ずっと、人並みの恋愛がしたいと思ってた。
ENVii GABRIELLA
ずっと、人並みの恋愛がしたいと思ってた。
2022年3月9日に“ENVii GABRIELLA”が、メジャーデビュー1stミニアルバム『Metaphysica』(読み:メタピュシカ) をリリースしました。アルバム名は、曲を聴く人によって、様々な角度からメッセージを受け取ることができる、“様々な視点で捉えていく”というメッセージ。“meta”とは“変化”を意味する言葉であり、そのタイトルのとおり、まったく違った音楽性をもった曲たちが『Metaphysica』を彩っております。 さて、今日のうたコラムでは、最新作を放った“ENVii GABRIELLA”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 Finally Found You 」に通ずる想いです。自分のことを嫌いになった時期もある。卑屈に人生を諦めていた時期もある。それでも、そんな自分と一緒にいてくれて、大切なことに気づかせてくれた<あなた>への手紙…。歌詞と併せて受け取ってください。 あなたへ 恋人として一緒にいられる確率について考えたことある? あなたと付き合うことになって、一緒に過ごすようになって、色んなことがあったよね。初めてデートした日、食事をしながら、二人きりが初めてだという気がしないくらい沢山話をして、そして日に日にあなたが大切になった。 どんな恋人だって、付き合い出す初日から、深い想いを抱くことはないと思ってる。ずっと片想いして、やっと両思いになったとしても、お互いを慈しむ気持ちは、日に日に育つものでしょ? 楽しい事だけじゃなかった。だって、こんなに違いすぎる。考え方も、生活リズムも、職業も、生き方も。まぁいいやと想ったことが、あなたにとってはきっちりしてないと気が済まないことだったり。ちゃんと話したいことが、あなたにとって面倒なことだったり。 ある晩、「めんどくさい」って言われたことを今でも覚えてる。ちょっと不機嫌になってしまった時に、そう言われたんだけど。その時に、「二人の考え方が違うんだからめんどくさくてもちゃんと話をしようよ」って言った。 あなたは、「もういい大人だから、自分を変えることはできない」と言っちゃうような人だったのに、今では面倒な話でも、喧嘩になりながらも、ちゃんと受け止めて話をしてくれるようになった。 クリスマスプレゼントを買って渡した時、「俺はそういうことしないし、何もあげてないのに」とちょいと困惑してたよね。でもね、毎日貰ってるよ。色々。 電話してくれるでしょ。頑張ってねって言ってくれるでしょ。仕事で煮詰まってる時は、ほっといてくれる。色々やってあげた時は、ありがとうって言ってくれる。それから、一緒にいてくれる。 ずっと、人並みの恋愛がしたいと思ってた。 物心ついた時から、「好きだな」とか「嫉妬の対象」が、世間でいうところの普通とはずれてるなって感じてた。男の子のことをかっこいいと思ったし、女の子をみて羨ましいと思ったりしました。女の子になりたいと思ったことはなかったけれども、なんだか自由だな。と感じてた。 きっとそれは、「あの男の子かっこいよね!」「あの少女漫画感動するよね」などとキラキラと話しては盛り上がっている世界。思春期になった時、周りに「彼氏・彼女」なんてものが出てき始めて、「自由に告白して付き合って」と言うことができるみんなが羨ましかったんだと思う。疎外感と、嫉妬心、馴染めないし馴染みたくない複雑な感じ。 「ゲイ」だとか「LGBTQ」なんてない時代に子供時代を送ったけど、そんな全ての感情の一応の答えを見つけるのは、高校に入った頃だった。自分という生き物の正体と「ゲイ」という名称が合致した時。ヘテロセクシャルよりも、出会いの数も少ないマイノリティが、好きな人と恋人になる確率なんて人生全部使っても叶うかどうかなんじゃないかなって思ってた。 あなたと知り合う前にも、色んな人と付き合いをしてきた。それは楽しいこともあったし、色々。幼い恋愛をしてた時もあるし、勢いで付き合ってた時もあった。憧れていた「恋愛」というものを追い求めていた気もする。 そして、あなたに会った時、全てが報われた気がしました。あなたが笑いながら話しかけてくれている時、例えこの人といつか別れることになろうとも、今この瞬間をずっと待っていたんだと思いました。 そのくらい、あなたは「普通」をくれた。普通にデートして、普通に夜電話して、普通に喧嘩して、普通に日曜日をだらだら一緒に過ごす。普通にどうしようもない格好でコンビニに一緒に行く。それがどんなに幸せなことだか、言葉にできないのが悔しい。 あなたと一緒にいることで、気づけたことがある。ずっと卑屈に人生を諦めてたんだなって。自分のセクシャリティに、人生に、見た目に、いろいろなもののせいにして、目の前が曇っていたんだなって思った。ゲイだなんだって、関係ない。自分を受け入れてなかったんだなって。 恋人として一緒にいられる確率について考えたことある? ある日、自分が起こした行動の先にあなたが居た。 そして惹かれあって恋人になった。 あの時出会った二人が同じセクシャリティだった。 この確率。 それぞれのお父さんとお母さんが知り合って、 同じ時代に二人が生まれた。 両親が出会う確率。 両親が日本に住んでいて東京に住んでた。 そして自分も関東に居る。 あなたも日本に住んでいて東京にいた。 この確率。 二人とも人間だった。 この確率。 それは誰にでも当てはまる事。 きっと、今の性別で生まれて、相手が恋愛対象として合致する性別である確率は、誰もが背負っているよね。羨ましいなと眺めていた友達カップルだって、彼らが男だったから、女だったから叶った出会い。起こした行動で出会わなかったかもしれなかった可能性。それは友人でも、家族でも誰でも、今の自分を形成する全てが揃っていないと成り立たない出会いだと思う。 あなたに書いたこの曲で「セクシャリティ」とワードにして歌っているのは、自分たちが「セクシャルマイノリティ」だからってだけじゃなくて、全ての人が「生まれついた自分」で、最後には幸せを掴むことができる可能性がある、そしてその無数の可能性の中であなたと出会えたということが伝えたかったから。 幼い頃に、成長途中で、人生で大事な時期にどんなに自分のことを嫌いになったとしても、時の流れの中で、自分を受け止めて、見つめて、受け入れた先に、待ってくれている何かがあるはず。そう思わせてくれたあなたに。 私が私であること。 あなたがあなたでいてくれたことに ありがとう。 注)この手紙はフィクションです。実際の人物や団体とは関係ありません。 ◆紹介曲「 Finally Found You 」 作詞:souljuice 作曲:souljuice ◆ミニアルバム『Metaphysica』 2022年3月9日発売 https://lnk.to/Metaphysica <収録曲> 1.Finally Found You 2.Cabaret 3.Ride/Reboot 4.Sorry Not Sorry 5.Dystopia 6.女優(仮) 7.Moratorium 8.ハッピーハッピーウェイウェイドンチー