横浜アリーナへ向かう道中、ファン同士の会話が耳に入ってきた。“やっぱり歌詞がいいよね”と。1 曲目「愛し」が始まるや否や、そのことをふと思い出す。キメもタメもクセもあるアンサンブルの上で、待ちに待った開演に興奮状態の観客ひとりひとりへ気持ちを返すように歌う野田洋次郎(Vo&Gu)。紡がれる言葉の数々は体内を巡り、心の奥にある何かを浄化していくような感覚を覚えた。そして、“はっちゃけるぞ!”と「ギミギミック」へ。さっきまでのウエットな空気を一掃する屈強なバンドサウンドに会場の床が大きく波打ち、そんな盛り上がりに野田も“すげな”“やべな”を繰り返し、“やり尽くすので最後までお願いします”とひと言。その言葉に会場のボルテージが高まったことは言うまでもない。披露される新旧さまざまな楽曲に観客は歓声と笑顔でもって応えていた。また、打ち込みのビートの上でアップライトベース&アコギ&ピアノが絡むアシッドフォーク的な「シザースタンド」、桑原 彰のスリリングなギターと武田祐介のベースのスラッピングがバトルし、さらに山口智史のタイトなドラムも加わるというセッション的なブリッジに白熱した「遠恋」や「おしゃかしゃま」、センターステージで4 人&サンプラーというミニマムな演奏を聴かせたアンコール...などライヴだからこその聴かせどころ&観せ場も多く、この1 年8 カ月振りのワンマン公演を楽しみにしていたのはメンバーも同じなんだと痛感。「最大公約数」の大合唱で横浜アリーナの壁を震わせて大団円を迎えたライヴ。帰りの道中、この場に居た者はそれぞれの余韻に浸っていたことだろう。個人的には「ブリキ」や「螢」のナイーブな歌詞が胸に突き刺さったままだった。