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LIVE REPORT

reGretGirl ライヴレポート

【reGretGirl ライヴレポート】 『reGretGirl presents winter oneman tour 2023 “tear”』2023年3月27日 at at EX THEATER ROPPONGI

2023年03月27日
@EX THEATER ROPPONGI

reGretGirlが3月27日、全国15カ所に渡る『reGretGirl presents winter oneman tour 2023“tear”』を東京・EX THEATER ROPPONGIで完走した。バンドがグッとステージアップする後々振り返っても節目になるライヴだった。

その伏線は昨年の2マンツアーやthe shes gone、This is LASTとの対バンツアーや年末のフェス出演などで新たなファンを獲得したこと、ようやく発声OKになったライヴでバンドとファン双方のコミュニケーションに実感できる熱量が戻ったことも起因しているだろう。だが、何より大きな原因は彼らのメジャー2ndフルアルバム『tear』に対する自信と、新曲を届けたいという気持ちなのだと思う。もはや“失恋以外も歌うエモーショナルなギターロックバンド”という説明もいらないぐらい、人生全方位を歌うタフなロックバンドになっていたからだ。

スクリーンにツアーの様子が映し出され、否応なしにこのファイナルへの期待値が上がり、ニューアルバム『tear』のアートワークに取って変わると、サポートを含む5人が登場。スターターは新作同様「ギブとテイク」。平部雅洋(Vo&Gu)のドライヴするセミアコのファットなリフが気持ち良い。オルガンのサウンドもまさにロックンロール。この時点でライヴバンドとしてのビルドアップを実感した。恋愛の駆け引きあるあるな「best answer」「ルート26」「soak」と畳みかける中、平部は“知ってた? 今回のツアーから声出せるって”と、「soak」のBメロを歌うように促す。十九川宗裕(Ba)の高音弦が作るメロディアスなラインもより明快になった印象だ。満員のフロアーを見渡して“ふたりとかひとりで来てる人もいると思うけど、ひとりの人もひとりじゃなくするんで! 僕らみんなひとりじゃない”と、アルバムのテーマにも通じるオピニオンを発した平部。ライヴMCのテンプレじゃなく、心から自然に出ている感じがいい。痛みだけがふたりの記憶と言わんばかりの「ピアス」、ふたりの写真をまだ消せないと歌う「Shunari」もアツいリアクションが起こり、終わった恋の歌に宿るヒリヒリした感覚が今やreGretGirlの普遍的な曲になっているのも感慨深い。16ビートに乗るカッティングギター、タイトになったリズムでブラッシュアップされた「グッドバイ」がノリを変化させる機動力を発揮しているのも頼もしかった。音楽的なレンジという意味では叙情的なギターロックの「車の中から」も、今のreGretGirlに欠かせない一曲だ。

サポートメンバーがいったん下がり、3ピースのセクションはギターリフの旨味たっぷりな「ハングオーバー」、さらにドライヴする「インスタント」。どちらも女性目線がリアルな内容だが、それがオルタナギターロックとしてスカッと聴けてしまうことに瞠目した。立場が反転するように“君の可愛いは全て見ている”とばかりにエピソードを並べる「KAWAII」につなげたのも粋だ。

MCでは前田将司(Dr)の声を聞いたら、次のライヴまで幸運が続くとか、失笑気味かつ町内会ノリなトークを展開するのに、曲振りとなると途端にシリアスになる平部も違和感がない。むしろ演奏で瞬時にスイッチが切り替わることも通常運転に見える。

中盤に入りアイテムがメタ的に使われる「シャンプー」や「テレフォン」が持っている生活感と分かちがたい切なさも、歌が明快に聴こえるアンサンブルでより肉薄してくるようになった。その上、セットリストが新旧に渡ることでグッと奥行きを増していた。また、前作『カーテンコール』以降、色濃くなったUKロック色は堂々としたバラード「ダレヨリ」のアンサンブルで見事に表現されていた。音源以上に半覚醒したような気分に誘う「サンシャワー」ではミラーボールに反射する光とピアノリフがリンクし、この歌の主人公の女性が見た光=希望の欠片のように感じてしまった。スローやミディアムのバラードがしっかり地に足を着けた響きであることは続く「スプリング」でも証明。前田の抑えめのドラムサウンドも演奏を引き締める。バラードは「winter」まで続き、ふたりのどちらかに気持ちの齟齬が生まれる感覚がビビッドだったからだろうか、静かに聴き入る以上の没入感が生まれていた。

ここまで17曲、あっと言う間だった。近いニュアンスの曲をブロックごとに分けつつ、その世界観に入り込める演奏の強さを見せたことによるのだろう。終盤は“泣きたい時に泣ける歌”と平部が曲振りをした「サムデイルーザー」、アクティブにステージを動く痛快な8ビートナンバー「ルックバック」と、どちらもフロアーから熱量がステージに送られて、限界突破するように平部の声が出ている感じだ。本当にタフなバンドになったと思う。そんな感慨をもう一段高めてくれるように、本編ラストは平部曰く“一番大切な曲になってしまった”という「tear」。人生レベルの喪失だという、ある友人の死を契機に書かれたこの歌は歌詞そのままの意味である“ひとりだと思わないための歌”だ。ただここにいる、絶対にいるからーーそれがバンドがファンに交わす約束になって響く。アルバムタイトルでもあるけれど、それ以上にreGretGirlというバンドを表現する言葉が“tear”なのだと実感させられた。

過去最高に身の詰まった本編を終了したあとはアンコールらしいアンコールが待っていた。すでにアナウンスされているように、驚安の殿堂『ドン・キホーテ』とのコラボとして、店内に流れるお馴染みのあの曲「Miracle Shopping」をキャラクターである“ドンペン”とともに披露。ドンペンの存在感に気圧されている印象もなきにしもあらずだったが、笑える要素もしっかり盛り込み、「ホワイトアウト」のサビでは《どうにかなってしまいそうで〜》をシンガロングするファンの歓喜が爆発。さらにreGretGirl史上最速BPMの激しい2ビートナンバー「remind」で、約2時間のツアーファイナルは終了。繰り返しになるが本当にタフなバンドになった。そういえばよく泣く人はメンタルが強いらしい。平部もファンもきっとそうなのだと思う。

撮影:宇都宮/取材:石角友香

reGretGirl

リグレットガール:大阪を中心に活動中。切なく女々しい歌詞とキャッチーなメロディーが特徴の次世代センチメンタル3ピースギターロックバンド。2017年12月にリリースした全国デビューミニアルバム『my』の収録曲「ホワイトアウト」がアプリ“TikTok”で多数使用されるなど、若者を中心に爆発的に浸透している。21年に1stフルアルバム『カーテンコール』でメジャーデビューを果たし、23年2月に2ndフルアルバム『tear』を発表。バンド名は、平部が当時の彼女に振られた際に“いつか有名になってフッたことを後悔させてやる”と思ったことが由来。