Uta-net

ライブレポート

検索

メニューを開く

LIVE REPORT

vistlip ライヴレポート

【vistlip ライヴレポート】 『vistlip 14th Anniversary【BJ】』2021年7月7日 at Zepp Tokyo

2021年07月07日
@Zepp Tokyo

結成記念日にアニバーサリーのライヴを行なうアーティストは数多いが、彼らほど日付だけでなく、会場にまでこだわっているアーティストは珍しいだろう。2007年の7月7日に結成し、2009年の7月7日に初ワンマンを果たして以来、毎年七夕の日にライヴを敢行してきたvistlip。2011年の4周年記念日に初めてZepp Tokyoのステージに立って以来、2013年からは一度の例外もなくZepp Tokyoで結成日ワンマンを開催してきた。そんな彼らにとって、2020年の7月7日に予定していた13周年ライヴがコロナ禍により中止になってしまったことは痛恨の極みであり、2年振りの七夕ライヴとなったこの日に駆ける意気込みが、そのぶん強いものとなったのも当然。14周年に彼らのラッキーナンバーである“7”をプラスし、トランプのブラックジャックで最強の数字である“21”になぞらえた『BJ』という公演タイトルにも、そんな彼らの想いがうかがえるだろう。

そうして例年にも増して思い入れの深い周年ライヴは、この日がステージ初披露となる「John Doe」――直訳すると“名なしの権兵衛”で幕を開けた。最新シングル「Act」収録のメロディックな楽曲は、その名を体現するかのように逆光の照明で彼らの姿を覆い隠すが、続く「EDY」からは一転。シャウトやラップを轟かせる海(Gu)、お立ち台上でのベースソロから「CRACK & MARBLE CITY」を導く瑠伊(Ba)、間奏が訪れるたびにテクニカルなソロプレイで魅了するYuh(Gu)と、それぞれの個性でvistlipとしての存在感を発揮していく。「Antique」ではTohya(Ds)の重厚なドラムが鳴り響き、「Sara」でもYuhの激烈なリフが炸裂するが、サビへのクリアーな展開や智(Vo)のラップと、多彩なギャップも“vistlipらしさ”の一部。変転するノリに頭を振り、手を振ってしっかりついていくオーディエンスの素早いリアクションもまた、バンドに対する“愛”の表れだ。

“声が出せないんだから身体で観せてくれよ!”という智の煽りに続く「Pavé au chocolat」から「Dead Cherry」「Hameln」では、ステージ上を自由に行き交うラフなパフォーマンスで言葉通りの一体感を生み出す一方、“せっかく椅子があるんで”とオーディエンスを着席させるひと幕も。温かなクラップが湧く「ミミックの残骸」に、LED上で色を変える空が最後は真っ青になって希望を匂わせる「TELESCOPE CYLINDER」、智のエモーショナルなヴォーカルと叫びに拍手が起こった「Chapter:ask」と、世界観で魅せるセクションも記念日ならではのスペシャルな演出だ。

そして、「FIVE BARKIN ANIMAL」からはアグレッシブなナンバーを怒涛に畳みかけ、「DANCE IN THE DARK」ではカラフルなレーザーが飛び交う中、闇の中で飛び跳ねてまさしくタイトル通りの様相に。モニターに秒刻みのカウントダウンが映し出された「Timer」の緊張感を皮切りに体感速度はますますアップして、「星一つ灯らないこんな夜に。」のさわやかな疾走感が、激しさの中でも七夕らしいロマンティシズムを感じさせてくれる。多くのものが失われたコロナ禍について言及しながら、“こうして俺たちが生き残れているのも、こういう状況でも来てくれるみんなのおかげ。感謝してます”と智が語ったように、彼らとファンをつなぐものは互いへの信頼と愛情。「GLOSTER IMAGE」「HEART ch.」「LION HEART」と、vistlipライヴのド鉄板チューンを続けざまに投下した終盤で“どうだ気分は? お前らの好きなバンド、カッコ良いですか?”と放った智に向かって振り上げられた拳は、その愛に報いる最大の返礼でもあったろう。

アンコール前の映像では、昨年中止になった13周年ライヴ『Screams under the Milky Way』が10月17日にZepp Tokyoで開催されることも告知。Zepp Tokyoは間もなくの閉館が決まっており、ここにvistlipが立てるのも本来この14周年ライヴが最後の予定だったが、“Zepp Tokyoのスタッフも“vistlipなら”ということで、あと一回だけ約束の場所をここに作ることができました”とのことだ。そして、“10月17日に向かって、この曲をみんなで歌えたらいいなと思います”とミラーボールの光の中で贈られたのは「-OZONE-」。天の川を越えて再会する年に一度の物語を清かに歌い上げ、さらに“人生の半分? 全部? いくらでも捧げてください! それぞれ俺たちに星を見せてください。心の中で歌いましょう”と、例年通り「July VIIth」がフィナーレを飾る。七夕の日にしか演奏されない特別な曲の始まりに、客席は“待ってました”とばかり青いペンライトの光でいっぱいに。LEDに映された銀河と共に場内に描き出された星空は2年分...いや、それ以上の美しさに輝いていた。

“俺たちが楽しくて、ここまでやってこれました。そんな俺たちを見て、みんなが幸せになれてるのかなって”

13周年ライヴが初のハロウィンイベントとして企画されていたのも、常に自らが楽しみ、楽しませることを追求してきた彼らのスタンスの表れに違いない。昨年の七夕からの仕切り直しになったがため、奇しくもハロウィン時期での開催になった13周年ライヴは、彼らにとってZepp Tokyoでのラストライヴとなる。そこでの5人のパフォーマンスが、当然生半可なものになるわけがないのだ。

撮影:nonseptic/取材:清水素子

vistlip

ヴィストリップ:2007年結成。リアルで等身大な言葉を紡いだ歌詞と、多種多様な要素を融合させた楽曲にキャッチーなメロディーライン、時折ラップも織り交ぜた他に類を見ないミクスチャー感を持つビジュアル系ロックバンド。ひと言では言い表せない世界観とメンバーの特異な個性が際立つパフォーマンスを武器にしたライヴは必見。結成日の7月7日にはZeppTokyoにてワンマン公演を行なっており、毎年たくさんのファンで会場は埋め尽くされる。