札幌から福岡まで、全国6カ所を回ったCzecho No Republic (以下チェコと省略)の『リリースツアーじゃないツアー』が12月22日、EX THETATER ROPPONGIでツアーファイナルを迎えた。メンバー曰く、大事な試みのツアーは大きな成果を残したようだーー。
熱い想いを内に秘めながら、それをストレートに表現することに対する照れ隠しなのか、天邪鬼なだけなのか、クールと言うか、ちょっと斜に構えたようなチェコも今は昔。4枚目のアルバム『DREAMS』を引っ提げ、全国を回った『Welcome to the Hotel Flamingo Tour』で、彼らのライヴを観た時もずいぶんと開けてきたという印象があったけれど、それから1年、チェコはさらにひと皮剥けたところを観せてくれた。“過去に出した音源を今一度、育てたい。そして、代表曲は代表曲で改めて育てたい。そういう大事な試みのツアー”とチェコ一流のユーモアが感じられる人を食ったようなツアータイトルに込めた想いを武井優心(Vo&Ba)が語った通り、彼らのライヴではお馴染みのアンセムの数々に、逆にほとんど披露したことがない新旧の曲を織り交ぜたこの日のライヴは、メンバーたちが考えていた以上に観応えあるものになったんじゃないか。
“盛り上がっていこうぜ。六本木! 今日はここを天国に変えに来ました!”、ライヴはそんな武井のひと言でスタート。そこからリードヴォーカルを取る武井、タカハシマイ(Cho&Syn&Per)、八木類(Gu&Cho&Syn)はもちろん、砂川一黄(Gu)、山崎正太郎(Dr)もコーラスを加えながらメンバー全員が歌って、バンドが持つアンセミックかつユーフォリックなヴァイブに観客を巻き込んだ上で、例えば過去のアルバムのリリースツアーではセットリストに馴染まなかった曲も交えながらライヴを進めていった。それによって“その都度その都度、その時の好奇心で好きなことをやってきた”と武井が語ったチェコサウンドの多彩さを見せつけ、彼らがオーケストラルなものからエレクトロニックなものまで、常に斬新なアプローチに大胆に取り組んできたことを改めて印象付けることができたのは、今回のツアーの成果と言ってもいい。自分たちがやってきたことを振り返る経験は、今後の創作にきっと刺激を与えるに違いない。
そして、“バンドとして骨太にライヴバンドを目指していこう”(武井)という今回のツアーのもうひとつのテーマのもと、多くの場面で曲をノンストップでつなげながら、武井をはじめメンバーたちは以前にも増して、観客に積極的にアピール。武井がベースを弾きながらジャンプをキメて、そのままなだれ込んだ「Call Her」では砂川、武井、八木がステージの中央に一列に並んでフォーメーションプレイを披露。「一人のワルツ」では砂川と八木がギターをハモらせ、フロントマンの自覚が以前よりも出てきたのか、武井はスタンディングのフロアーを埋めた観客の顔を観ながらステージを左右に動き回った。
それと同時に“一緒に歌ってくれ!”“お祭り騒ぎしましょう!”“もっと遊ぼうぜ、ギロッポン!”といった曲間に入れる武井の煽りもかなり板についてきたが、この日、驚かされたのが、“遠ざかれば遠ざかるほど、楽しいことも悲しいことも平等にキラキラしていたと思えるから生きるって不思議だと思います。悲しい時に全ての日が美しい日と思えるという気持ちを込めて作りました”と語った「Beautiful Days」他、武井が曲に込めた想いを観客に語るようになったことだった。本編最後の「No Way」を演奏する前、この日、バックドロップに掲げたバンドの旗に描かれた“4→5”の文字には“4枚のアルバムを5人で奏でる、今の5人になって4年目。5年目も突っ走っていこう”という意味が込められていると説明した武井は5年目に向かう気持ちを、こんなふうに語った。
“チェコはついてこいってバンドじゃない。でも、嫌だとか怠いとか思うことがある日常において、自分たちの音楽が毒抜きになって、みんながハッピーになれたら、そういう部分では闘える。そう思ってやっている。それが使命だと(今回のツアーを通して)思えるようになりました。これからもハッピーをばら撒いていきます!”
観客の気持ちにググッともう一歩、踏み込んでバンドと観客がひとつなれるようなライヴを、チェコが追求しはじめたことは明らかだったが、そんなライヴをメンバー自身が楽しんだ結果、新たな使命を見つたことが今回のツアーにおける一番の成果だったと思う。前述した5年目を突っ走る彼らに迷いはこれっぽちもないはずだ。音源ではSKY-HIが担当していたラップを、八木と砂川が見事にキメたチェコとSKY-HIによるコライトシングル「タイムトラベリング」からラストスパートをかけるように盛り上げていったバンドは、来春、5枚目のアルバムをリリースすることを発表。客席を沸かせると、アンコールに早速、新曲「好奇心」を披露した。“生きる上でキーになっている、なくしちゃいけいない感情。これがあるからバンドをやっていける”(武井)という想いを込めたというその新曲は、これまでにはないアップテンポの演奏がバンドの新境地を思わせた。
そして、“みんなの声で(曲を)完成させたいと思います!”と武井が呼びかけ、バンドとファンが一緒に歌いながら、この夜を祝福した「ダイナソー」で全国6カ所を回った今回のワンマンツアーを締め括ったが、その熱演に興奮が収まらない観客のリクエストに応え、武井曰く“おかわりアンコール”が実現。最後の最後に彼が選んだのが、音楽を通して知らない者同士が友達になることを歌った「Melody」だった。バンドの今の心境を象徴しているような選曲に思わずニヤリ。ツアーは一旦、ここで終わりだが、チェコはすでに“5年目”に向かって走り始めている。
撮影:山川哲矢/取材:山口智男
Czecho No Republic
チェコノーリパブリック:2010年結成のロックバンド。13年10月にアルバム『NEVERLAND』でメジャーデビュー。中期ビートルズを現代風にアップデートしたカラフルなポップサウンドが人気を集めている。15年7月12日、日比谷野外大音楽堂にてワンマンライヴを開催するとチケットは完売。大成功を収めた。同年9月には日本コロムビア内のTRIADレーベルに移籍。16年7月にはメジャー4作目となるアルバム『DREAMS』をリリースした。