過去まで丸っと愛せるね。
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Bye-Bye-Handの方程式
過去まで丸っと愛せるね。
2025年2月5日に“Bye-Bye-Handの方程式”がEP『nostalgic lovers』をリリースしました。今作には、自主制作音源を再録&初音源化した全5曲が収録されております。これまでのBye-Bye-Handの方程式を彩ってきた楽曲を最新アレンジでご堪能ください。 さて、今日のうたではそんな“Bye-Bye-Handの方程式”の汐田泰輝による歌詞エッセイを2週連続でお届け! 今回は第1弾です。結成10周年という節目を迎えるにあたり、芽生えた気持ち…。記憶を遡りながら、バンドの軌跡を綴っていただきました。また、今回は音声版もございます。本人の朗読でもエッセイをお楽しみください。 2025年2月5日に我々の5曲入りの再録EP 『nostalgic lovers』がリリースされた。 1月から東名阪ワンマンをバンドとしては初めて周り、製品盤では先に会場販売はしていたものの、この時代においては配信されてからやっとリリースした気になるのもこの時代ならではの感覚なのかもしれない。 そう、我々は今年で結成10周年という節目を迎えるに当たって次の10年、20年とその先を見据えた時、今の僕らを見てる人たちに過去を知ってもらった上で、この先も一緒に歩んでいきたいという気持ちがどこからかゆっくりと芽生えたのだ。 遡れば16歳の時に組んだこのバンドは、まだ漠然とバンドを続けていく事がどんな事かも分からず、あの当時はきっと、頭の片隅にバンド以外の何者かになる選択肢を持ちながら、何処まで続くか分からないバンドという世界に足を踏み入れたんだと思う。そんな自分もその内の1人だった。 地元のライブハウスに初めてイベント出演した時、数年前に他界してしまった当時のライブハウスのオーナーから、「自分は将来何になりたいか」とメンバー4人それぞれ聞かれた事があった。自分は音楽プロデューサーや作曲家になりたいとその時答えた。 そしたらすぐに返事が返ってきた。 「それならバンドで売れるほうが簡単かもね」 返ってきた言葉はそんな言葉だった。 本当に最初のほんの小さな覚悟がそこで生まれた様な気がした。今思えばライブハウスの人間だからそう言うのも当たり前かと冷静に受け止めてしまうが、ある意味ラッキーだと思った。 まだ何も分からない僕にとってバンドを漠然とやる意味がふわっとそこで生まれたから。 当時は今より、誰が鳴らすより何を鳴らすかを重きに置いていた。だから自分が歌う事への抵抗もかなりあったと思う。 それがよく表れてる例とあげるとするならば、全曲にボーカルエフェクトをかけて当時は歌っていた。テクノなどでよく聴くオートチューン(自動でピッチを正すエフェクト処理)というやつだ。ある意味、本来人の声が持つ温かみとは真逆の用途で使われがちなものである。 自分が作った音楽に自分の技術不足で楽曲の持つ美しさを損いたくないと思った行為だったが、それが逆に楽曲の妨げをしていた事に気づくまでに3年もかかった。そんな過去が固く地層の様に僕らの足元には重なっている。 だからこそ今回の『nostalgic lovers』は あの時の僕らを迎えにいく そんな気持ちがこの先の見知らぬ誰かに届くのかもしれない。それは眩しい光ではなく、温かい光の先に待ってる自分たちとの集合場所の様な音源になったんだと思う。 <Bye-Bye-Handの方程式・汐田泰輝> ◆EP『nostalgic lovers』 2025年2月5日発売 <収録曲> 1 熱帯夜と遊覧船 2 湿恋 3 自論文 4 君と星座の距離 5 Flower Dance