ずっとあの花だけを描き続けてきたんだ。

音羽-otoha-
ずっとあの花だけを描き続けてきたんだ。
2025年12月17日に“音羽-otoha-”初のフルアルバム『LAST PLANET』をリリースしました。今作では、自身を取り巻く様々な世界と向き合う中で紡いだ全12曲を収録。さらに、全編自筆によるコミックと全収録曲の歌詞が融合した40ページに及ぶ漫画も収録。ファーストアルバムに新たな角度から光を照らす、作品性の高いブックレットは、クリエイター・音羽-otoha-ならではの魅力が詰まっております。 さて、今日のうたではそんな“音羽-otoha-”による歌詞エッセイを3回に渡りお届け。第2弾は、収録曲「 さよなら僕の初恋 」にまつわるお話です。さまざまな花が咲く庭園、私と、絵を描くその人。その人が描き続ける理由は…。ぜひ歌詞とあわせて、エッセイをお楽しみください。 そこは、小さな沼地を有する庭園。 園内ではアイリスやポピー、バラなどが季節を問わず一年中咲き続けている。 私は沼地のほとりに佇む人影に近づき、隣に腰掛けた。 「やあ、君か。」 「今日は、描けましたか?」 「いいや、今日も駄作ばかりさ。君に見せるまでもない。」 「そうですか。......少し、休みませんか?」 「うーん、そうだな。気持ちは有難いが、今はもう少しだけ描きたい気分なんだ。いいかな?」 「ええ、もちろんです。」 その人はまっさらなキャンバスをイーゼルに立てかけ、再び絵の具を乗せはじめた。 「あなたがここで絵筆を手に取ってから、もう随分月日が経ちましたね。」 「そうかな。いまいち暦の感覚がわからないんだ。ここはずっと太陽が出ているからね。」 「ええ、かれこれ数年の時は過ぎていますよ。」 「そうか......あ、すまないが、そこのコバルトブルーを取ってもらえるかな?」 「いいですけど、もう殆どありませんよ。」 私は渋々、薄汚れた画材箱を探った。小さく丸められたチューブを見つけだし、その人に手渡す。 「なぜ、そこまでして描き続けるのですか?」 「なぜって?......うーん、そうだな。」 その人はゆっくりと立ち上がり、沼地の中心を指差した。 「あの花が見えるかい?」 「......ええ、見えますよ。」 「ここに迷い込んだ日から、ずっとあの花だけを描き続けてきたんだ。何百回。何千回と。」 「知っています。」 「きっとこの先も、この庭から抜け出せることはない。だから...まあ、暇つぶしとでも言っておこうか。」 「随分と長い暇つぶしですね。」 「ああ、いつも付き合わせて悪いね。」 「本当ですよ。」 その人はふっと目を細め、再びその花を描きはじめた。 <音羽-otoha-> ◆紹介曲「 さよなら僕の初恋 」 作詞:音羽-otoha- 作曲:音羽-otoha- ◆フルアルバム『LAST PLANET』 2025年12月17日発売 <収録曲> M1. 地球最後の一日 M2. 狂信者のパレード -The Parade of Battlers M3. あのミュージシャンのせいで M4. engine M5. 電光石火 M6. pineapple tart M7. Do Re Mi M8. 人生階段 M9. さよなら僕の初恋 M10. 闇夜のダンサー -Dancer in the Dark Night M11. no man’s world M12. 大生解

















