泣き損がいつも嬉しいんだ。

 2019年10月9日に“indigo la End”ニューアルバム『濡れゆく私小説』をリリースします。今日のうたコラムでは、その収録曲からドラマ『僕はまだ君を愛さないことができる』挿入歌である新曲「小粋なバイバイ」をご紹介! 尚、同ドラマの主題歌、indigo la End「結び様」も以前、うたコラムにて取り上げております!

吹きこぼれた後の
やり場のない台所
感情的になるには
絶好のタイミング
声も荒げずあなたが
出て行ったあと静けさの中で悩んだ
このまま終わらせるかどうか
「小粋なバイバイ」/indigo la End


 この恋の終焉を予感させる歌の幕開け。胸中の熱が高まって高まって<吹きこぼれた>のは、主人公の言葉でしょう。好きゆえに、つい二人の関係にとって、致命的な本音をこぼしてしまったのではないでしょうか。それによって、一瞬でジュッと消えた愛の炎。訪れる沈黙。そこで<あなた>も同じように<感情的になるには 絶好のタイミング>だったはず。

 しかし、感情が<吹きこぼれ>てしまった主人公の激しさと相反し、<あなた>は静かに<声も荒げず>出て行ってしまいました。ひとり残された<やり場のない台所>では、いっそう<静けさ>が際立ち、自分の熱も徐々に冷めていく様子が伝わってきますね…。そして、消えた炎をもう一度つけるべきか、それとも<このまま終わらせるか>、静まった自身の感情と改めて向き合ってみるのです。

決まった期限がきたと
思えば思うほど単純なことで
なんだかんだ次の方が
想い強くなるものだしさ
絶対が無いから良い想像はご勝手にって
神さまも言ってるけど
「小粋なバイバイ」/indigo la End


 単純に考えれば、この恋はもう“寿命=<決まった期限>”がきたんだと思えばいいだけ。それに「絶対にこの人じゃないといけない」わけでもない。でも<絶対が無い>ということは「絶対にやり直せない」わけでも「絶対に終わり」なわけでもないんですよね。どんな<良い想像>をしようと、どんな選択をしようと、すべて自分次第。だから…。

恋心は小粋だから
簡単には終わりが来ない
一回のバイバイで泣いたくらいじゃ
結局あなた以外自信ないんだ
泣き損がいつも嬉しいんだ
当然のようにいて
バイバイあなた以外
「小粋なバイバイ」/indigo la End


 だから、主人公は<一回のバイバイで泣いたくらいじゃ>恋を終わらせません。というより、嫌でも<終わりが来ない>のです。だって<恋心は小粋だから>いろんな形で、また“想うパワー”を与えてくるのです。たとえば<結局あなた以外自信ない>と思い知らされることも然り。これは逆に言えば<あなた>とならやっていけそうな気がするという“希望”でもありますよね。
 
 さらに<泣き損がいつも嬉しいんだ>と感じることも然り。自分が泣いてばっかりの恋で、報われないし、時間も損なわれていくし、心身も壊れていくかもしれません。でも、そうやって損をすることさえ<嬉しい>くらいに<あなた>を好きなのでしょう。痛みも傷も<あなた>がくれたものだから愛おしいのでしょう。そして<バイバイあなた以外>と言ってしまえるほど、主人公の世界にとっては<あなた>がすべてとなるのです。

恋心は小粋だから
簡単には終わりが来ない
一回のバイバイで泣いたくらいじゃ
結局あなた以外自信ないんだ
泣き損がいつも嬉しいんだ
当然のようにいて
バイバイ バイバイ

小粋なバイバイ
「小粋なバイバイ」/indigo la End


 こうして幕を閉じてゆく歌。何度でも泣く覚悟や、何度でも<バイバイ>を越えてゆく決意が、ラストの<バイバイ バイバイ>には込められているのではないでしょうか。曲の疾走感と高まってゆく“好き”の相乗効果がたまらない、indigo la End「小粋なバイバイ」を是非、ご堪能ください…!

◆紹介曲「小粋なバイバイ
作詞:川谷絵音
作曲:川谷絵音

◆Major 5th Full Album『濡れゆく私小説』
2019年10月9日発売「
通常盤 WPCL-13103 ¥3,000+税
初回限定盤 WPZL-31658 ¥4,000+税

<収録曲>
1、花傘
2、心の実
3、はにかんでしまった夏
4、小粋なバイバイ
5、通り恋
6、ほころびごっこ
7、ラッパーの涙
8、砂に紛れて
9、秋雨の降り方がいじらしい
10、Midnight indigo love story
11、結び様