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indigo la End

結んでもないから、僕はまだ君を愛さないことができる。

切れやすい糸でむすんでおきましょう
いつかくるさよならのために
(笹井宏之)


 こちらの笹井宏之さんの短歌は、以前うたコラムにてindigo la End「はにかんでしまった夏」をご紹介した際に引用したものです。この曲の主人公は、まさに【いつかくるさよならのために】わざと関係を【切れやすい糸でむすんで】おいて、いざというときに傷が浅くて済むように、感情的にならなくて済むように、予防線を張っておりました。

全然何ともないはず
涙が出るなんてないはず
でも感情的なブランコに
振られ続けるの何で
考えたっていないのに
君は絶対にいないのに
おかしいな
はにかんでしまった夏を
見逃さず睨んだ
はにかんでしまった夏」/indigo la End


 しかし、結局は“<はにかんでしまった>=うっかり深い恋に落ちてしまった”がゆえに、別れたあとも<感情的なブランコに 振られ続ける>ハメに…。さて、今日のうたコラムでは、そんな「はにかんでしまった夏」の<僕>よりもさらに強い意志で、恋の予防線を張ろうとした主人公が描かれている、indigo la Endの最新曲をご紹介いたします。

想いの距離が今
近付き過ぎていたことに
気付いた面が熱を帯びた
火照った心の素
君に見せないように
喜怒哀楽のスロット早回しした

ぐるぐる変わる僕の中でも
君はずっと素敵だ
だから僕は言えない
“好きだなんて言わない”
その先にある未来は
限りなく壊れることはないってだけ
「結び様」/indigo la End

 2019年10月9日に“indigo la End”がリリースする、ニューアルバム『濡れゆく私小説』の収録曲であり、現在先行配信中の新曲。足立梨花×白洲迅のダブル主演ドラマ『僕はまだ君を愛さないことができる』のエンディング曲として書き下ろされた「結び様」です。この曲の<僕>の場合、まず【切れやすい糸で】結ぶことさえ拒んでいるんです。
 
 なぜなら、やはり【いつかくるさよなら】が怖いから。終焉にたどり着かないよう、自分の<火照った心の素>を隠して、<喜怒哀楽>に先回りをして“好きだなんて言わない”と理性のブレーキをかけております。始めなければ終わらない。好きと言わなければ<未来は 限りなく壊れることはない>と、この恋を守ろうとしているのでしょう。

結んでもない
結んでもないから
僕はまだ君を愛さないことができる
いつでも仕舞い込める
悩んでもない
悩んでもないフリ
上手くはないけど
不器用には慣れるから

好きにならなきゃよかった
それだけは言いたくなくて
“好きにならないから”
って子供みたいだな
「結び様」/indigo la End


 そしてサビでも、繰り返し自分自身に<結んでもない 結んでもないから>と言い聞かせる主人公。それぐらい<僕>には、結ぶより大切なことがあるのです。それは“不変”であること。この恋が<好きにならなきゃよかった>なんて言ってしまうものにならないように、素敵な<君>のそばにいられなくならないように、何度も<僕はまだ君を愛さないことができる>と確認し、同時に“変わらない関係性”に安心するのです。

結んだ夜明けの想いが裏腹に
僕を締め付ける
だからもう迷わない
仕舞い込むこと決めた

結んでもない
結んでもないから
僕はもう君を愛さないことにするよ
この歌にだけ残す
「結び様」/indigo la End

 ただし、歌の終盤では【結ぶ】というワードに二重の意味が生じております。これまではおそらく“恋愛関係になること=つながること”を【結ぶ】と表現してきたはず。それが“何かを締めくくること=終わりにすること”を意味する【結ぶ】も綴られているのです。つまり<僕>は【結ぶこと(想いを締めくくること)】で【結ぶこと(繋がること)】へのかすかな期待に、終止符を打つ決意をしたのではないでしょうか。
 
 すると<結んでもないから 僕はもう君を愛さないことにするよ>というフレーズも、新しい意味に捉えられそう。歌の前半では“まだ恋愛関係でない”がゆえに<僕はまだ君を愛さないことができる>と、選択の余地がありました。でも終盤では<僕はもう君を愛さないことにするよ>と、ただひとつの選択を告げています。これは【結んでもない(想いを締めくくってない)】から、もう【結ぶ(終わらせる)よ】という意志でしょう。

回しても回しても
揃わない当たりの気持ち
僕はなんだか損をしてるみたいだ
好きにならなきゃよかった
「結び様」/indigo la End

 こうして幕を閉じてゆく歌。最後の最後が、一番言いたくなかったはずの言葉<好きにならなきゃよかった>であることが皮肉ですよね…。こうなりたくないからずっと“好きだなんて言わない”ようにしてきたのに。“好きにならないから”と言い続けてきたのに。そのやるせなさは「結び様」というタイトルに、込められているように思えます。
 
 「結び様」とは、結んでゆく様子のこと。ですが「様(ざま)」という語は、その様子をあざけったりする際に使う言葉です。きっと<僕>は【結べず(繋がれず)】に、もっとも最悪な形で【結ぶ(締めくくる)】ことになった恋を、自嘲的に見つめているのでしょう。そして、結局こんな「結び様」だよ…と、吐き捨てるように<好きにならなきゃよかった>と歌っているのでしょう。
 
 たとえ【切れやすい糸でむすんで】も、結ぶことを拒んでも、自分の意思に反して、深みにハマってしまうのが、恋というもの。複雑に絡まってゆく恋心の様子を、indigo la End「結び様」から見つめてみてください。どうかみなさんは<好きにならなきゃよかった>とこぼれてしまうような結末を、迎えずにいられますように。

◆紹介曲「結び様
2019年7月16日配信リリース
作詞:川谷絵音
作曲:川谷絵音