君と付き合った2年間と3ヶ月と5時間と52秒は無駄。

 2018年12月12日に“ACE COLLECTION”が、初のオリジナル曲「鬱憤」をデジタルリリースしました。彼らは、たつや◎(Vo&Gt.)、LIKI(Gt.)、奏(Ba.)、RIKU(Dr.)からなる4人組ロックバンドです。新曲の配信前からすでに人気が高く、先行公開されていた歌詞は【注目度ランキング】で最高2位を記録。今日のうたコラムではその注目曲をご紹介します。

大抵のカップルがそのままのお互いを好きになって
付き合ったくせにいつのまにか交わすLINEの大好き
さえも意味をなくして3ヶ月くらいした時には
倦怠期とやつでMr.いざこざばかりご覧の有様

そんなこと言ったって喧嘩するほど仲がいいって言うし
私たちの愛はあなたに負けるわけないでしょ
あなたがそんなに言えるほど恋愛マスターじゃあるまいし
毎時毎秒彼のことばかり考えてるもう彼に乗り換えたの
「鬱憤」/ACE COLLECTION

 歌の冒頭から、元恋人同士がお互い【鬱憤(うっぷん)】をぶちまけ合っております。前半は“振られた側”の気持ちであり、後半は<もう彼に乗り換えた>側の気持ちでしょう。ちなみに【鬱憤】とは、自分の心の中だけに抑えてきた怒りや恨み、不平・不満のこと。付き合っていたときは我慢していた、そんな様々な感情が今、爆発しているのです。

 まず“振られた側”の主人公は<大抵のカップル>への皮肉としながら<君>に対する【鬱憤】を放ちます。最初は<そのままのお互いを好きに>なり、LINEで「大好き」などと言い合ったくせに、結局は自分のもとを離れていった<君>への不満。しかももう新しい<彼に乗り換え>ていることへの怒り。とても「お幸せに」と笑える状態ではなさそう。

 一方<私>は、完全に切り替えモード。元恋人の<あなた>が何を言おうと<私たち>には関係ない。<あなた>とは乗り越えられなかった<倦怠期>だって、今の恋人となら<喧嘩するほど仲がいいって>やっていける。とにかく<毎時毎秒彼のことばかり考えて>いて<あなた>の声など今「どうでも良いの!」という【鬱憤】が伝わってきます。

君の最寄りまでわざわざ会いに行った20分間と
君と手を繋ぎあって過ごした6時間は幸せだった
お別れする2分間のホームの上でキスした3秒間と
君と付き合った2年間と3ヶ月と5時間と52秒は無駄
「鬱憤」/ACE COLLECTION

 だからこそ、悲しく響くのがサビです。主人公のなかではまだ<君の最寄りまでわざわざ会いに行った20分間>も<君と手を繋ぎあって過ごした6時間>もちゃんと<幸せ>な記憶として心に残っています。それなのに<君>は新しい<もう彼に乗り換え>次の幸せを築き、すでに元恋人などどうでもいいと思っている。そのことが空しくて、寂しくて、悔しくて、悲しくて、皮肉でも吐いていないとやっていられないのではないでしょうか。
 
 そして、印象的なのが<君と付き合った2年間と3ヶ月と5時間と52秒は無駄>というフレーズ。これは「得るものはなかった」という意味の<無駄>ではない気がします。本気だったから、期待していたから、たとえば“結婚”すら考えられるような相手だったから、いっそう「無駄にしたくなかったのになぁ」というやるせなさが際立ってくるのでしょう。そうでないと<2年間と3ヶ月と5時間と52秒>なんて時間計算までしませんよね。

あなたのことを駅で待ち続けていた120分と
あなたが仕事の愚痴を吐いた6時間に嫌気がさして
お別れする2分間のホームの上で甘ったるいあなたを許し付き合った
2年間と3ヶ月と5時間と52秒は無駄
「鬱憤」/ACE COLLECTION

 ただし、続く歌詞に綴られている<君>側の気持ちを読み進めてみると、どうして二人が別れることになってしまったのか、その理由が少しずつ見えてくるんです。たとえばサビを比べてみましょう。先ほど主人公は<君の最寄りまでわざわざ会いに行った20分間と 君と手を繋ぎあって過ごした6時間は幸せだった>と過去を振り返っておりました。

 でもそれは<君>からしたら<あなたのことを駅で待ち続けていた120分と あなたが仕事の愚痴を吐いた6時間>であり<嫌気>がさすような時間だったのです。つまり<幸せ>ではなかった、まさに【鬱憤】が溜まる時間だったのです。きっと主人公よりもずっと前から<君>はそんな【鬱憤】をたくさん積み重ねてきた…。それが<2年間と3ヶ月と5時間と52秒は無駄>になってしまった原因なのだと思います。

君が振り回す世界に飲まれていた

君の最寄りまでわざわざ会いに行った20分間と
君と手を繋ぎあって過ごした6時間は幸せだった
お別れする2分間のホームの上でキスした3秒間と
君と付き合った2年間と3ヶ月と5時間と52秒は無駄
君と付き合った2年間と3ヶ月と5時間と52秒は無駄
「鬱憤」/ACE COLLECTION

 この歌に描かれているのは、両者それぞれの【鬱憤】ですが、よく『怒りとは、本当は悲しみである』と聞きます。もしかしたら二人とも、うまく言葉で伝えられない、分かり合えない“悲しみ”を積み重ねていた(今も積み重ねている)のかもしれませんね。大切なひととの時間を無駄にしたくない方も、無駄にしてしまった方も、今【鬱憤】が溜まっている方も、是非いろんな気持ちでACE COLLECTION「鬱憤」を聴いてみてください…!

◆紹介曲「鬱憤
作詞:たつや◎
作曲:たつや◎・LIKI