いつだって目を凝らして、その奥にある心に気づいていたい。

 2021年3月2日に“wacci”が最新の恋愛ソング「まばたき」と「劇」を2曲同時配信リリースしました。寂しさや悲しみを吐き出せないなか“一人じゃない”と寄り添ってくれる、あったかい楽曲「まばたき」と、叶わない恋愛を“演劇”に例えて歌った極上のバラードソング「劇」という、対照的なテーマを描いた楽曲となっております。

 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“wacci”の橋口洋平(Vo.)による歌詞エッセイを2日連続でお届け!今回はその【後編】です。綴っていただいたのは、新曲「まばたき」のお話。コロナウイルスが蔓延し、世界が変わった今だからこそ、人と人との物理的な距離が遠ざかっている今だからこそ、大切なひとを想いながら聴いてほしい1曲。是非、エッセイと併せて受け取ってください。

~歌詞エッセイ後編:「まばたき」~

自分のことを
「わかってもらっている」という感覚は
とても大事だと思う。

僕らはきっとずっと孤独で、
誰かと一つになどなれない。
心を見せ合うこともできないし、
人生を交換することもできない。
苦しみも、悲しみも、最終的には全て
自分一人で向き合って、抱えて生きていく。

だからこそ、言葉にしていないのに気づいてもらえた時
得体のしれない不安を誰かに整理してもらえた時
そんな奇跡のような出来事に、とても安心するし
何より、人はみんな孤独だということを
誰かと分かち合えること自体が
また明日からも一人を頑張って生きようと思える
原動力になると思う。


wacciとしてリリースした今回の新曲「まばたき」は
まさにそんな「わかってあげたい」
「わかっていたい」という気持ちを
約5分間とにかく垂れ流しにした歌だ。

長くそばにいるとお互いの色んな事を知っていく。
素直なところ、
素直になれないところ、
強がりや我慢のタイミング、
怒りや笑いの沸点、一度拗ねた時の持続期間などなど
だんだんその人のスペシャリストになっていくものだ。

そんな自分だからこそ気づける相手の心がきっとある。
そう信じて、寄り添い、未来を見つめる主人公。


実際やっぱりわからないことだらけだと思う。
前述したとおり、人はみな一人だし、孤独だ。

でも、それでも
「わかりたい」というその想いは伝わるものだと思うし
「好きだ」とか「愛してる」だとかいった言葉と
同じように人と人を繋ぎ、満たし、
結びつきを強くするものなのではないか。


“僕は君を見逃さないよ どんな涙も逃さないよ”

いつだって他人に心配かけまいとして笑顔で振る舞い、
大丈夫だと思わせることが上手な
その人の、強がりの向こう側。

無理矢理にではなく、
その表向きな笑顔をしっかり受け止めながら
でもいつだって目を凝らして、
その奥にある心に気づいていたい。
そんな意識で日々を共に生きることそのものが、
寄り添うということだと信じて。

コロナウイルスが蔓延して
世界中が大変なことになっている今
きっと一人一人がそれぞれに
色んなものを抱えて、吐き出せず生きている。

ただ昼寝して起きるだけの
歌の中の時系列的にも極端に短く、
限定的なシチュエーションの一曲だが、
普通の日常が奇跡だと改めて感じる今、
この歌を通して、
身近にいる人の存在の大きさに気づけたり、
はたまたこの歌自体が、誰かの心の影に
そっと寄り添う一曲となることを願っている。

<wacci・橋口洋平>

◆紹介曲「まばたき
作詞:橋口洋平
作曲:橋口洋平

◆「まばたき」Music Video
https://youtu.be/porcdyuEH0E