紹介では、それぞれ抱えている想いが伝えられた。RYUICHIに紹介された真矢はドラムソロを披露したあと、“本番中に泣きそうになったくらい、言うことがたくさんあって”とゆっくりと語り出す──“この2年間は、そんなに心中も平穏ではなかったと思ったけれど、でも結果、みんなこうやって笑顔になっているな...とか。そして、RYUちゃんが全身全霊で、思いっきり表現してくれて...”と言葉に詰まって涙を堪える場面もあり、“この5人と、それを支えてくれるみんな、本当に本当に誇りに思って、愛してます!”と想いを語る。さらに“それから昨日のアンコールで、ずっとズボンのチャックが開いてました”と会場の空気を明るくしてからJにつなぐ。“真矢くんは照れ隠しで、最後にそういう笑い話にしたけれど、実際本当に、バンドのみんな、心からみんなに感謝しています。昨日のライヴでも言ったけれど、俺たちはライヴしかなくて。この場所が本当に大好きで。こうやってみんなと一緒に感じ合えて、ここからいつも何か新しいものが生まれてきた、そんな場所です”とJ。その言葉どおり、LUNA SEAはいつもライヴで全てを体現してきた。多くは語らなくても音で伝えてくれた。そして、“RYUが完全になるまで、俺たちバンドは充電期間に入りますけれど、それも含めて一瞬一瞬を、今後も全力でいきたいなと思っているんですけど。ここから先、また加速していくためのヒントがいっぱいあった2年間だったと思います。なんか俺たち、強くなったんじゃないかな?”と言葉を続けた。

その後、INORANは“ほとんど言われちゃったからさ”とおどけながらも“思えばこの2年間、ロックバンドだけじゃなくて、音楽業界だけじゃなくて、いろいろな職業の人、そして地球上すべての人が同じ歩幅で歩くこと、コロナのおかげで学ぶことができたと思います”と振り返り、“僕らはこのツアーが終わったら。ちょっと行ってくるからさ(笑)。また必ず会おうぜ!”と約束。SUGIZOは“この状況をかいくぐって、音楽が、アートが、エンターテインメントが、人生に必要なんだと。これは不要不急じゃない。生きるために必要なんだと。それを証明してみせる、そういう責務があると思います”と自分たちの使命について語り、“命ある限り、俺たちはLUNA SEAという旅を続けます。LUNA SEAというツアーを続けます。でも、明日、誰かがいなくなるかもしれない。明日がないかもしれない。もっとも大切なことは、今、この一瞬一瞬を全力で生きましょう。そして、最後までお互いLUNA SEAでいましょう”と締める。最後にRYUICHIが大阪公演後に声帯の手術を行なうことを自ら告げ、“光しか見えてない”と、静かに、でも力強く自分の想いを話す。“何よりも本気なれる人生という中で、本気になれる仲間と出会えた。そして、今もこうして、この景色を眺めている。必ず帰ってきます。待っていてください”とオーディエンスに宣言。本気とはどういうことなのか、いつでもRYUICHIはライヴで身をもって教えてくれているが、今日はその究極をオーディエンスの脳裏に焼きつけたことだろう。

メンバー紹介後はいつものライヴと変わらず“お前らかかってこい! かかってこい! かかってこい!”と絶叫し、「WISH」に。これまでいろいろなWISH、願いを乗せてきたこの曲。今はただひとつ、彼らが語った言葉が現実になることだけだった。ラストナンバーは「so tender...」。『CROSS』では静かに終わる楽曲だったが、ツアーを通して、全ての想いを受け止める壮大なものへと変貌していた。そして、RYUICHIはオーディエンスひとりひとりに刻み込むように、最後の最後まで会場にロングトーンを響かせるのだった。

LUNA SEAは必ず帰ってくる。逆にこのライヴを通して、オーディエンス全員に“君は精いっぱい生きているか? 全力を尽くしているか?”という問いを投げかけたのだと感じたのは筆者だけではないはずだ。5人に置いていかれないよう、前へ進んでいきたい。

撮影:田辺佳子、岡田裕介、横山マサト/取材:キャベトンコ

LUNA SEA

ルナシー:1989年、町田プレイハウスを拠点にライヴ活動を開始(当時の表記は“LUNACY”)。90年にバンドの表記を“LUNA SEA”に変更し、翌91年に1stアルバム『LUNA SEA』をリリース。そして、92年にアルバム『IMAGE』でメジャーデビューを果たす。00年12月26日&27日の東京ドーム公演を最後に終幕を迎えるが、07年12月24日の満月のクリスマスイヴに東京ドームにて一夜限りの復活公演を経て、10年に“REBOOT(再起動)”を宣言。13年12月には13年5カ月振りとなる8枚目のオリジナルアルバム『A WILL』を発表する。その後、バンド結成25周年を迎え、自身初の主宰フェスとなる『LUNATIC FEST.』も開催し、17年12月にはオリジナルアルバム『LUV』を、19年12月にはグラミー賞5度受賞のスティーヴ・リリーホワイトとの共同プロデュースによる10枚目のオリジナルアルバム『CROSS』をリリース。

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