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Dragon Ash ライヴレポート

【Dragon Ash ライヴレポート】 『DRAGONASH LIVE TOUR 「UNITED FRONT 2020」』 2020年12月29日 at Zepp Haneda Tokyo

2020年12月29日
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12月29日に『DRAGONASH LIVE TOUR「UNITED FRONT 2020」』のZepp Haneda(TOKYO)公演が開催された。「UNITED FRONT 2020」はDragon Ashが盟友を迎えて行なってきた対バンツアー。2年振りの開催となる今回は、12月18日の仙台GIGS公演にSiMを、この日のZepp Haneda(TOKYO)公演にMONOEYESを迎えて行なわれた。Dragon Ashにとっては2020年秋、ダンサーのATSUSHIとDRI-Vが脱退し、5人体制となってから初めてのツアーでもある。さらに、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、ガイドラインに則った数々のルールも存在する。さまざまな特別が入り混じる中、ライヴは幕を開けた。

まず登場したのはMONOEYES。1曲目の「Run Run」からたくさんの拳に迎えられる。さらに、「Free Throw」や「Fall Out」は満開のハンドクラップに彩られる。そんな様子に細美武士(Vo&Gu)はDragon Ashのファンにも感謝を述べていた。彼らも2020年は配信ライヴや『Semi Acoustic Live Tour 2020』は行なっていたものの、2020年9月にリリースしたアルバム『Between the Black and Gray』の収録曲をバンドサウンドの爆音でオーディエンスの前で演奏するのは初めて。フロアーへ乗り出しそうな勢いで弾きまくる戸高賢史(Gu)、満面の笑顔を見せる一瀬正和(Dr)、目力も歌力も増したパフォーマンスを見せるScott Murphy(Ba&Cho)、そしてニューアルバムの楽曲...特にずっしりとした響きが今に溶けていくように感じられた「Nothing」、疾走感に留まらない説得力を宿した「リザードマン」に、これは今のMONOEYESの彼にしか書けない楽曲だと説得力を感じた細美。エッセンシャルワーカーへの真摯な感謝や“明けない夜はない、やまない雨はない”という言葉、そしてエレキギターを持っているからこそあふれ出てくる本音や感情は、配信で観ていても深く共鳴できた。

終盤にかけて熱はどんどん高まっていき、会場組はメンバーと跳び、配信組はシンガロングを届けた(はずの!)「My Instant Song」、全てを越えていきそうにアグレッシブな輝きを放っていた「Borders & Walls」から、最後は聴けば聴くほど2020年の歌に感じられる「彼は誰の夢」。“お前ら絶対、よいお年をお迎えください”という細美の言葉と、全てのオーディエンスの祈りにも似た余韻を残して4人はステージを降りた。

続いて配信では、仙台GIGS公演からSiMのパフォーマンスがダイジェストで披露された。バットを担いだMAHが不敵な笑みを浮かべる「BASEBALL BAT」から、ライヴで狂騒の光景を生み出してきた「BLAH BLAH BLAH」「f.a.i.t.h」という、敢えての攻めの姿勢が感じられる3連発に、画面越しでも昂らずにはいられない。とはいえ、ガイドラインを守った状態では、今までのように動くことはできないため、いつもオーディエンスがフロアーの左右に分かれてウォール・オブ・デスが起こる「f.a.i.t.h」でMAH(Vo)は、何か分けられるものはないかという苦肉の策で、個々でできる“ウォール・オブ・前髪”という手法を提案していた。会場のオーディエンスは笑顔だったけれど、当然もどかしさもあっただろう。しかし、“この環境に慣れないでください。モヤモヤを燃やし続けたい”というMAHの言葉で腑に落ちた。彼らも2020年6月にニューアルバム『THANK GOD, THERE ARE HUNDREDS OF WAYS TO KiLL ENEMiES』をリリースしている。ライヴが難しい2020年に思考を凝らしながら果敢に動き続けた彼らの揺るぎなさを、配信からも垣間見ることができた。

さぁ、いよいよDragon Ashの登場だ。記念すべきオープナーは「光りの街」。いきなりこんな印象を抱いては、結成20年を越えるベテランに失礼かもしれないが、5人ともバンド少年さながらのピュアな表情! そして、サポートのT$UYO$HI(The BONEZ/Pay money To my Pain)のベースも含めて全ての音が温かい。Kj(Vo&Gu)は“俺たちは今できることを喜んで表現しようと思っています”と言っていたけれど、その感情がパフォーマンスにストンと落とし込まれているようだった。いつも年間50本以上ライヴを行なってきた彼らだけれど、2020年はこれで10本目。歯がゆさを抱えながらも、だからこそ一曲一曲、一音一音を大切に鳴らしていることが伝わってきた。

低音がお腹にクる「Mix it Up」、リフが癖になる「Fly Over feat. T$UYO$HI」、美しいメロディーが広がっていく「Ode to Joy」で、ライヴの醍醐味をたっぷりと感じたところで「静かな日々の階段を」。20年前に発表された真っ直ぐな願いの歌が、今の私たちの願いも肯定するようにやさしく響く。そこから、曲名からして意思そのものな「The Show Must Go On」! 山あり谷ありで進んできた、波乱万丈なバンドの物語を思う。続いては、そんなバンドをいつも照らしてきたナンバー「AMBITIONS」。楽しそうに踊るオーディエンスに、やはり音楽には、ロックバンドには、他にない解放感が出せるのだと改めて感じた。

特筆すべきだと思ったのは「ダイアログ」前のMC。Kjが自分の創作欲求は満員のグチャグチャのライヴハウスで曲を披露するという着地点しかない、今の状況だと何のために曲を書くのか分からないという迷いを吐露した時、配信のチャットで“あなたたちの新曲を待っている”という声がたくさん見られたのだ。“届け!”と祈りながら画面を観続けた。そして、Kjはそんな中でも“SiMとMONOEYESはめちゃくちゃカッコ良いアルバムを出した”とリスペクトを表明。カッコ良い新譜を出した盟友を、ひとつでも多くのステージに立たせたい――そんな、今回の対バンの意図が見えた。

ジャンプする客席にライヴはオーディエンスとともに作るものであるという事実が映し出されていた「Jump」。そんな守り続けてきた美しい場所のための歌「百合の咲く場所で」。さらに、私たちの気持ちを代弁するような「A Hundred Emotions」を経て、ラストは「Curtain Call」。温かな余韻を明日から生きる糧として残すような名曲で、メッセージ性を感じる楽曲を多くリリースしてきた彼ららしいセットリストを締め括った。

アレンジを進化させた楽曲もあり、現在進行形の自分たちも見せていた今回のライヴ。Kjは言った“音楽にもみなさんにも、明るい未来がありますように”――自分たちも、この1、2年は激動だったのに、彼はそれを口にしなかった。何があっても、ステージに立ち続けてきた彼らが苦心してライヴを行なうこと、そのものが大きな象徴となったはずだ。《音楽は鳴り止まない/感情はやり場がない/日々を音楽が助け出す様に/君の感情が溢れ出す様に》(『A Hundred Emotions』)――このラインに想いを集約したい、素晴らしいライヴだった。

撮影: 石井麻木(MONOEYES)、スズキコウヘイ(SiM)、TAKAHIRO TAKINAMI(Dragon Ash)
取材:高橋美穂

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