今年も開催された『SION-YAON』。まだ青さが残る空の下、《眩しすぎる空 どこまでも青い空》という歌い出しが心地良く響いた「青と透明」で幕を開ける。そして、今回はニューアルバム『Kind of Mind』の発売記念ということで、最新作のナンバーを次々と披露。SIONの曲は過去の曲であっても古さを感じさせないように、いい意味で新曲であっても真新しさを感じさせない。アルバムを数回聴いただけで、もう自分自身の歌になっているのだろう。いつも自分に寄り添っている楽曲たちと同じように、新しい曲たちに酔いながらも、《きっと俺はまだ大丈夫》(「ひと笑い」)や《人は超えていく 大切や絶望を》(「気力をぶっかけろ」)などの言葉を噛み締めていたのは、僕だけではなかったはずだ。日が落ち、涼し気な風が吹く中、イントロが流れただけで歓声が沸いた「がんばれがんばれ」。ゆったりとしたサウンドに体を預けながら、やさしい歌声に抱き締められていた観客だったが、終盤に差し掛かった「新宿の片隅から」や「マイナスを脱ぎ捨てる」の頃になると一緒になって歌い、拳を高らかと突き上げ、本編ラスト「Hallelujah」では《ハレルヤ》という声を日比谷の夜空に響かせるのだった。
昨年の野音は震災後ということもあって、怒りだったり、憤りを感じる辛辣な言葉が印象的だったが、深刻化する時代の中で自分を直視するような、自分を奮い立たせるような言葉が残った今年の野音。アンコールのステージでは「小さい天使」や「41」などから今日を越えていく力をもらった。また、何度も胸の奥と目頭が熱くなったライヴの余韻と一緒に《俺の仕事は音楽と人生を楽しむことだ》(「バラ色の夢に浸る」)という言葉を心に刻み込みながら家路についたのも、僕だけではなかったはずだ。