5カ月に及ぶロングツアー『BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER』が幕張メッセを皮切りにスタート。初っ端から、藤原基央(Vo&Gu)、増川弘明(Gu)、直井由文(Ba)、升 秀夫(Dr)のメンバー4人はスタンディングのみで埋め尽くされた観客と正対する真っ向勝負の演奏で攻め続ける。ギミックなし、誠実な歌とプレイで場内を興奮のるつぼ化させていく。イントロから大きな歓声があがる中、藤原の柔らかな歌が会場の四隅まで染み渡り、自然とハンドクラップも起き、熱狂的に受け入れられていた配信シングル曲「記念撮影」。デジタル音とバンドサウンドの融合も曲のスケール感を増幅させ、大きな会場で抜群に映えている。また、TVアニメ『3月のライオン』オープニング曲として書き下ろした「アンサー」もライヴで初披露。光に満ちあふれたポジティブなギターフレーズが印象的で、至福の笑顔を浮かべる人たちの表情こそが、この曲の魅力を物語っていた。
ショー自体は新旧織り交ぜた内容で、約1年振りのツアーということもあり、一曲一曲が大きなリアクションで迎えられる様が印象的だった。さらに、会場の真ん中あたりにはキッズエリアも設けられ、子供たちが心地良いサウンドにノッていた。昨年はバンド結成20周年の大きな節目に到達した彼ら。親から子へ、音楽のバトンが渡されていく。それだけのキャリアを、彼らも積み重ねてきたのだ。その20周年の最後のタイミングでできた「リボン」もプレイ。藤原はアコギを持ち、力強くもやさしいメロディーを解き放つ。贅肉や装飾を完全に取っ払った、シンプル極まりない曲調。だからこそ、歌詞の一語一句が鮮明さを増し、情景が脳裏に浮かぶ豊かな音楽性を見せていた。これから始まるツアーは、多くの人を魅力するに違いない。そう、確信させるツアー初日だった。
撮影:古渓一道/取材:荒金良介
BUMP OF CHICKEN
96年、幼稚園からの幼なじみで結成された藤原基央(vo&g)、増川弘明(g)、直井由文(b)、升秀夫(dr)の4人から成るBUMP OF CHICKENは、数々のコンテストを荒しまくり、99年3月に<ハイラインレコーズ>からデビュー・アルバム『FLAME VEIN』を発表、活動を本格化する。続いて00年3月には2ndアルバム『THE LIVING DEAD』をリリースし、地道なライヴ活動の甲斐あって、着実に彼らの音楽が認知され始める。(現在は2作品とも廃盤となり、再発盤が発売されている)。
当時、メンバー全員が弱冠20歳とは思えないほどの円熟味、安定感を感じさせるプレイが圧巻であった。なかでも、フロントマンでありソング・ライティングを手掛ける藤原基央の存在が、このバンドを支えているといっても過言ではないだろう。詩人の「山田かまち」を彷彿させる文芸的な歌詞、感情をストレートにぶつけたメロディ——それは過剰に生々しく、いたってリアルな世界を築く。言葉の弾丸を音の銃に詰め込みブッ放す......まさしくそんな感触だ。因みにインディーズ〜メジャーでリリースされている作品全てに隠しトラックが収録されている。
00年9月、<TOY'S FACTORY>から1stシングル「ダイヤモンド」でメジャー・デビュー。翌01年3月にはメジャー2ndシングル「天体観測」が55万枚を超えるビッグ・セールスを記録し、日本のロック・シーンを背負って立つ存在となっていった。その後、02年2月には、本作を含むメジャー1stアルバム『jupiter』を発表、シングルとアルバムを通じて初のオリコン週間チャート初登場1位を獲得し、その地位を不動のものとした。また、同年夏には、BUMP OF CHICKENの楽曲の世界観・メッセージをもとに制作されたフジテレビ系ドラマ『天体観測』が放送され、インディーズ時代の作品を中心に数多くの楽曲画使用された。
03年3月に、彼らが以前からファンでもあった『ONE PIECE』の映画『ONE PIECE THE MOVIE デッドエンドの冒険』主題歌に、メジャー6thシングル「sailing day」が起用され、若者のみならず、下は幼稚園生、上は子供を持つ親までの様々な年齢層のファンを引き込んだ。そして04年5月29日、彼らの地元でもある佐倉市民体育館にて完全招待制フリー・ライヴを行い、<スペースシャワーTV>で全国に生中継された。(余談だが、このライヴの際、会場のヴォルテージが最高潮に上がった瞬間、体育館の底が抜けるというアクシデントが起こり、ライヴが一時中断した。)04年8月には、藤原自身がジャケット写真を描いたメジャー2ndアルバム『ユグドラシル』をリリースし、本作もオリコン週間チャート堂々1位を獲得した。
06年3月には、藤原基央が書き下ろしたナムコの人気RPG『TALES OF THE ABYSS』用のサウンドトラック集『SONG FOR TALES OF THE ABYSS』をMOTOO FUJIWARA名義でリリース。その後、山崎貴監督との出会いからコラボレーションが結実するタイアップが実現。07年11月に公開された大ヒットを記録した映画『ALWAYS 続・三丁目の夕日』主題歌を担当。映画の台本と仮編集映像を見て書き下ろされたメジャー13thシングル「花の名」は、映画の素晴らしい内容とも相俟って、この年を代表する大ヒット・シングルとなり、同時発売されたメジャー13thシングル「メーデー」と共にオリコン週間チャート初登場1位、2位を独占するとう快挙を成し遂げた。
07年12月、前作から約3年4ヶ月ぶりとなるメジャー3rdアルバム『orbital period』をリリース。デビュー9年目にして今もなお、購買層を拡大し続け、また若者からの絶対的な信頼と指示を受け続ける。このバンドが発信し続けるメッセージは、これからも多くの人々に大きな感動を与えるであろう。それだけ彼らが創る音楽の影響力の大きさは計り知れない。まさに、“時代が必要とした奇跡のアーティスト”——それがBUMP OF CHICKENなのだ。