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lynch. ライヴレポート

【lynch. ライヴレポート】 『TOUR’21-ULTIMA-』 2021年7月14日 at LINE CUBE SHIBUYA

2021年07月14日
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絶対にこの場所は譲らない。そんな信念とより強靭になったlynch.の今がストレートに伝わってくるアクトだった。7月14日に東京・LINE CUBE SHIBUYAにて行なわれた『TOUR’21-ULTIMA-』ホール公演初日。初の日本武道館がコロナ禍で中止になるなど、無念の日々を過ごしたこともあっただろうが、最新アルバム『ULTIMA』を携えて5月に再開した全国ツアーで経験値を積んだlynch.のライヴは自信に満ちあふれている。

アルバムのサイバーで近未来的な視覚的イメージに沿ったステージセットと照明の中、一発目に投下されたのはヘヴィかつ研ぎ澄まされたサウンドとサビのメロディーが際立つ「ULTIMA」。続く「GALLOWS」ではステージセンターに悠介(Gu)、明徳(Ba)が前方に出ると、葉月(Vo)が身体能力の高さを発揮するヴォーカルとパフォーマンスで観客を圧倒し、「XERO」「RUDENESS」と最新曲を続けざまに叩きつける。その激烈なサウンドに呼応するように客席の熱量はまたたく間に上昇したことは言うまでもない。

MCでは葉月が今回の東名阪のホール公演は全国のライヴハウスを回ったきての総まとめだと伝え、ツアーで肌で感じたことが語られた。
“声を出せないことが意外とたいしたことないってことをこのツアーで知りました。来てくれた人はきっと分かってくれていると思うんですが、クサい言い方になっちゃいますけど、みんなの心の声がマジで届くし、ほんとに聞こえてます!”。
会場のリアクションは盛大な拍手。そんな客席に向けてメタリックでハードコアな「ALLERGIE」やキャッチーに振り切った「IDOL」が放たれる。『ULTIMA』からの曲の完成度の高さに驚かされ、ストレスフルな時代に爆音を身体中に浴びる心地良さを改めて感じた。途中、設けられた換気タイムはメンバー全員がトークするという意味でも和やかなコーヒーブレイク的雰囲気なのだが、東京公演では思わぬアクシデントが語られ、場内も驚きと笑いでやや騒然。やはり、lynch.はいろいろな意味で刺激的すぎる。

中盤では葉月が“ここからのエリアは集中して心を研ぎ澄ませて聴いてほしい”“ホールならではの音といつもより豪華な演出をじっくり刻んでください”と伝え、深く沈んでいくようなlynch.の世界が堪能できるセクションへ。玲央と悠介のギターが絡み合い、たゆたうようなサウンドを生み出す「ZINNIA」、切ないメロディーのミドルチューン「IN THIS ERA」、グリーンの照明が映えるスケール感たっぷりの「ASTER」と風景を紡ぎ出す楽曲が鳴らされていく。焼けつくような攻撃的サイドと陰りのある内省的サイドを兼ね備えているのもlynch.の魅力だ。例えば激烈シャウトも迫力のヴォーカリスト、葉月は同時に艶のある声で歌モノをしっかりと届けられるシンガーでもある。

晁直のキレのあるドラミングで始まる「D.A.R.K.」で照明が赤へと変わり、徐々にヘヴィな展開へ。「MIRRORS」では葉月が“手がパンパンになるまで叩いてください!”と客席を煽り、後半戦はまるで嵐のような激しいアクトが繰り広げられた。ファストかつヘヴィな「MACHINE」が頭の中を空っぽにさせ、“もっと気持ち良いことしませんか?”と焚きつけるlynch.のライヴに欠かせない「pulse_」も投下され、本編ラストは“みんなの心の声で、このクソでかい会場を埋め尽くしてくれませんか?”と問いかけた「EUREKA」。夢を止めないのは“あなたに触れているから”と歌う願いが込められた曲にミラーボールの光が降り注いだ。

アンコールでは本ライヴが映像化され、Blu-ray&DVD(『TOUR'21 -ULTIMA- 07.14 LINE CUBE SHIBUYA』)として11月17日に発売されることが告知され、これから演奏する曲を葉月が1曲ずつ紹介したのだが(本ツアーのアンコールはメニューを考えた人がしゃべるのがルール)、自身の説明に納得いかなかったのか、明徳にも振る展開に。1曲目に関して葉月は“ネタバレするので”、明徳は“お楽しみに”と予告した。その気になる1曲目はライヴハウス支援企画CDとして今年の4月にHP限定で通販されたシングル「OVERCOME THE VIRUS」の収録曲で、ライヴでは初披露という変則的なビートがクールなナンバー「WALTZ」。さらに初期の懐かしい曲や葉月推しの「FAITH」も盛り込まれ、“ここに来るまでめちゃくちゃ大変だったし、何度も諦めそうになった”と本音を吐露した上で、“絶対、ここ(ライヴ)を守っていくから、みんなもついてきてください!”と力強く宣言し、最後は「EVOKE」で締め括った。

それでも鳴り止まない拍手に応えてのダブルアンコールでは“楽しすぎるからもう一曲やってもいいっすか?”とlynch.のライヴでは絶対に聴きたい「ADORE」を投下し、頭上でハンドクラップし、lynch.も客席も完全燃焼! 悠介はマイクに向かって“帰ったら手洗い、うがい、洗濯、お風呂、よろしくね”と微笑み、葉月はみんなの手の平が痛かっただろうことを気遣いお礼を述べてステージを去った。頭が真っ白になるカタルシスはやはり生でしか味わえない。だからこそ、大事な場所を死守する。そんなバンドの覚悟を体現できたライヴだった。

撮影:江隈麗志/取材:山本弘子

lynch.

リンチ:2004年8月、葉月と玲央と晁直の3人で結成。同年12月よりライヴ活動をスタートさせ、06年に悠介、10年に明徳が加入し現在の5人となり、6年にわたるインディーズでの活動にも終止符を打つ。11年6月、アルバム『I BELIEVE IN ME』でメジャー進出。その後もコンスタントに作品を発表。19年3月には『lynch.13th ANNIVERSARY-Xlll GALLOWS- [THE FIVE BLACKEST CROWS]』を幕張メッセ国際展示場にて開催し、約6000人を動員した。