苦しくても、納得できるまで自分と向き合って書きたい。

見田村千晴
苦しくても、納得できるまで自分と向き合って書きたい。
2019年10月9日に“見田村千晴”がニューアルバム『歪だって抱きしめて』リリースします。その発売を記念して、歌ネットでは【今日のうたコラム】にて、3ヵ月連続“ご本人歌詞エッセイ”をお届け中。現在 第1弾 と 第2弾 が公開されております。最終回はリリース直前の10月7日を予定しておりますのでお楽しみに…! さて、さらに今回のうたコラムでは、リリースまでついに1ヵ月を切ったこのタイミングで、見田村千晴さんへのミニインタビューを公開いたします!人間味とリアリティに溢れた歌詞に定評のある彼女の作詞論。グッと来たあのフレーズ。そしてアルバムを聴くみなさんへのメッセージ。リリース前に是非、歌詞エッセイと併せてご堪能ください ― 千晴さんが歌詞を書くときに大切にしていることを教えてください。 思ってないことを書かない。 埋めるだけの歌詞を書かない。 耳なじみの良い言葉に逃げない。 ― 歌詞を書くときの必須アイテムや場所、環境はありますか? まず環境としては“ひとりである”こと。別にカフェとかでも書けますけど、あまり大きな音楽が流れているところは嫌ですね。パソコンと手書きする用のノートは必需品です。iPhoneに書いてあるメモも大切。あとこれは環境ではないんですけど、私は1番のAメロから書き始めるということも必須かもしれない。頭から最後まで順番に書く方法じゃないと難しいんですよね。 ― 作詞の際、好きでよく使う言葉。逆に使わないように意識している言葉はありますか? 言われて気づいたのは<距離>ですね。あと<憧れ>とか<弱さ>とか<知りたい>とか<抱きしめたい>とかもよく使っている気がします。多分、作詞をするとき頭のなかにずっとあるワードだからでしょうね。使わないというか、扱い方に気を付けているのは<夢>だと思います。しらじらしくなりがちだから。<好き>とかも同じです。 ― 歌詞が良いと思うアーティストを教えてください。 自分自身が一番影響を受けているのは、小谷美紗子さん。あとは、ポエトリーリーディングの狐火さん。MOROHAさん、Creepy Nutsさん、RHYMESTERさんとかも好きですね。 ― 彼らの歌詞のどのようなところに惹かれますか? 言葉の強さ。私は我が強い人間なので、自分の音楽をBGMにされたくないという想いが結構あるんですよ。そうじゃない音楽を否定しているわけではないし、そういうものも必要だし、素敵だと感じるものもたくさんあるんですけど。私は「見田村千晴を聴いていると他の仕事ができない。手が止まっちゃう」って言われたいし、そういう力のある歌詞に惹かれますね。 ― とくにグッときたフレーズはありますか? RHYMESTER「 ONCE AGAIN 」の<「夢」別名「呪い」>ですね。この歌は好きなフレーズいっぱいあるんですけど、とくにここは、うわー、たしかに!って。夢ってどうしてもキラキラしたイメージだし「夢を持つことは良いことだよ」とか「夢を追っていて良いわね」とか言われがちだけど、そんな綺麗なもんじゃないよって思います。どれだけそれで苦しいかって。本当に「呪い」みたいなものですね。 ― 千晴さんはいろんなところから言葉のインスパイアを受けることがあるかと思いますが、とくに心に残っている言葉というと何でしょうか。 あー…。なんかね、私の歌詞に対して「病んでる」とか言われることですね。それは違うんだよなーって思います。最近はそんなに言われなくなりましたけど、メジャーデビューしたばかりの「 悲しくなることばかりだ 」のときとか、多かったですね。 ― なるほど。たしかに人間味のある歌詞って、ときに「メンヘラ」なんて言葉で片付けられちゃったりもしますしね。 そうそう。「メンヘラ」とかありえないな。それもやっぱりデビュー当時に言われて、ググりましたもん。「メンヘラ」という言葉の正確な意味があまりわからなかったから。その検索結果を読んで「絶対違う!」と思いました。なんか…そういう「違うのになぁ」って思うような嫌な言葉のほうがいろいろ残っていますね(笑)。 あ、でも「違うのになぁ」で言えば、私は結構、名前の漢字を間違えられることが多いんですね。たとえば「三田村」とか「千春」とか。そういうのが増えると、逆に嬉しくなるんですよ。そんなに私のことを知らないひとが聴いてくれているんだって、嬉しい。やっぱりせっかくリリースしたからには新しい方々にも届けたいので。 ただそれをリツイートすると、その書いてくれたひとに「名前間違えてんじゃん!」とか誰かからリプが飛んでしまう可能性もあるので、拡散できないという葛藤(笑)。だけど私は、名前を間違えられたって全然良くて、曲を聴いてくれているということへの嬉しさのほうがずっと大きいですね。 ― 千晴さんにとって、歌詞を書くこととはどんなことですか? うーん、拷問とまではいかないけど(笑)、でも苦しいですね。苦行です。ずっと鏡を見つめて、自画像を描いているような。今回のアルバム収録曲でとくに歌詞が難しかったのは「手のひらのラブソング」かなぁ。あんまり私っぽくないんじゃないかなとか思ったんですよね。嘘はつきたくないし。本当に歌詞は自分の鏡と思います。だからこそ苦しくても、納得できるまで自分と向き合って書きたいんです。 ― ありがとうございました!では最後に、今秋リリースされるニューアルバム『歪だって抱きしめて』を聴くみなさまにメッセージをお願いいたします。 自分の臆病さとか、醜さとか、嫌な部分って普段はあまり表面に出さずに生きているじゃないですか。私もそうですし。でも、それをずっと続けていると、本当の自分自身を見なくなっちゃうから。ときには、そういう自分を真正面に持ってきてあげて、認めてあげたほうが強くなれるんじゃないかなと思います。そんな気持ちで今回のアルバムを作りました。私は自分のために曲を書いているけど、聴いてくれたひとが「あ、この感覚、一緒だ」と思ってもらえる歌詞だったりワンフレーズだったりがあったら嬉しいです。そういう出逢いがこのアルバムのなかであればいいなと思います。 (取材・文 / 井出美緒) ◆配信シングル第1弾 「 禁煙席 」 2019年6月19日配信 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 ◆配信シングル第2弾 「 あの日雨が降ったから 」 2019年7月24日配信 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 ◆配信シングル第3弾 「 独白 」 2019年8月28日配信 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 ◆ニューアルバム『歪だって抱きしめて』 2019年10月9日発売 KCJT-0001 ¥2,800(tax out) <収録曲> 1. 禁煙席 2. 独白 3. ex. friend 4. 東京模様 5. あの日雨が降ったから 6. Woman 7. ユーモアが足りない 8. 銀河鉄道の夜 (※不可思議/wonderboy カバー) 9. 手のひらのラブソング