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LIVE REPORT

reGretGirl ライヴレポート

【reGretGirl ライヴレポート】 『reGretGirl spring tour 2021 "curtain call"』 2021年3月26日 at 渋谷TSUTAYA O-EAST

2021年03月26日
@渋谷TSUTAYA O-EAST

reGretGirlメジャーデビュー作であり、初のフルアルバムでもある『カーテンコール』を携えた東名阪ツアー『reGretGirl spring tour 2021 "curtain call"』のファイナルを渋谷TSUTAYA O-EASTで開催した。これまでリアルな失恋ソングで10〜20代の共感を集めてきた彼ら。平部雅洋(Vo&Gu)のシンガーソングライター的な資質が前面に出た、バンドとしては珍しい存在と言えるが、その実、制作スタイルも音像もバンドでしかあり得ないスタイルを持つ。新作『カーテンコール』では、ともに生きるからこそ発生する考え方の違いや諦めの悪い気持ちなど、人としての成長(や加齢)が、やはり有り体に表現されている。必然的に音楽のレンジも広がり、チャレンジも増えた本作をシンプルなバンドスタイルでどう表現するのか? 自ずと焦点はそこに絞られた。

冒頭、ニューアルバムの曲順通りに「ルート26」からスタート。ギターロックであることに変わりはないが、一瞬にしてアンサンブルがグッとタフになったことに驚いた。それはドライブ感は続く「インスタント」でも明らか。1曲目で男性、2曲目で女性双方からの本音を隠しつつ、確かな関係になりたいと願う歌が対照的に披露されるのが彼ららしい。フロントの平部も十九川宗裕(Ba)も序盤からステージ前方へ歩み出て、ペース配分を無視したようなフルスイング。前田将司(Dr)の安定したドラミングが頼もしく映った。

新曲をコンスタントに披露していく中でもアンサンブルの新鮮さを感じたのが「AJAX」。2番のバースでのミクスチャー感のあるアレンジの重心の低さや、平部の古今のロック名言や歌詞を想起させるトーキングヴォーカルのパートも耳を引かれる。大袈裟なほどの愛の濃さを歌いながら、遊び心のある新曲群の中で、馴染みのインディーズ時代の曲が挟まれると、その痛々しいほどの青さが際立つことも発見で、別れてしまった事実を受け入れがたい主人公が、彼女同じようにピアスを開ける痛みで、かろうじてつながっている気持ちを保とうとする、その名も“ピアス”は今もヒリヒリする感覚をもたらし、ファンにとっても大切な曲であることがリアクションのアツさに見た想いだ。

中盤以降は鍵盤とギターのサポートメンバーが加わり、その意味が際立つ16ビートの小気味いい「グッドバイ」をプレイ。十九川がスラップを披露するなど、明らかに今までにないアレンジも。いわゆるオシャレな曲調で歌われるのが、幸せじゃないわけではないのに終わりの気配を感じる女性の一人称の歌詞で、固有名詞に生活感が漂うのが平部らしい。徐にステージ中央にエレピが運ばれ、アルバムのあの曲を披露するのだなという気配が漂う中、“コロナで引きこもっていたおかげでピアノが弾けるようになりました”と平部。彼の弾き語りから始まる「約束」。この曲ではThe Beatlesのオーセンティックな曲を想起させるドラムやピアノアレンジが聴けたのだが、どことなくUKロックの雰囲気を感知。そこで歌われるのは特定の時代や情景を伴ったものではなく、名残惜しさはありながらも、別れる他ない状態の少し大人の恋の終わり。自己憐憫に耽る恋から何歩も進んでいることで、切なさの質が変化していることに気づく。切なさの変化がアレンジを呼んでいるとも言えるだろう。

90年代UKロックばりのグルーブ、平たく言えばOasisを想起させるメロディーラインやコード感を持つ「Longdays」では間奏もしっかりアンサンブルの厚みを堪能させ、5人編成のダイナミズムが内側からどんどん増していく凄みすら見せた。新作のタイトルチューンも堂々たるミディアムチューン。まだまだこのサポートメンバーを加えた可能性の伸び代を予感させて本編17曲が終了。

さらにアンコールでの3曲を含め、全身全霊の20曲を完遂。人を好きになることで自分の内面が掻き乱されたり、転じて強くなることを正直すぎるほど正直な言葉で刻んでいく平部の姿勢はここにきて、より腹が据わってきた印象。とかくベタになりがちな恋愛というテーマを濁さず伝えていく今のreGretGirlを確認できた2時間だった。

撮影:白石達也 /取材:石角友香

reGretGirl

リグレットガール:大阪を中心に活動中。切なく女々しい歌詞とキャッチーなメロディーが特徴の次世代センチメンタル3ピースギターロックバンド。2017年12月にリリースした全国デビューミニアルバム『my』の収録曲「ホワイトアウト」がアプリ“Tik Tok”で多数使用されるなど、若者を中心に爆発的に浸透している。