「トレモロ」のイントロと同時に、幕張メッセの天井にレーザー照明で彩られた星空が浮かび上がった時、隣にいた子が思わず“もう泣きそう”と声を上げたのが印象的だった。そんな何とも感動的な光景でスタートした本公演。光の演出は「透明人間18号」や「俺色スカイ」等、随所で見られたが、コンサートの本質はそこではなく、メンバー3人+サポートドラマーふたりが奏でるバンドの音であったこと。そして、この日、集まった3万超のオーディエンスがそのバンドの音を希求していることが何よりも頼もしかった。まるで楽器バトルのように桑原彰(Gu)と武田祐介(Ba)のソロパートが掛け合いを続けた「遠恋」、派手さこそないがジャジーなグルーブで聴かせる「π」、また、野田洋次郎(Vo&Gu)主演映画『トイレのピエタ』の主題歌で、“ライヴで歌うのは初めての大事な曲”と演奏された「ピクニック」がその代表格であっただろう。とりわけ「ピクニック」はバンドアレンジ自体が初披露だったこともあって、個々の音が丁寧に構築されていく様子、その音の粒のひとつひとつを聴き逃さんとする観客の緊張感すら伝わってくるような空気があった。後半、「おしゃかしゃま」から「いいんですか?」と続いて、「君と羊と青」「会心の一撃」での盛り上げ方はもはや定番と言って差し支えなく、こうしたライヴのかたちがあるという自体が、RADWIMPSの10年間の軌跡を雄弁に語っていたとも言える。さらなる10年が確実に見えた10周年の節目のライヴであった。