「今なら」なんてもう届かない。

 2019年6月12日に“三浦大知”がニューシングル『片隅/Coner』をリリースしました。今作の表題曲はいずれも、モデルとしても活躍している“Koki,”が作曲を手がけたことでも話題に。さて、今日のうたコラムではその最新作から「片隅」をご紹介。先日、最終回を迎えたドラマ『白衣の戦士!』の挿入歌として起用されており、好評を博していた楽曲です。

いつも同じ場所で 同じ愛を
そっと ただ 渡してくれた

シャワーの音
耳を塞ぐ
日々の終わりは穏やかで
胸に残る
もどかしさも
床に流れたふりをする
「片隅」/三浦大知


 三浦大知のシングルとして約4年半ぶりのバラードであり、高いヴォーカルが際立つこの歌。歌詞から伝わってくるのは、大きな虚無感や後悔、喪失感です。なぜなら<いつも同じ場所で 同じ愛を そっと ただ 渡してくれた>大切なひとを失ってしまったから。そして、タイトルにもなっている「片隅」というワードも大きなポイントなのです。

 きっとかつての<僕>にとっての<君>は、いつでも当たり前に「片隅」にいた存在だったのでしょう。別に自分の人生の中心にいるわけでも、大幅を占めているわけでも、大それた愛情表現をしてくるわけでもない。ただ“定位置”で“変わらぬ愛”を静かに与えてくれるのが<君>でした。つまり日常の1ピースが<君>だったということでしょう。
 
 でもだからこそ、喪失は致命的なのです。代わりのきかない<君>という「片隅」の1ピースを失った<僕>の“日常=パズル”は、どうしたって未完成です。すると「片隅」の<同じ場所>に<同じ愛>が“ない”ことだけが、残ったものより際立ちます。なんとか<床に流れたふり>をしてみても、常に“ない”ことが頭の「片隅」にあります。それは今、そばにいるときよりずっと<君>が<僕>を占めているということなのです。

カーテンの音
耳に障る
日々の始まりは不安で
窓を超えて 差し込む陽が
心を照らすふりをする
「片隅」/三浦大知


 ゆえに<僕>は<シャワーの音>や<カーテンの音>といった、日常の“音”を拒んでいるのでしょう。今夜も<君>のいない<日々の終わり>は穏やかに流れてゆく。寝て起きたら、また<差し込む陽が 心を照らすふり>をして、不安な<日々の始まり>を告げる。<君>がいない日常が当たり前になってゆくのがツライ。本当に“聞きたい音”を耳にできないのが悲しい。そんな痛みを伴った感情が表れていますよね。

「今なら」
なんて もう
届かない

いつも同じ場所で 同じ愛を
そっと ただ 渡してくれた
広くて狭い部屋の片隅
光る記憶

いつも同じ場所で 同じ愛を
そっと ただ 渡してくれた
近くて遠い部屋の片隅
声を探してる

君を探してる
「片隅」/三浦大知

 そしてサビでは<いつも同じ場所で 同じ愛を そっと ただ 渡してくれた>というフレーズが、その記憶を何度も繰り返し再生するかのように、歌い上げられております。大きな虚無感や後悔、喪失感に埋もれながらも<光る記憶>を頼りに、今<僕>は生きているのでしょう。もう一度だけでも、心から“聞きたい音=君の声”に会いたくて…。
 
 みなさんにも<いつも同じ場所で 同じ愛を そっと ただ 渡して>くれているひとが近くにいませんか? そんな「片隅」の誰かを失ってしまいませんように。また、喪失に苦しんでいるあなたはいつか「片隅」の“愛された”記憶が、日々の支えに、お守りになる日が訪れますように。是非、三浦大知「片隅」を聴いてみてください…!

◆紹介曲「片隅
作詞:Daichi Miura
作曲:Koki,

◆『片隅 / Coner』
2019年6月12日発売
CD+DVD AVCD-16922/B ¥1,500(税抜)
CD+Blu-ray AVCD-16923/B ¥2,000(税抜)