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LIVE REPORT

ACIDMAN ライヴレポート

【ACIDMAN ライヴレポート】 『ACIDMAN LIVE TOUR “Λ(ラムダ)”』2018年7月13日 at 日本武道館

2018年07月13日
@日本武道館

結成20周年を迎えた年にリリースした11枚目のアルバム『Λ』を引っ提げ、北海道から沖縄まで全国を回ってきたライヴツアー『ACIDMAN LIVE TOUR “Λ(ラムダ)”』が7月13日、ついに日本武道館でツアーファイナルを迎えた。

ステージの上に吊り下げたビジョンとバックドロップに掲げたΛ型のビジョンを巧みに使い、無数の〈Λ〉が空から降ってくるという幻想的な光景を作り出したオープニングから2時間半。『Λ』の全12曲を中心に新旧の楽曲を織り交ぜた熱演が終わった時、我々が感じたのはACIDMANというバンドが持つあらゆる可能性だった。

“日本武道館へようこそ! 最高の夜にしましょう!”という大木伸夫(Vo&Gu)の呼びかけに満員の観客が拳と歓声をあげながら応え、ミラーボールが星空を浮かび上がらせた「FREE STRA」をはじめ、ダンサブルな曲の連打に一気に盛り上がった序盤。ジャズファンクな魅力も持つ「ユートピア」を挟んでから、2部構成の「彩 -SAI-」と大木がループマシーンを使ってピアノとギターのフレーズを重ねた「A-CDM」というインストナンバーをじっくりと聴かせ、大木、佐藤雅俊(Ba)、浦山一悟(Dr)3人のアンサンブルが絶妙に絡み合うテクニカルな一面をアピールした中盤。そして、渾身の演奏に客席が沸いた「光に成るまで」他、バンドの底力を見せつけるように白熱する演奏が観客を圧倒した終盤――刺激的なレーザーライティングとともに、それぞれのパートで盛り上がりを作った多彩な曲の数々は、バンドが繰り返してきた挑戦の歴史をグッとひと掴みで見せながら、改めてACIDMANの音楽的な自由度の高さも物語っていたようにも思う。

“難しいテーマを音楽にするって難しい。でも、このやり方が好きだし、このやり方しか知らないし、何よりもこのやり方だからこそ集まるみなさんが大好きです。6回も(武道館のステージに)立たせてもらっている。本当に奇跡のようです”

終盤、思わず感極まった大木は言葉を詰まらせながら、そう観客に語りかけた。しかし、生命や宇宙をテーマにした神秘主義とも言える歌詞や壮大かつ深遠な世界観を作るバンドサウンドを支持する人たちがこんなにたくさんいるということを、改めて日本武道館公演という目に見えるかたちにしたことは、ツアーの集大成としても21年目の新たなスタートとしても大きな意味があったはず。

“どんな人でも死だけは避けられない。その時、幸せだと思えるように生きていきましょう。しんどい時は僕たちが支えるから、僕たちがしんどい時は支えてください”と大木は21年目の新たな約束を観客と結びながら、本編最後を「愛を両手に」で締め括った。

『Λ』の世界観を完結させるという意味では、スモークを使ってまるで雲の上で演奏しているような幻想的な光景を作り出した、その「愛を両手に」で深い感動とともに終わっても良かったと思う。しかし、そこはやはりライヴハウスで戦ってきたロックバンド。ファンによる投票をもとにセットリストを決めるライヴツアー『ANTHOLOGY』の第二弾を来年開催することを発表すると、アンコールを求める声に応え、“思いっ切り盛り上がって!”(大木)と会場の使用限度時間を目いっぱい使って、「ある証明」と「Your Song」の2曲を披露。眩い光の中、全員のシンガロングを響き渡らせながら、大団円に相応しい熱狂を作り出したのだった。

撮影:AZUSA TAKADA、TAKAHIRO TAKINAMI、takufujii/取材:山口智男

ACIDMAN

埼玉県私立西武文理高校時代に出会い結成された3ピース・ロック・バンドACIDMAN。当時は4人組で結成され、受験休業を経て、大学進学後、下北沢を中心に97年ライヴ活動を開始。 99年のヴォーカル脱退、現在のメンバーである大木伸夫(vo&g)、佐藤雅俊(b)、浦山一悟(dr)の3ピース編成となる。

02年、「造花が笑う」「アレグロ」「赤橙」のシングル3枚連続リリースでメジャー・デビュー。同年10月には1stアルバム『創』を発表、スマッシュ・ヒットを飛ばす。パワーポップ/ガレージ/パンクのテイストを独自に昇華させたハイブリッドなロックンロールから、哀愁漂うメロディックなスロウ・ナンバーまで、いずれの楽曲にも美しい旋律が貫かれ、エモーショナルなヴォーカルも聴く者の魂を震わせる。
03年8月に発表した2ndアルバム『Loop』ではより深遠な音世界を構築し、04年9月には“あらゆる色の生命をイコールで繋ぐ”という、かつて無い壮大なテーマとその独創性が表現された3rdアルバム『equal』を発表。輪廻転生をコンセプトに作られた約14分にも及ぶ大作「彩‐SAI‐(前編)/廻る、巡る、その核へ」は、映像クリエイターである西郡勲がビデオ・クリップを手掛け、第8回文化庁メディア芸術祭では優秀賞を獲得した。
05年12月にリリースした4thアルバム『and world』を引っさげ、全国ライヴ・ツアー『and world』を敢行。06年7月、このツアー・ファイナルの模様を収録した自身初となるライヴDVDをリリース。音楽と映像のコラボレーションという新しい形でのライヴを行い、多くのロック・ファンを虜にした。そして07年2月に5thアルバム『green chord』を完成させ、5月にはACIDMAN史上初となる日本武道館にてオール・スタンディング形式のライヴを開催。ストイック過ぎるほどストイックで真摯なバンド姿勢ゆえ、一時は解散の危機にぶつかった彼らだが、08年4月に6thアルバム『LIFE』を、09年7月に7thアルバム『A beautiful greed』を発表するなど、現在は年1度のペースでアルバム・リリースを重ねている。

「音の力。詩の力。」「深淵・迷走・創造・騒々」——展開著しく、時に裏切り、時に平たん。静と動。スリーピースの可能性へ常に邁進している彼らは、成功を手中にしてもなお、ストイックなまでに己のバンド・サウンドの純度に磨きをかけ続けている。