天月-あまつき-がアコースティックギターを弾きながら歌い始めた「Dear Moon」。薄暗い空間に歌声とギターの音色がひっそりと広がっていったが、突然、彼を包んだ幻想的な光。さまざまな電飾が瞬く空間は、まるで星空のよう。そして、彼は歌うのをやめて“やっぱりだめだなぁ”と溜息をついた。すると、ユニークな風貌のキャラクターが会場のスクリーンに登場。天月のマスコットキャラクター・正宗くんに似ている彼の名前は“マサえもん”。正宗くんの遠い親戚なのだという。“今、日本中に配信されてるんだよ、もっとビシッとしなさい!”と叱られた天月は、10周年を締め括るライヴに、観客がいないことをひたすら嘆いていた。しかし、“誰もいない場所でひとりで歌ったところから始まったんだよね? 今日、誰も来なかったのは、10年間でどれだけ成長したのか観てやろうってことじゃないかな?”とマサえもんに言われて、大切なことに気づく。“僕のアーティスト活動は誰もいない小さな部屋から始まった。そんな僕の歌を聴いてくれる人がひとり、またひとりと増えていった。そして、僕はようやく外の世界に出ることができたんだ。あれから10年。僕は本当に成長できているのだろうか? 証明してみせる。自分の成長した姿を”という決意の言葉を経て、ついにライヴがスタートしたーー。
当初予定していた公演は新型コロナウィルスの影響で中止に。しかし、“ここまで応援してくれたみんなにどうしても届けたい”という本人の強い意向で、幕張メッセから配信された今回の2 ディズ公演。1日目のテーマは“Love & Pop”。ポップなメロディー、キュートなイメージの曲を主体とした内容となる旨が事前にアナウンスされていた。“どんな曲が届けられるのだろう?”と待ち構えていると、バンドメンバーたちによる演奏がスタート。ダンサーチームも現れて華やかさを増した空間に天月も合流して、最初に披露されたのは「かいしんのいちげき!」。軽快にステップを踏みながら踊り、歌声を伸び伸びと響かせる姿が実に気持ち良さそう。たくさんのシャボン玉が宙を舞う空間で、彼が浮かべていた笑顔がとても眩しかった。
温かいムードをじっくりと作り上げていた「恋に溺れて」。8月28日にMVが公開されたばかりの新曲「ライフ イズ ビューティフル」のあと、迎えた最初のMCタイム。天月はリアルタイムで寄せられているコメントを読みつつ、ライヴができる喜びを全身に滲ませていた。そして、さらに届けられていった多彩な曲たち。サックス、トランペットのプレイヤーも含む編成のバンドサウンドは、あらゆる曲を輝かせていた。天月がペンライトを振りつつ踊って歌った「月曜日の憂鬱」は、画面を観ながら一緒に盛り上がった視聴者がたくさんいたのではないだろうか。カラフルなエアチューブがステージ上で揺れる中、代々木アニメーション学院の学生たちによるダンスも加わりつつ届けられた「Sing!Swim!Swing!」。代々木アニメーション学院の最新CMソング「カラフルタッグチーム」。ファンに対する真っ直ぐな気持ちが歌声から伝わってきた「ファンサ」...片時も目を離せない場面が続いた。
“ライヴができなかった期間、たくさん溜まりに溜まった想いを言葉と歌でみなさんに伝えられたらなと思っております”と、今回の生配信ライヴに対する想いを語ってから突入した後半も、ラブリーでポップな空間が次々作り上げられていた。そして、本編がバンドアレンジバージョンの「Dear Moon」で締め括られて、メイキング映像が流れてから始まったアンコール。ダンサーチームと元気いっぱいに踊りながら「恋人募集中(仮)」を歌ったあと、抱いている想いを改めて言葉にした。“久しぶりのライヴ、めちゃめちゃ楽しかったです。ひとつひとつつながってきた感情や声がどんどん大きくなって、この10周年記念、幕張メッセでみんなと楽しい時間を過ごすことができました。ほんとにありがとう。だからこそ、今日はもうちょっと愛について考えてみました”というMCを経て、ラストに届けられたのは「きっと愛って」。《あなたに捧げるこの歌を 愛と呼んでもいいかな》という歌詞の一節は、ファンに対する温かい気持ちで満ちあふれていた。
「きっと愛って」を歌い終え、視聴者に挨拶をしているうちに、用意していた全曲を披露してしまったことにふと気がついて驚いていた天月。どうやらもう一曲歌えるつもりでいたらしい。“勘違いしてた(笑)”と照れくさそうにしていた様子が、無邪気で可愛いらしかった。このようなところも10年間の活動の中でファンに深く愛されてきたのだろう。親しみやすいキャラクターに和みつつ、翌日の配信で示される“Rock & Cool”という一面への期待も膨らむエンディングであった。
撮影:Tatsuya Kawasaki(isai.inc)/取材:田中 大
天月-あまつき-
あまつき:動画共有サイトにて2010年より動画の投稿を開始。ハイトーンで少年ぽさを色濃く残した歌声は、さわやかでありながらも甘い魅力があり、人懐っこくいたずらっぽさを感じさせるビジュアルとあわせ、多くの人々の心を掴む。また、自身が企画した全国ライヴツアーを行なったり、演劇、朗読劇と活動の幅も広げ、日本のみならず海外のファン層も拡大しており、国内外のイベント出演オファーが相次いでいる。