実は夫婦の絆って子どもが思うより深いのかなって。

 2019年6月5日に“海蔵亮太”がニューシングル「愛のカタチ」をリリースしました。彼は、カラオケ世界大会(KWC)で2年連続世界チャンピオンに輝き、数々の地上波カラオケ番組でも賞を総なめにしてきたヴォーカリストです。今回のうたコラムでは、そんな海蔵亮太にインタビューを敢行!第1弾~第3弾に分けてお届けいたします。
 
 第1弾では、歌が好きになったきっかけやカラオケ世界大会についてのお話。第2弾では、ニューシングルタイトル曲「愛のカタチ」についてのお話。第3弾では、今作カップリングのオリジナルソングや今後の活動・目標についてのお話をお伺いいたしました。何より“楽しむこと・楽しんでもらうこと”を大切にする彼の言葉をご熟読ください!本日は第2弾!

桜舞い散る 春待たずして
もしもあなたが この世を去ったら
実り黄金の 秋待たずして
あたしは あなたを 追うのでしょう

夏の夕暮れ 裏通りへと
あなたが散歩に出かけたなら
あたしは庭の 錆びたベンチで
あなたの帰りを 待つのでしょう
「愛のカタチ」/海蔵亮太


― ニューシングルのタイトル曲「愛のカタチ」はもう何回も歌ってこられた曲だそうですが、初めて聴いたときにはどんな感想を抱きましたか?

正直、最初はよくわからなかったんです。この歌詞がどんな物語を伝えようとしているのか。「行方不明者を待っているのかな?」とも思いました。この歌は、カラオケの世界大会の日本代表に選ばれて、どの曲を歌おうか考えていたときに、教えてもらった曲なんですね。で、最初はあまり歌詞を読み込まずに、音の運びとかメロディーの美しさ的なものに魅力を感じていました。

だけど、実は“認知症を発症してからも、65年連れ添った夫の名前を生涯忘れなかったという妻の実話をもとに書かれた”という背景を知って、すごく素敵だなと思って。それと同時に「自分だったらこう歌いたいな」という気持ちがブワーッと沸いてきたんです。今までそんな感覚ってなかなかなくて。じゃあこれを世界大会はもちろんですけど、もし何かしら歌う機会があったときに、そこで披露できるくらいの、いわゆる“持ち歌”にしたいなと思ったんですよね。

― 歌詞は<桜舞い散る 春>、<実り黄金の秋>、<夏の夕暮れ>、<冬の夢>など“春夏秋冬”が美しく描かれており、日本ならではなのですが、そのニュアンスは海外の方々にも伝わるものなのでしょうか。

そうですねぇ…。やっぱりはっきりと歌詞の内容は伝わってないと思います。だけど、カナダの方とお話したときに「言葉はわからないけれど、日本語の音の響きがすごく美しいし、それをピアノだけで表現する曲が良い意味で新しい」ということを言ってくれて。向こうの国の方々って、わりとサウンドより歌詞を重要視するひとが多かったりするので「どんな歌詞なの? もっと知りたい」みたいなことを言ってもらえたりもしました。そうやって歌の芯が伝わっているような感覚はなかなか新鮮でしたね。

― また、この曲は“認知症”という実話がもとになっている歌詞ではありますが、それを知らなくてもいろんな立場で聴ける歌だなぁと感じました。個人的には<あたし>として、そんなふうに夫を愛し尽くせる人生だったらいいなぁと思ったのですが…。

そうですか…!?そうなんですね…!いやぁ…僕は正直こんなには…。だからこそ最初に歌詞を読んだとき、なんか不思議な感じもあって。夫婦といえど、結局は他人なので、ここまで想うのは逆にちょっと怖いなと思ったりしていたんです(笑)。だって<もしもあなたが この世を去ったら><あたしは あなたを 追うのでしょう>とか、結構すごいこと言ってないですか? 自分の母親を想像すると、絶対にそんなこと言わないだろうなと思いますもん。むしろ一緒の墓に入りたくないわ!ぐらいの…。

