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LIVE REPORT

DIR EN GREY

『TOUR14 PSYCHONNECT -mode of "GAUZE"?』

2014年08月30日
@新木場STUDIO COAST

“今日はちょっと面白かったよ”。終演後、メンバー全員がステージを去りひとりだけ残った京(Vo)は、笑みを浮かべながらポツリと言った。彼がこういったトーンでオーディエンスに語りかけるのはあまり見た記憶がない。

1999年のアルバム『GAUZE』に伴う初のメジャーツアー。その続編が15年の時を経て再開。今、なぜ『GAUZE』なのか? 2014年のDIR EN GREYが『GAUZE』の楽曲を再現するさまを目にして感じた“違和感”は、このツアーの目的が懐古趣味の探訪ではなく、“過去との対峙”にあることを感じた。

『GAUZE』の楽曲はバンドが近年の作品やステージで描く、重心を低めに取った音像とは大きくかけ離れている。楽曲のアプローチが違えば、プレイやステージングも変わってくる。彼らは一度は肉体を離れた15年前の幻影を今一度自らに憑依させることで、現在の彼らに融合、進化を遂げようとしたのではないか? それは『GAUZE』 楽曲の狭間で「輪郭」が、あるいはアンコールで「SUSTAIN THE UNTRUTH」や新曲が披露された際、一層強く感じられた。「蜜と唾」が新旧の2バージョンでプレイされたのも、進化過程を示すという意味で同じかもしれない。

間もなく発売されるアルバムについての“期待を絶対に裏切らないから”という京の去り際の言葉は、本ツアーの出来とも無縁ではない。筆者はこのファイナル公演を体感したことで、アルバム『ARCHE』の全貌どころか片鱗さえも想像できなくなった。できるとすれば、それは“過去と現在と未来を結ぶもの”ということだけだ。