うららかな春、本当はあなたもここにいるはずだった…。

半崎美子
うららかな春、本当はあなたもここにいるはずだった…。
今年もまた、別れと出会いの季節がやってきましたね…。様々なところで“卒業ソング”を耳にする機会も多いでしょう。レコチョクの『RecoChoku S Studio』という若者研究プロジェクトでは、現役大学生を対象に「あなたにとっての卒業ソング」をはじめとした“卒業”に関する大調査を行ったそうです(調査期間:2017年2月1日〜2017年2月16日)。まずはそのランキングのトップ3にランクインした楽曲のフレーズをピックアップ。 瞳を閉じれば あなたが まぶたのうらに いることで どれほど強くなれたでしょう あなたにとって私も そうでありたい 「3月9日」/レミオロメン サヨナラは悲しい言葉じゃない それぞれの夢へと僕らを繋ぐ YELL ともに過ごした日々を胸に抱いて 飛び立つよ 独りで 未来(つぎ)の 空へ 「YELL」/いきものがかり 空、今日も青空です 泣き笑いしたあの時 あたりまえが未来に変わる 「希望」「夢」「愛」話したい 動くな時間 空に叫ぶ キミを忘れない 「道」/EXILE 1位にはやはり、圧倒的な票数を獲得してレミオロメンの「3月9日」がランクインした模様。もともとはメンバー共通の友人の結婚式を祝うために作られた楽曲だそうですが、今や卒業ソングの王者。また、ボーカル・ 藤巻亮太がソロ名義でセルフカバーした同曲も2017年3月1日に配信リリースされたばかり。今週やってくる3月9日、多くの方がこの曲を聴くことでしょう。そして、2位にはいきものがかり「YELL」、3位にはEXILE「道」がランクイン。その後に合唱曲「旅立ちの日に」、荒井由実「卒業写真」と続きます。いずれも納得の定番ソングですね! さて、今日のうたコラムではさらに、2017年に生まれた新たな卒業ソングをご紹介いたします。それは、来たる4月5日にメジャーデビューを果たすシンガーソングライター・半崎美子のデビューミニアルバム『うた弁』に収録される1曲。歌ネットではリリースに先がけ、歌詞の先行公開がスタートしております。この曲は、大勢で合唱するザ・卒業ソングというより、大切なただ1人の<あなた>のために捧げる“私だけの卒業ソング”です。 同じカバンに詰め込んだ日々と 並べた机に刻んだ日々と 枝先に膨らんだ うららかな春 本当はあなたもここにいるはずだった くだらないこと言い合って 肝心なことは言えないまま 止まった季節を追い越して 残った光を探していた 桜 花びらが舞う 一緒に見ていた夢を ふわり空にのぼった あなたに送りたい 「サクラ〜卒業できなかった君へ〜」/半崎美子 タイトルからもわかるように、卒業の日、<本当はあなたもここにいるはずだった>のにその姿はないようです。なぜなら<あなた>は卒業を迎える前に<ふわり空に>のぼってしまったから…。もしかしたら、この記事を読んでくださっているみなさんのなかにも、同じような経験をしたことがある方、同じような気持ちを抱いたことのある方、今まさに抱いている方、いらっしゃるのではないでしょうか。 最後に見たあなたは いつも通りの笑顔だった 行く宛てのない気持ちだけ 進んだ時間を巻き戻す 桜 花びらが散る あの日この場所で ひらり風に吹かれて 何を思っていたんだろう 桜 花びらになり いつか会いに行く 「サクラ〜卒業できなかった君へ〜」/半崎美子 卒業式というのは、別々の道を歩んでゆく前に、一度ちゃんと“さようなら”を言うための大切な日でもあります。しかし<あなた>との永遠の別れは、突然にやってきました。自分のなかに残り続けるのは、まさかその日が最後になるなんて思いもしなかった<いつも通りの笑顔>だけ。そんなバイバイはツライですよね…。だからこそ<行く宛てのない気持ちだけ 進んだ時間を巻き戻す>のでしょう。しかし、作家・川上弘美さんの『晴れたり曇ったり』というエッセイには次のような言葉が綴られていました。 生きていても、会わなければ、いないのと同じだ。 同じように、生きていなくとも、思い出せば、 会ってるのと同じだ。 (川上弘美『晴れたり曇ったり』より引用) おそらく「サクラ〜卒業できなかった君へ〜」の主人公も、卒業式でちゃんと<あなた>に“会ってるのと同じ”なのではないでしょうか。<同じカバンに詰め込んだ日々>や<並べた机に刻んだ日々>や<一緒に見ていた夢>のこと。<最後に見た>笑顔。旅立ちの日に“自分”は、強く強くその人のことを思っていたことが伝わってきます。それだけで<あなた>は、たとえ生きていなくとも、その場に存在していることと同じ、なんだと思います。 だからきっと、この歌だって<あなた>に届いていることでしょう。直接“さようなら”を言うことは叶わなかったけれど、心の中ではちゃんと、また空の向こうで会えるまでのお別れの言葉を捧げられているのです。卒業できなかった<あなた>は、「サクラ〜卒業できなかった君へ〜」によって卒業できた、とも言えるのかもしれません。まさにこの歌を捧げたい大切な人がいるという方は是非、その人との日々をたくさん思い出しながら、聴いてみてください。 ◆ミニアルバム『うた弁』 2017年4月5日発売 CRCP-40505 ¥2,037(tax out) <収録楽曲> 1. サクラ 〜卒業できなかった君へ〜 2. お弁当ばこのうた 〜あなたへのお手紙〜(NHK『みんなのうた』4月〜5月) 3. 稲穂 4. 天国3丁目 5. 深層 6. 夏花火 7. 鮮やかな前途 8. ふたりの砂時計