― たしかに、自分の親を想像すると…(笑)。

ですよね(笑)。でもおっしゃる通り、認知症というテーマは関係なく、ただただ誰かが誰かを想う歌としても捉えてもらえたらいいなというのは僕もすごく感じます。もちろん認知症の当事者の方や家族の方やヘルパーさんに聴いてほしい。だけどそれだけじゃなく、好きなひとと一生添い遂げることができたら、こういう関係でありたいと想像していただいても素敵ですし。親から子どもへ、もしくは子どもから親への想いを重ねていただいても嬉しいですし。いろんなベクトルがある歌なんだなぁと感じるようになりましたね。


愛なんて あたしには
愛なんて 似合わないけれど
一人で居る時にあなたを
思う事が愛ならば これは愛です

あなたが教えてくれた事
言葉には 何もないけれど
あなたが教えてくれた事
それは本当の「愛のカタチ」
「愛のカタチ」/海蔵亮太


― 亮太さんの歌声で、初めてこの歌を知ったという方も多かったのではないでしょうか。

それが…そうなんですよ。ここは否定しようかと思ったんですけど(笑)。一番最初に歌ったのは世界大会で。それからアマチュアの頃に、テレビのカラオケ番組に出て、その決勝まで残ることができて、最後にこの歌を歌ったんですよ。そうしたら放送後にすごく反響があって、いろんなひとから「こんな良い曲があるんだ!」と言ってもらえて。純粋に嬉しかったですね。

― どんな感想が多かったですか?

なんか僕が最初に「愛のカタチ」を聴いたときに抱いた感想と似たコメントをくださった方が多かった気がします。歌詞の内容は深くわからないけれど、とにかく良いというような。なんか、感動ってそういうところからスタートするんだなって。背景が解明されすぎちゃっても、音楽の捉え方が狭まってしまうので、逆にわからない状態で聴いたほうが良かったりもする。そこが音楽の楽しさであり、不思議なところですね。

― ご両親を見ていて“愛のカタチ”を感じる場面はありますか?

…いや(笑)。まぁ僕が小さい頃なんかは本当によく喧嘩をしていて、なんで離婚しないんだろう、なんでこのひとたちは結婚したんだろうとか思っていました。だけど結局、今もなんだかんだ上手くやっているし。もはや上下関係が逆転して、母親のほうが強いし。こう…表には見えないけれど、お互い心のなかで認め合っているというか、ちゃんと好きなんだろうなぁというのは感じますね。

― 不思議ですよね。とくに冠婚葬祭などのときって、ふと並んでいる姿を見て“あ、夫婦だなぁ”と感じたりしませんか?

あー、わかりますわかります!たとえば父親のほうの両親が亡くなったときは、やっぱり父は悲しんでいるから、母がそっとサポートしていたり。その逆もありましたし。そういうのを見ると、実は夫婦の絆って子どもが思うより深いのかなとか思います。まぁ自分は結婚してないのでそのへんはまだよくわからないですけど、そういう目に見えない“愛のカタチ”もあるんだろうなって。

― 亮太さんご自身は、どんな立場・気持ちでこの歌を歌っていますか?

僕は歌うときって結構、誰かひとりのことを思い浮かべながら歌うことが多いんですね。そして「愛のカタチ」の場合は、まさに認知症だったおじいちゃんのことです。だから<あなた>と<あたし>は僕とおじいちゃんの関係ですね。なんか…身近なひとが亡くなってしまうと、最初の1~2年は頻繁に思い出すけど、だんだんそれが少なくなって、やがて忘れちゃうじゃないですか。

でもこういう歌を歌うことによって、その都度、思い出せるんですよね。僕もおじいちゃんが亡くなって、きっとこれから何年も月日が過ぎてゆくなかで、忘れる時間が増えていくと思います。ただ、この歌があるおかげで故人を思い出せるんです。僕にとっては「愛のカタチ」は“リメンバーソング”みたいな意味合いもありますね。


【第1弾】はコチラ!
【第3弾へ続く!】

◆紹介曲「愛のカタチ
作詞:中村つよし
作曲:中村つよし

◆ニューシングル「愛のカタチ」
2019年6月5日発売
プレミアム盤 CRCP-10430 ¥1,852+税
スペシャル盤 CRCP-10431 ¥1,111+税

<プレミアム盤 収録曲>
1. 愛のカタチ
2. Just a friend
3. コーヒーカップ
4. 愛のカタチ
(Original Karaoke)

<スペシャル盤 収録曲>
1. 愛のカタチ
2. イッショケンメイ
3. Stripes
4. 愛のカタチ(Original Karaoke)