自分を好きになれた時、満開の花は咲く。

 2021年3月3日に“関取花”がメジャー1stフルアルバム『新しい花』をリリースしました。今作には、タイトル曲「新しい花」のほか、「太陽の君に」や「逃避行」「今をください」「あなたがいるから」、2014年に発表された「私の葬式」のバンドバージョンなど、ボリュームたっぷりの全13曲が収録されております。

 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“関取花”による歌詞エッセイを4週連続でお届け!今回はその第2弾。綴っていただいたのは、今作の収録曲「女の子はそうやって」に通ずるお話。今、傷ついてづまずいて涙で先が見えないあなたへ。このエッセイと歌詞が届きますように…!

~歌詞エッセイ第2弾:「女の子はそうやって」~

痩せたり髪の毛を切ったりすると、「あら、(恋愛的な意味で)何かあったの?」とすぐに言ってくる人がいる。正直なことを言うと、私はあまりあれが好きではない。「そうです」と言っても気まずい顔をされるだけだし、「違います」と言っても、期待外れみたいな顔をされて微妙な空気になるだけだからだ。

良い出口がどこにも見当たらないし、何より野暮な質問だなと思う。何かしらの経験を経て自分なりに未来に向かって頑張ろうとしている子に、その理由をわざわざ聞く必要なんてないじゃないか。もがいている最中なのだ。闘っている最中なのだ。自分という人間と真正面から向き合っている最中なのだ。色々思うことがあったとしても、どうか静かに見守ってあげてほしい。もちろん、何か聞いてほしそうにしている子には声をかけてあげてもいいと思うけれど。

この度、『女の子はそうやって』という曲を書いた。ざっくり言えば失恋した女の子の曲である。でもこの曲で伝えたいことは、生まれ変わってあいつを見返してやろうということでもないし、髪を切ったり化粧を変えたりして、過去の自分にさよならしようとか、そういうことでもない。私が伝えたいのは、もう一個先のこと。何をするべきかじゃなくて、その先に何があるかということだ。

そうさ女の子はそうやって もっともっと綺麗になるんだ
傷ついたりつまずいたり 遠回りをしながら
そうさ女の子はそうやって もっともっと強くなるんだ
そして自分を好きになれた時 満開の花が咲く


恋愛に限らず何かしらの失敗をすれば、人間誰しも一度は落ち込むものだ。そういう時は涙が枯れるまで泣いたらいいし、無理やり前など向かなくていい。自分自身ととことん話し合って、そろそろこの暗闇から一歩踏み出そうと思える時が来たら、何か新しいことをすればいい。

イメージチェンジをしてみたり、普段読まない本を読んでみたり、旅に出てみたりするのもいいだろう。そうやっていろんな経験をしながら、暗い土の中で眠っていた新しい自分は少しずつ成長して行くのだ。そして思い出や過去を栄養素にして、いつの日か今の自分を肯定できるようになった時、満開の花は咲く。

昨今は特にSNSが発達・浸透しすぎたせいで、自分自身と一対一で向き合う時間が減っているように思う。「今」という点と点を結んで過程というのは出来上がるもので、そこにこそその人の物語は宿るはずなのに、タイムラインの激流に流されて、どこかの点だけがピックアップされて解釈されてしまうことが明らかに増えた。

時間をかけずに情報のやりとりができるという点においてはもちろんありがたい部分もあるが、その中でもやっぱり過程は見過ごさないでいてほしいと思う。満開の花はその瞬間だけ見てももちろん美しいが、過程を知るともっとその美しさがわかる。

誰かに気付いてもらえなくても、やいのやいのと途中で何か言われても、せめて自分自身だけでも過程の一つ一つと向き合うことを、愛することを忘れないでいてほしい。そしたらきっともっと自分を好きになれる。誰かのためじゃなく、自分のために強く美しくなれたら、私たちは無敵だ。

そして誰かが君を見つけて 新しい春が来る

これはこの曲の最後の一行である。様々な過程を経て、いつか自分だけの咲き方で咲けた時。きっと誰かがその笑顔に気付いてくれる。なんて素敵なんだと手を伸ばしてくれる。長い冬の先に、新しい春がやって来る。

<関取花>

◆紹介曲「女の子はそうやって
作詞:関取花
作曲:関取花

◆ニューアルバム『新しい花』
2021年3月3日発売
1. 新しい花
2. はなればなれ
3. 恋の穴
4. ふたりのサンセット
5. あなたがいるから
6. 逃避行
7. 太陽の君に
8. まるで喜劇
9. 女の子はそうやって
10. 今をください
11. スローモーション
12. 美しいひと
13. 私の葬式(バンドver.)全13曲収録