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LIVE REPORT

LACCO TOWER

『LACCO TOWER 「心臓文庫」リリースツアー“心造旅行”』

2016年07月18日
@恵比寿 LIQUIDROOM

メジャー2ndアルバム『心臓文庫』を携えた全国ツアーの初日かつ、恒例になった周年ライヴでもあったこの日。ライヴ前には周年を祝う“みこしーズ”の映像も流れ、アンコールにはラッコの着ぐるみや地元、群馬のゆるキャラ“なめじろう”まで登場するお祭り騒ぎ。しかし、本編はより言葉に向き合った松川ケイスケ(Vo)と容易にジャンル分けできない楽曲世界を屈強なバンドアンサンブルで叩き付けた4人の渾身のステージを展開した。

アルバムからの新曲と定番の人気曲へのリアクションにもはや差異はなく、プログレもかくやな複雑な構成を持ち、詞の世界観も人間の業を深く掘り下げた「罪之罰」が見事にライヴでも昇華されていた点や、愛しさと切なさのリリカルさが胸を打つ「蛍」への反応の大きさは特に印象に残る場面だった。

また、真一ジェット(Key)がショルキーに持ち替え、フロアー横のお立ち台でファンを煽っての熱演を見せた「傷年傷女」。この曲が持っているLACCO TOWERのファンへのやさしい眼差しを感じながら、ここにいるひとりひとりは弱くて小さな力かもしれないけれど、未来に向けて自分の殻を叩き壊してくれるような新たなアンセム「未来前夜」への流れも胸を打つものがあった。

何度も“みんな笑えてる? 笑って帰れよ! リキッド!”と叫ぶケイスケの想いは紆余曲折を経てきた今、より強く本気度を増した声になってフロアーを揺さぶる。シングルリリース当初は彼らにしてはポップで明るい曲調に驚いた「薄紅」を本編ラストに配し、5人一丸となってこの曲の儚くも前向きな歌心を奏でる姿は、バンドが自信を持ってよりファンの背中を押せる存在になったことを実感させる場面だった。そういう意味ではアンコールで披露した「相思相逢」で言葉として初めて明言した《ありがとう》というフレーズも、バンドとファン双方が歌う美しい光景が立ち上がっていた。簡単には素直な言葉を発せないフロントマンだったからこそ、今、LACCO TOWERが放つ感謝ほど本物の感情はないなと思える。茶番も素のMCも限界ギリギリまで濃度を上げる演奏も、どこを切っても彼ららしい。そのことが清々しいライヴだった。