哀しみは我慢できる、ただ孤独は嫌なの、愛されたい。

どんなに頑張っても
肝心なときに、過去の自分が邪魔しに来よる。
あんたも恋愛するなら相手をちゃんと選ばなアカンで。
(火曜ドラマ『きみが心に棲みついた』より)


 みなさんも、昔の酷い恋愛が原因で、今を「過去の自分が邪魔しに来よる」ことってありませんか? このドラマのヒロイン(吉岡里帆)も然り。かつて大好きだった彼(向井理)は、生まれて初めてありのままの<私>を受け入れてくれた人。だけど同時に、一生忘れられないほど<私>を傷つけた人。そして彼女は別れた後も尚、どんなに仕事で頑張りたくても、新しい恋をしたくても、肝心なときに、彼の存在や「過去の自分」から逃げられなくなってしまったのです。

 きっとこうした苦い恋愛を経験した人は誰しも、時が経てば「どうしてあんな人を好きになってしまったんだろう」と思うはず。ただ、恋をしていた当時の心は盲目状態です。たとえ「相手をちゃんと選ばなアカン」と頭でわかっていても、ちょっとしたきっかけで<禁断の花園>へと足を踏み入れてしまうんですよね…。さて、今日のうたコラムではそんなドラマ『きみが心に棲みついた』の世界観が、描き抜かれている主題歌をご紹介いたします。

このキスに二滴(ふたつ) 雫を垂らせば
またキズになるわ それでも好きです
「バカだね」って他人は 呆れて言うけど
月より妖しい あなたが好きです
「Pain, pain」/E-girls

 主題歌は、2018年2月28日に“E-girls”がリリースしたニューシングルの表題曲「Pain, pain」です。尚、作詞は“小竹正人”さんが手がけております。この歌の<私>はまさに、危険な恋の真っ只中であり、愛する<あなた>とは【Pain(痛み)】を伴う歪な関係…。だからこそ、本来なら幸せなものである<キス>さえも、混じわってはならない<私>と<あなた>という<二滴>によって<キズ>に変わってしまうのです。

 また、増えてゆくキズ跡による<私>の変化は、周りの人々も気づくもの。心配してくれる人も<「バカだね」って>呆れる人もいるでしょう。しかし、家族や友達の声すら、今の<私>にとっては部外者の<他人>の言葉にしか感じられません。むしろ、否定されればされるほど<私>にしかわからない<月より妖しい あなた>の魅力は特別なものに感じられ、二人だけしか知らない“傷の理由”や“痛み”への愛おしさは増してゆくのではないでしょうか。

優しさと痛み おんなじ心(ところ)で
感じながらみんな生きてるでしょ?
哀しみは我慢できる ただ孤独は嫌なの 愛されたい
「Pain, pain」/E-girls

 一方で、本当は<私>だって、この恋の異常さや、危うい依存に対する自覚はあるのだと思います。不安も恐怖も虚しさも。でも、それでも“今”を正当化せずにはいられない。ゆえに“みんなそうでしょ?”と同意を求めたくなるのです。こんな関係でも<哀しみは我慢できる>し、孤独よりはずっとマシで、ただただ<愛されたい>だけなのだと叫びたくなるのです。おそらくドラマ『きみが心に棲みついた』のヒロインもかつて同様に、歪な恋愛に溺れていったのだと考えられますね…。

傷ついてもいい
その傷にあなたの唇が触れるのならば (ならば)
蝶が舞うように 笑顔が飛び交う
そんな場所探していないわ

禁断の花園で 咲いてしまった私
実りはしない 恋だって構わない
行方を阻むのが棘でも 唱えるわ「Pain pain, don't go away」
そう 平気なの「Pain pain, don't go away」
「Pain, pain」/E-girls

 そして<愛されたい>は“居場所がほしい”とも言い換えられる想い。<キス>と<キズ>を繰り返すしかない<禁断の花園>であっても、そこは今の<私>にとってかけがえのない居場所なのです。とはいえ<咲いてしまった>という表現からは、それが100%の望みではないことも伝わってきます。その花園にいつか<蝶が舞うように 笑顔が飛び交う>ことを夢見ないと言ったら、嘘になるのではないでしょうか。逆に、夢見ずにいられないからこその【Pain(痛み)】でしょう…。
 
 そんなどうしようもない恋愛から抜け出せない自分に言い聞かせる言葉が「Pain pain, don't go away」です。日本語で「痛いの痛いの 飛んでけ」というおまじない。ただし、言霊の効き方によっては<私>が痛みを感じる正気さえ失ってしまいそうで、逆に切なく危ういですよね…。今、「Pain, pain」=「痛い、痛い」と泣いている<私>や、そんな恋をしている全ての方が、どうか「Pain pain, don't go away」なんておまじないが必要ない場所で、笑顔を咲かせることができますように…!

◆紹介曲「Pain, pain
作詞:小竹正人
作曲:宮田“レフティ”リョウ

◆ニューシングル『Pain, pain』
2018年2月28日発売
[CD+DVD+写真集] RZCD-86524/B ¥3240(税込)
[CD+DVD] RZCD-86525/B ¥1944(税込)
[CD] RZCD-86526 ¥1296(税込)