私の中では「嫉妬」=「恋の始まり」だ。

 2017年5月24日に“HOWL BE QUIET”のフルアルバム『Mr.HOLIC』がリリースされました。そして、そのなかに収録されている「ラブフェチ」が今、動画投稿アプリ『TikTok』で若い世代を中心に支持を集めているんです。カップル自慢の動画から火が付き、その歌詞に共感したユーザーによる動画投稿が急増。同曲を使用しての振付動画も増加!

 Youtubeで公開したOffcial Audioも、公開から1ヶ月で50万回再生を突破、3年前にリリースした楽曲とは思えない勢いは今も加速度を増しております。さて、今日のうたコラムでは、そんなロングヒット曲を生み出した“HOWL BE QUIET”の竹縄航太による歌詞エッセイをお届け…!【前編】では、「ラブフェチ」の生い立ちについて明かしてくださいましたが、【後編】では、さらにこの楽曲の核となっている“嫉妬”についてのエピソードと想いを、たっぷり綴っていただきました…!

~歌詞エッセイ【後編】~

 「ラブフェチ」という曲を語る上で、根幹となる感情が「嫉妬」だ。

 と書き始めたが、YouTubeでギャルが「嫉妬する男ってキモい」と話していたので、ここまでとします。ご愛読ありがとうございました。

 いやいや、負けてられない。ギャルには弱いが、負けてられない。嫉妬なんて見せるか見せないの差で、大なり小なりみんな持ち合わせているものだろう。それがたまたま、自分は人より少し大きいかもしれないという話だ。そして、それを曲に十二分に表しただけである。

 さて、改めまして。私の中では「嫉妬」=「恋の始まり」だ。幼稚園、小学校、中学校、私を私たらしめていくその過程の、どの“好き”が“恋”と呼べる代物なのかどうか。気付けば思い出してしまうこと。教室の中、目で追ってしまうこと。脳裏に焼き付けて、その子との裸のロマンスを夢見ること。色々あるだろうが、私の中では、その子が他の男と話していると嫌だなあ、なんて思ってしまう心。すなわち嫉妬。それを恋と呼んでいる。どれが初恋だったかなんて思い出せないが、初めて他の男に嫉妬を覚えた時は思い出せる。

 小学1年。クラスで足が早くて、ひょうきん者で、誰からも愛されるようなやつがいた。いわゆる人気者。そいつとクラスの女の子が楽しそうに話しているのを見た時、如何しようもなく、形容しがたい感情に襲われた。スカートの中が気になり始める年頃なりに「そいつと話さないで」「俺も足速いよ」「やだな、やだな、やだな」と頭を駆け巡っていた。記念すべき嫉妬誕生の瞬間。好きに気付く瞬間。僕は人気者のことがなんか嫌いになっていた。惨めったらありゃしない。でも、正直そうなってしまうよね。少女漫画とかでよくある「お前に譲るぜ。幸せにしてやってくれよな」は、たぶん一生理解出来ない。ずーっと根に持つタイプです。
 
 まぁ、そもそも嫉妬なんて感情、何も恋愛に限った話ではない。自分より勉強が出来た塾のあいつとか、自分よりバスケが出来た部活のあいつとか、挙げればキリがない。ただ、恋愛における嫉妬は一味違うから厄介なのよね。だって、基準がその子なんだもの。勉強では点数や合格という答えがあったり、スポーツにはタイムや得点という答えがあるけど、恋愛は直感的でしかないからね。もはや無慈悲とも言える。
 
 男性的偏見だが、女心というものはいくつになっても難解を極める。中学で付き合った女子に「手とか繋ぐの恥ずかしいからそういうのやめよ」と言われ、めちゃめちゃ繋ぎたくて仕方なかったが、嫌われたくもなかったので渋々了承したら、次の日、学校の廊下で友達の面前、女子に囲まれ「言葉のあやってあるじゃん!?」と詰問された時から、ずっと難しい。今思えば、要はその子とノリが合わなかったのだろう。たとえ付き合ったとしても、そうなってしまうのだから、一生添い遂げることがどれだけ偉大なことか。

 だからこそ、たまーに考える。もし、世界に私とあの子しかいなかったら、ここまで燃え上がることもないんだろうなあと。嫉妬とか独占欲なんて言葉も生まれないんだろう。ただ平凡と決まったように一緒にいて、特に心が波打つこともなく、日々を過ごして。“好き”とかそういう感情すら欠落してしまうんでしょう。それはそれでどうなの?虚しくない?だからきっと良かったのだろう。結ばれるかもわからない、結ばれたとて、いつ奪われるかもわからない。そんな不安と恐怖と隣り合わせの上で良かったのだろう。そんなカオスな世界で恋をするから、醜くて、美しいんだろう。
 
 今日もどこかで頭を悩ませる人がいる。大丈夫、と勝手ながらに私は言いたい。
 今日もどこかで頭を悩ませる私がいる。大丈夫、と勝手ながらに私に言いたい。
 
 そんな自分肯定、ある種開き直りとも言う歌が、この「ラブフェチ」という曲です。だから、曲調は思いっきり明るくしてやった。しんみり歌ったら、悪いことしてるみたいでしょう。誰が何と言おうと、私だけは私を応援してやろう、そんな思いで書き上げた曲。その曲が巡り巡って、色んな人に聴いて、楽しんでもらえてることが夢みたいな話です。共感なのか、はたまた否か。それはわからないけど、どうせどこにも答えなんかないんだから。信じたいものだけ信じて、好きな恋路を明日も僕は歩もうと思う。

 だから、男への愚痴が止まらないYouTubeのギャルも、どうかお幸せに。

<HOWL BE QUIET・竹縄航太>

◆紹介曲「ラブフェチ
作詞:Kota Takenawa
作曲:Kota Takenawa

◆フルアルバム『Mr.HOLIC』
2017年5月24日発売
PCCA-04528 ¥2,800 +税

<収録曲>
1. ラブフェチ
2. MONSTER WORLD
3. ギブアンドテイク
4. にたものどうし
5. My name is...(ALBUM Ver.)
6. サネカズラ
7. PERFECT LOSER
8. Wake We Up
9. 矛盾のおれ様
10. Higher Climber
11. 208
12. ファーストレディー