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今日のうた

JUJU

かわいそうなのは、あの子じゃなく、ああ…。

 2018年2月21日に“JUJU”が、約2年ぶりとなる7枚目のオリジナルアルバム『I』をリリースしました。収録曲を聴いてみると、今作のタイトルどおり、まさに1曲1曲それぞれの【私】が描かれているんです。そして、その【私】は歌を通じて様々な【アイ】を伝えております。愛、逢、遭、藍、相、合…。今日のうたコラムでは、そんな様々な【アイ】が詰まったアルバムから新曲「かわいそうだよね(with HITSUJI)」をご紹介!

 尚、この歌は“平井堅”から初の提供曲。本人が「今までの彼女に無い、泥臭い、心の嗚咽の様な曲を目指したつもりです」と語る、名バラードです。さらに、曲タイトル中の“(with HITSUJI)”が気になっていた方も多いのではないでしょうか。こちらはなんと女優の“吉田羊”さん!2月23日(金)放送のTBS『ぴったんこカンカン』にJUJUと吉田羊さんが出演&「かわいそうだよね(with HITSUJI)」を歌唱。SNS上でも大きな話題となっておりますので、是非、コラムを読みながら歌詞をチェックしてみてください。

「あの子ってかわいそうだよね」
いつも陰で笑っていた
くだらない服 くだらない話 くだらない笑顔
「ああはなりたくないね」と話してた

「あの子ってかわいそうだよね」
いつも馬鹿にして見ていた
平凡な夢 平凡な爪 平凡な恋人
どこにでもあるものなど欲しくなかった

選ばれた女であるためには 孤独さえ愛した
「かわいそうだよね(with HITSUJI)」/JUJU

 まず「かわいそうだよね(with HITSUJI)」のテーマとなっている【アイ】を漢字一文字で表すなら【哀】でしょう。歌の冒頭から伝わってくるのは「あの子ってかわいそうだよね」と、いつも影で笑い<馬鹿にして見ていた>皮肉な哀れみの【哀】です。どうして<あの子>が可哀想かというと、かつての<あたし>にとって、彼女の日常はあらゆるものが<くだらない>ものや<平凡>で出来上がっているように見えたから。そんな毎日はツマラナイと感じていたから。

 逆に言えば<あたし>自身は、正反対の生き方を正義としていたと考えられます。特別な服を身にまとって、特別な夢を抱いて、ネイルだってサロンでお金をかけて特別にしてもらって、自慢したくなる“特別な恋人”もいて…。ただし同時に、そのような<選ばれた女であるため>の生き方には<孤独>が切り離せなかったという本音もフレーズから見えてきますね。それでも<孤独さえ愛した>ことで何とか<あたし>というブランドを保ってきた…。しかし、今やすべては“過去形”になってしまっているのです。

だけど クローゼットの中には2年前のワンピース
あたしにしか出来ないことなど 何ひとつなかった
からっぽなのは誰でもなく この無様なあたし
かわいそうなのは あの子じゃなく
ああ あたしだった
「かわいそうだよね(with HITSUJI)」/JUJU

 きっと<2年前のワンピース>には<選ばれた女であるために>生きていた頃の自信から、やがて<あたしにしか出来ないことなど 何ひとつなかった>と気づいてしまった頃の失望まで、いろんな感情が含まれているのだと思います。だけどもう、何もかも一緒に<クローゼットの中に>閉じ込めた…。その結果、残ったのは<からっぽ>で<無様なあたし>です。ここでは先ほどの“哀れみ”の【哀】のベクトルが<あの子>から<あたし>へと変わっているんですね。

「あの子ってかわいそうだよね」鏡の中で呟いてた
正しい嘘 正しい過去 正しい強がり
どこにでもある道だけ 避けて歩いた

あの頃のあたしがあたしを見て 何を思うだろう
「かわいそうだよね(with HITSUJI)」/JUJU

 さらに続く歌詞では、「あの子ってかわいそうだよね」という言葉がだんだん<鏡の中>の自分に言い聞かせるようなものに変わってきた頃の回想も描かれております。それは多分<どこにでもある道だけ 避けて歩いた>この生き方を肯定したかったからでしょう。間違っているだなんて思いたくなかったからでしょう。人は時に、誰かと比べて、誰かを下に見ることで、何とか自分を保とうとするものです。
 
 つまりこの時点で、もはや特別な<あたし>のブランドが崩壊しかけていることに、もしくは、そんなブランドは幻想であったことに、気づき始めていたということ。だからこそ「あの子ってかわいそうだよね」という言葉を呪文のようにしていたわけですが、実は本当に<あたし>が欲しくなっていたものとは、馬鹿にしていたはずの、くだらなくてありきたりで<平凡な>幸せなのではないでしょうか。もし今の<あたし>が<あの頃のあたし>に声をかけられるのだとしたら、おそらく「そのままでいいよ!」とは言わないはずです…。

クローゼットの中には2年前のワンピース
あたしにしか出来ないことなど 何ひとつなかった
からっぽなのは誰でもなく この無様なあたし
かわいそうなのは あの子じゃなく ああ…

あたしの心の中には こぼれ落ちたあなた
あたしにしか出来ないことなど 何ひとつなかった
越えられない夜にひとりきり 床のホコリを見てた
かわいそうなのは あの子じゃなく
ああ あたしだった

あたしって かわいそうだよね
「かわいそうだよね(with HITSUJI)」/JUJU

 歌のラストはさらに痛切です。心の中に<こぼれ落ちたあなた>とは、当時の“特別だったはずの恋人”でしょうか。それとも“特別なはずだったあたし”でしょうか。いずれも今となっては<床のホコリ>と同等…。誇り(プライド)だと信じて疑わなかったものは、何の価値も無くして過去に転がっているのです。そして最後の最後の<あたしって かわいそうだよね>というフレーズ。哀れみの【哀】ではないように思えます。これは哀しみの【哀】ですよね…。
 
 このように「かわいそうだよね(with HITSUJI)」は歌の中で【哀】のベクトルや意味合いがどんどん変化してゆくのです。みなさんも思わず「あの子ってかわいそうだよね」と口にしてしまうこと、ありませんか? その言葉は数年後、数十年後、そのまま自分に返ってくるものなのかもしれません…。JUJU×吉田羊が届ける【哀】の歌。じっくりと、浸ってみてください。