君にいいことがあるように、今日は赤いストローさしてあげる。

 2018年5月2日に“aiko”がニューシングル「ストロー」をリリースしました。尚、すでに公開されているタイトル曲のMVは、恋人とパジャマ姿で朝ごはんを食べたり、ドライヤーで髪を乾かしてあげたりといったシーンが印象的で、aikoとの【同棲疑似体験】ができる映像となっているんです。では是非、愛しい人との二人暮らしを、歌詞からも想像しながら聴いてみてください。

君にいいことがあるように
今日は赤いストローさしてあげる
君にいいことがあるように あるように あるように
「ストロー」/aiko


 まず、今作が生まれたきっかけは、aikoが自宅で使っている、いろんな色のストローなんだとか。それをおみくじみたいに1本引いて、選んだ色で今日の運勢を決める。なかでもaikoは<赤いストロー>を引いたとき、なんだか嬉しくなったのだそう。自分流の大吉ですね!そして、その時に感じた「小さいけどなんか前向きになれる嬉しい事が好きな人にたくさん起こったらいいな」という想いが、この歌詞へと繋がっているのです。
 
 そんな“ストローみくじ”のように、毎日がちょっと楽しくなる手作りジンクス。好きな人との生活で共有できたなら、もっとワクワクは増すことでしょう。だからこそ<君にいいことがあるように>と、心でおまじないのように唱えながら<赤いストローさしてあげる>姿からは、幸せな朝の様子が伝わってきます。また【赤】という色には、エネルギッシュに今日を過ごしてほしい気持ちや、勇気をあげたい気持ち、そうした“愛情”が自然と表れているのではないでしょうか。

初めて手が触れたこの部屋で
何でもないいつもの朝食を
喉を通らなかったこの部屋で
パジャマのままでお味噌汁を

寝癖ひどいね 行ってらっしゃい
小さくさようならと手を振る
明日も君の笑顔を見られますようにと手を振る
「ストロー」/aiko

 続く歌詞からは、時間の経過と、そのなかで育まれてきた愛を感じますね。あの日<初めて>の“特別”を味わった<この部屋>は、今や<いつもの朝食を>味わう“日常”へと変わりました。それに、あの頃はドキドキで食事も<喉を通らなかった>けれど、今や<パジャマのままでお味噌汁を>飲むような自然体の関係になっております。ただし、この主人公はきっとそんな当たり前の日々に、あぐらをかくわけではないのでしょう。

 だって、一日一日を“ストローみくじ”で大切に味わうような主人公です。今日は今日でとことん愛しつくす。だけど明日は何があるかわからない。どこかそのような気持ちも抱いているように感じられませんか? 今日の<君>は今日にしかいない。それゆえに毎朝「行ってらっしゃい」と手を振りながら、今日の<君>に<小さくさようなら>をするのです。同時に、また新しく<明日も君の笑顔を見られますようにと>祈るのです。

延長戦を繰り返してやっと見えた本当の痛みは
出会った頃より悲しくて寂しくて大切で
「ストロー」/aiko

 さらに「ストロー」は一見、前向きで幸せな気持ちに満ち切っているようで、実はそれだけではなさそう。歌詞の終盤に綴られている<延長戦>とは、おそらく二人の恋の軌跡のことでしょう。ずっと一緒にいたいと思える大吉な日もあった。もう無理かもと思ってしまう大凶な日もあった。そんな<今日>をたくさん繰り返してたどりついたのが“今”です。でも、そこで見えた<本当の痛み>があるのです。それは一体何なのか…。答えは、aikoの過去の楽曲からも見えてきそうです。

瞼も爪も髪も舌も離れなくて困った
幸せは怖いものだ
「恋のスーパーボール」/aiko

 幸せは怖いものだ。「ストロー」の主人公が見えた<本当の痛み>もまた、そんな感情に似たものなのではないでしょうか。一緒に暮らして、その上でもう離れられないと確信して、今日がとても幸せだからこそ“もしも明日、失ったときの痛み”を考えただけで<出会った頃より悲しくて寂しくて>仕方がない。でもその<本当の痛み>の分だけ、それ以上に強い<大切>が際立つのが、この歌の魅力であると思います。

君にいいことがあるように
今日は赤いストローさしてあげる
君にいいことがあるように あるように あるように
「ストロー」/aiko

 明日も、明後日も、最期の日も、ずっと一緒にいたいから、まずは今日<君にいいことがあるように>…。そう願う愛の歌が、aikoの「ストロー」です。みなさんも是非、自分だけの手作りジンクスを恋人との生活のなかに取り入れて<君にいいことがあるように あるように あるように>と口ずさんでみてはいかがでしょうか。なんだかそれだけで運勢が上向きになりそうですね…!

◆紹介曲「ストロー
作詞:AIKO
作曲:AIKO