立ち上がれ 、誰もそばにいなくたって。

 2018年3月21日に“NakamuraEmi”がニューアルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5』をリリースします。そして今作のリード曲である「かかってこいよ」のMVがついに解禁。併せて歌詞先行公開もスタートです!今日のうたコラムでは、さっそくその新曲をご紹介!相手を挑発し、臨戦態勢に入るような「かかってこいよ」というタイトル。では、主人公にとって、私たちにとって、「かかってこいよ」と声を飛ばすべき<敵>とは…?

立ち上がれ  誰もそばにいなくたって
「かかってこいよ」/NakamuraEmi

 まず冒頭から、彼女の凛と強い歌声が響きます。わりと応援歌には『誰かが必ず見ていてくれるから』や『僕が君の味方だから』といった“誰か”が綴られていることが多く、その存在が<立ち上がれ>のメッセージを支えているイメージが強いですよね。しかし「かかってこいよ」は逆に<誰もそばにいなくたって>というフレーズがあることがポイント。何故ならこの歌はとことん“自分”と向き合うための楽曲だから。だからこそ続く歌詞では、どう自分と向き合うかべきかを考えるために“現代”を見つめてゆきます。

殺気に満ちた勝手な言葉
会ったことなくても投げられる時代
「お前のかーちゃんデーベソ」
くらい無責任な言葉だらけ
目を合わせて争う厄介な痛み
相手を傷つけた嫌な余韻
そんなのも知らず戦争も知らず
電波に乗っけて傷つけるだけ

Wah Wah お互いに
Wah Wah 『痛い』ってこと  
Wah Wah ちゃんと知ってる大人はどこにいる
「かかってこいよ」/NakamuraEmi

 見えてくるのは、匿名でも文字だけでもコミニュケーションを取れるようになった、顔の見えないやりとりが当たり前になった、現代の姿です。SNSがあれば<会ったことなくても>友達になれるし、恋もできるし、居場所も出来る。その手軽さのプラス面もたくさんあるでしょう。ただ一方で<殺気に満ちた勝手な言葉>が簡単に見知らぬ他者に投げつけられるのも事実。良くも悪くも、言葉は武器になります。そう考えると<会ったことなくても>殺人を犯してしまっていることさえあり得るのです。

 自分が<目を合わせて争う厄介な痛み>や<傷つけた嫌な余韻>を知らなくて済むということは、相手が<電波に乗っけて傷つけ>られてどんな状態であるのかもわからないということ。もしかしたら<殺気に満ちた勝手な言葉>で、その人が追い詰められて死を選んでしまう可能性だってあるんですよね。しかも、一人の対象を大勢で責めたてるなんてことも多々。【人の噂も七十五日】などと言いますが、大人数に“文字”という目に見える形で刺され続けたら、七十五日も平気でいられるでしょうか。少なくとも心は死んでしまうと思います。というより、自ら心を殺さないと耐えられないのではないでしょうか。

パワハラ モラハラ マタハラ
種類だけどんどん増えちまって
人の心おっかない部分 世代の違い 考えの違い
大事なのは上司も部下も 先生も生徒も 家族も恋人も
目に見えない小さな小さな積み重ねの『信頼』という宝物

Wah Wah お互いに
Wah Wah 『痛い』ってこと
Wah Wah ちゃんとわかり合える時代をとりもどすには
「かかってこいよ」/NakamuraEmi

 さらに目を向けられるのは、たとえ顔と顔を合わせていたって<殺気に満ちた勝手な言葉>が投げつけられる現代の姿です。学校でも職場でも家庭でも<お互いに 『痛い』ってこと ちゃんと>知らない誰かがいれば<パワハラ モラハラ マタハラ>などの問題は生じてしまいます。こうして相手の心の傷を想像できない人が増えてゆく世の中…。しかしこの歌は決して、現代を嘆き、批判するためだけの楽曲ではありません。現実をしっかり受け止めた上で<ちゃんとわかり合える時代をとりもどす>ために“NakamuraEmi”はメッセージを放つのです。

かかってこいよ 敵はそいつじゃない
かかってこいよ 敵は自分の弱さ
かかってこいよ 敵は全部自分
かかってこいよ でも誰かにいてほしい
立ち上がるんだ 敵はそいつじゃない
立ち上がるんだ 傷が痛いけど
立ち上がるんだ 本当はおっかないけど
もう少しなんだ 守るものができそうなんだ

汚い空気も吸ったから 人より鼻がよく利くんだ
人間らしい匂いのとこは 決まって花が咲いてるんだ

かかってこいよ
「かかってこいよ」/NakamuraEmi

 「かかってこいよ」と声を飛ばすべき相手は、他の誰でもない自分自身。いつだって<敵>は<全部自分>です。時には、毅然とした心に<でも誰かにいてほしい>や<本当はおっかない>という弱音や本音が揺れることもあるでしょう。だけどそんなとき、強くなるための魔法の言葉、おまもりになる言葉が「かかってこいよ」なのではないでしょうか。<誰もそばにいなくたって>自分に向けて口にする「かかってこいよ」が<立ち上がる>ためのエネルギーになるのです。

 今、誰かからの<殺気に満ちた勝手な言葉>で傷ついているという方。現代を生きて、そのなかで<汚い空気も吸ったから>こそ、あなたもきっと<人より鼻がよく利く>はず。そして同時に“人間臭さ”の温もりや愛おしさもちゃんと知っているはず。NakamuraEmi「かかってこいよ」を聴いた私たちが、誰にも何にも流されず自分で自分を作り、少しずつ<ちゃんとわかり合える時代を>取り戻せますように…!