青白い月

幼いとき
私の優しいおには
死んでしまったけど
彼を産んだ母の
深い哀しみは
海のようだった

その日も風は
優しく吹いてた
おろしたばかりの靴
転がっていた

青白い月笑ってるよ
凍てついた心溶かしたよ
青白い月わかってるよ
残された者の
悲しみを

絵本を読んでくれた兄の姿は
やがて星になるのよと
幼いころ
いちばん光る星みては
名前を呼んでた

あの日も
光や 緑や 風は
私に優しく
何も変わらずにいた

青白い月笑ってるよ
閉ざしてた
心溶かしたよ
青白い月わかってるよ
残された者の悲しみを

青白い月笑ってるよ
照らされた顔も笑ったよ
青白い月笑ってるよ
ここのあざは
もう、消えないけど。

青白い月笑ってるよ
青白い月わかってるよ
青白い月は待ってたよ
この手のひらのつぼみ開くのを

もしも月の記憶の
糸をたどって
あの日に戻れるのなら
三つ葉で編んだ
春の首飾りを
かけてあげるでしょう
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