もしもあの日の自分に今会えたなら。

今井美樹
もしもあの日の自分に今会えたなら。
2018年6月6日に“今井美樹”が通算20枚目となるオリジナルアルバム『Sky』をリリースしました。プロデューサー・亀田誠治と初タッグを組み、全10曲を完成させた今作。今日のうたコラムでは、その収録曲から“布袋寅泰”が作詞作曲を手掛けた新曲「私へ」をご紹介いたします。もしも、過去の自分に会えるとしたら、いつの<私>が思い浮かびますか…? 陽だまりの中 見つけた古い写真 ショートカットの私が笑ってる 笑顔の奥に隠した心の雨 涙の理由は 誰も知らない 「私へ」/今井美樹 穏やかで優しいワルツのリズムで始まる歌。月日を経て大人になった<私>は今、柔らかな陽を浴びながら<古い写真>の中にあの頃の自分を見つけました。まず伝わってくるのは<笑顔の奥に隠した心の雨>の“冷たさ”です。今この時間の“あたたかさ”とは正反対だからこそ、かつての<涙の理由>の哀しみがより際立ちますね。 また、あえて<ショートカットの私>と綴っているのは、髪をバッサリ切ることで“何か”から気持ちを切り替えたかった自分の記憶も蘇ってきたからかもしれません。その“何か”こそが<涙の理由>でしょう。だけど、その“何か”は<誰も知らない>のです。すべてを自分の胸の内に閉じ込めて、誰にも“知られないように”笑っている。それがあの頃の<私>の生き方なのです。 もしもあの日の自分に今会えたなら どんな言葉をかけてあげるだろう 「もっと素直に自分を信じてほしい」 私はうなずいて“NO”と言うだろう 青春の風は激しく嵐のように 恋は燃える太陽より熱く 胸を揺さぶり焦がして教えてくれた 夢追う喜びと その儚さを 「私へ」/今井美樹 思えば<あの日の自分>は素直じゃなく、自信もなかった。だから伝えてあげたい言葉がある。それに対する反応を予想した<私はうなずいて“NO”と言うだろう>というフレーズからは、うなずいておいて相手を安心させるけれど、心の中では“NO”としか思えない頑固さ、他者に気を遣いすぎるところ、強がり、といった過去の<私>の性格が見えてきます。 一方、昔を客観的に見つめ、心から微笑むことができるようになったのが今の<私>です。でも、そんな今の自分があるのは、過去の<私>の一生懸命な日々のおかげ。青春の風には<激しく嵐のように>揺さぶられ、恋には<燃える太陽より熱く>焦がされ、不器用ながらも<夢追う喜びと その儚さを>学んできたから、今の形に心は育ったのでしょう。 世界はもっと 優しく厳しく 自由だと信じていた 後悔はしない いつも自分に 負けないようにと 戦っていたから 心安らぐ場所はどこ 過去じゃない 今じゃない 私たちは未来を追って 今ここにいるはず 翼に負った傷跡が 言えなかった愛の言葉が ほら 夜空に瞬いてる 星屑のメリーゴーランド 「私へ」/今井美樹 素直じゃなかったけれど、自信もなかったけれど、世界の可能性を信じていた。そして<いつも自分に 負けないようにと 戦っていた>。そうやって<未来を追って>生きてきた日々のすべては、振り返ってみると、良いことも悪いことも何もかも<星屑のメリーゴーランド>のように瞬いて、美しいのです。その唯一無二の美しさこそ、今の<私>が<あの日の私>に伝えてあげたいものなのではないでしょうか。 あの日の私は今の私を見て どんな言葉をかけてくれるかしら 「私へ」/今井美樹 このように幕を閉じてゆく歌。もし<あの日の私>が<今の私>を見ても、今この日々のすべてが<星屑のメリーゴーランド>のように映る生き方をしていたいなぁと思いますね…!では、みなさんなら思い浮かんだ<あの日の私>にどんな言葉をかけてあげたいですか? そのかつての<私>は一体、どんな反応をするのでしょうか…。 ◆オリジナルアルバム『Sky』 2018年6月6日発売 TYCT-60116 ¥3,000(税抜) <収録曲> 01 同じ空 02 あなたはあなたのままでいい 03 雨上がり光る花のように 04 Misty 05 Free to Fly 06 Little Tiny Song 07 Greatest Moments 08 私へ 09 Beyond the World 10 Blue Rain