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LIVE REPORT

DIR EN GREY

『TOUR2013 TABULA RASA』

2013年05月16日
@新木場STUDIO COAST

ミニアルバム『THE UNRAVELING』を引っさげて4月から行なわれたツアー『TOUR2013 TABULA RASA』のファイナル。彼らのホームグラウンドとも呼べる新木場STUDIO COASTでの公演は、その場にいた全ての人間にとって忘れ難いものとなった。昨年、声帯に関する深刻な病状のため長期の活動停止を余儀なくされた京(Vo)だったが、本ツアーでは不安を誘う話は特に耳に入ってこなかった。それだけに、公演2日後の“扁桃腺炎のため40度を超える高熱と闘いながら舞台に立ち、公演後意識不明となり病院に緊急搬送された”という報道に言葉を失った。公演中に何度も気を失ったそうだが、そこまでの極限状態であったことに気付かされることはなかった。もし、“いつもと違う”と感じたことがあったとすれば、それは尋常ではない気迫とその熱量だ。
『THE UNRAVELING』の収録曲を軸に、昨年のシングル「輪郭」やアルバム『DUM SPIRO SPERO』の楽曲を交え、静と動、光と暗黒の間を振り子のように行き来しながらライヴは展開していく。変幻自在な表情を描き出す京の歌声は、照明やセット以上に、ステージ上と場内の空気を決定付ける。その表現力は観る者を暗黒のうねりへと引き摺り込む。モニタに足をかけて力強くリフを刻むDie(Gu)、それとは対称的に黙々とメロディーを奏でる薫(Gu)、ボディと弦を叩きつけてパーカッシヴなグルーブを生み出すToshiya(Ba)、そして緻密なフレージングでバンドの心拍数を決定付けるShinya(Dr)。曲が進むに連れ、異なった染色体を持つ個体の集合体は、会場全体を覆い尽くす巨大な化け物へとかたちを変えていく。
同じツアーでも観る日が違えばまったく違った印象を持つだろう。ツアータイトルの“TABULA RASA(タブラ・ラーサ)”とはラテン語で“まっさらな、白紙の状態”という意味だという。全ての公演に白紙な状態で臨むという彼らの姿勢の表れなのかもしれない。
まさに命を削ったパフォーマンスだった。しかし、彼らは6月には英ダウンロード・フェスティバルを含むヨーロッパ公演を控えている。京の早急な復活を祈りたい。