少しだけまだ自分を信じたくなったんだ。

 2018年10月21日で10年目に突入する“吉田山田”が、10月31日に6枚目のアルバム『欲望』をリリースします。そして、アルバム収録曲から、専修大学CMソングの「虹の砂」と『タキロンシーアイ 2018』CMソングとして『東京パンパシフィック水泳2018』大会中にたくさんTVオンエアされていた「もし」の先行配信が決定。8月11日よりdヒッツにて独占先行配信中です。

ただガムシャラな瞳で ひた走る君を見たら
少しだけまだ自分を信じたくなったんだ

ただ目の前のことさえ見えずに
まだ失望に足がすくんでる自分がいる
「もし」/吉田山田

 さて、今日のうたコラムでは新曲「もし」をご紹介。歌の冒頭で印象的なのは、フレーズ内にそれぞれ2度ずつ登場する<ただ>と<まだ>です。目標だけを見つめ、ひたむきに<ガムシャラな瞳で ひた走る>のが<君>。ほんのわずかな<目の前のことさえ見えずに>いるのが自分。同じ<ただ>という言葉を使っているのに、その二文字に含まれている意味は異なり、<君>と<自分>が対照的であることが伝わってきますね。

 しかし、臆病な主人公は<ただガムシャラな瞳で ひた走る君を見た>ことによって、胸の内に二種類の<まだ>が生まれております。一つはこれまでと同じように<失望に足がすくんで>同じ場所から動けずにいる、ネガティブな<まだ>です。もう一つは、諦めそうだった“自分を少しだけ信じ続けたい”と思えた、ポジティブな<まだ>です。こうして両極な<まだ>の狭間で揺られながらも、歌の中で心は動き出してゆくのです。

「もし」
辿り着いた場所が描いてた未来とは少し違っても
昨日より鮮やかに塗り替えてゆくんだ
「もし」
すぐには届かないあの空に浮かぶ雲みたいなものでも
いつかきっといつかきっと掴んでみせるんだ
何度でも
「もし」/吉田山田

 こちらは1番のサビ。「もし」という言葉は「もし、あの日ちょっと違っていたら」とか「もし、あのとき自分がこうしてれば」とか、今さら考えてもキリがない“たられば”と結びついて、選べなかった“過去”にベクトルが向いてしまいがちですよね。でも、この歌に綴られている「もし」の性質はそうではありません。まず、この歌の「もし」は“未来”にベクトルが向いているんです。
 
 さらに「もし」のあとに続くのは<辿り着いた場所が描いてた未来とは少し違っても>、<すぐには届かないあの空に浮かぶ雲みたいなものでも>などの【たとえそれでも】という“覚悟”です。そして<昨日より鮮やかに塗り替えてゆくんだ>、<いつかきっといつかきっと掴んでみせるんだ>という“意志”に繋がっています。主人公は少しずつ今日を変えて<まだ失望に足がすくんでる自分>をなんとか越えようとしているのでしょう。

「もし」
辿り着いた場所で同じ喜びを分かち合える誰かと
出逢えたら全てきっと報われるんだ
「もし」
不甲斐ない自分も誤魔化さず投げ出さず受け止められたら
それがきっと描く未来の始まりなんだ
何度でも
「もし」/吉田山田

 2番のサビでは、いっそう前向きなパワーを強めてゆく「もし」という言葉。1番では「もし」のあとに【たとえそれでも】という“覚悟”が綴られておりましたが、今度は<辿り着いた場所で同じ喜びを分かち合える誰かと 出逢えたら>、<不甲斐ない自分も誤魔化さず投げ出さず受け止められたら>と希望的な“たられば”に結びついていますね。だからこそ<きっと報われる>とも信じられる。同時に、歌冒頭の<少しだけまだ自分を信じたくなった>ポジティブな<まだ>もパワーアップしているのだと思います。

「今」
果てしなく感じたはるか遠くの空に浮かんだ未来に
少しだけ指先が触れた気がしたんだ

「もし」
ガムシャラな背中がいつか誰かの背中を押せたら
ひた走り続けた答えになるんだ
「もし」/吉田山田

 こうして幕を閉じてゆく歌。「もし」は「今」に変わり、最後の最後では「もし」のあとの<きっと>という言葉も消え<ひた走り続けた答えになるんだ>と言い切っているんです。これはもう、予感ではなく、確信。最初の<まだ失望に足がすくんでる自分>から、大きく一歩前に進むことができた主人公の姿がはっきりとわかりますね。聴けば不思議と気持ちが強くなってゆく、吉田山田の新曲「もし」を是非、あなたもじっくりご堪能ください…!

◆紹介曲「もし」
作詞:吉田結威
作曲:吉田結威

◆6th ALBUM『欲望』
2018年10月31日発売
スーパーデラックス盤 SCCA-00067 ¥11,111(税抜)
デラックス盤 PCCA-04707 ¥3,500(税抜)
ボーナストラック盤 PCCA-04706 ¥2,500(税抜)