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LIVE REPORT

Mr.Children

【Mr.Children】 『Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25』 2017年8月6日 at 日産スタジアム

2017年08月06日
@日産スタジアム

“すげえことになるんじゃないか。そんなふうに期待してるかもしれないですけど、期待のはるか上を行くライヴになると思います。そのための準備もしてきました。どの曲をやろうか悩みに悩みましたが、この曲だけは絶対に今日やらなきゃいけない。なんとしても聴いてもらいたい。僕らの宝物である皆さんに贈ります”

桜井和寿(Vo&Gu)の言葉、そして最高の笑顔で歌い始めた「GIFT」が腑に落ちた。7万人の観客との交歓も鮮やかに完全無敵のスタートダッシュを飾ったメガヒット曲「シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~」「名もなき詩」にしても、この日のセットリストに入り切らなかった名曲の数々にしても、どんな豪華タイアップが付こうが、Mr.Childrenはこういう真摯な気持ちで楽曲を作り続け、歌い続けてきたことが伝わったからだ。その積み重ねを25年やってきて、割れんばかりの歓声に包まれた今日のステージがあるのだと思う。沸き起こる《ラララ♪》の大合唱に計らずも笑みをこぼすメンバー4人の表情を目にすれば、また点が線になっていく。

なんてことを思っていたら、桜井が“僕らに向けられるこの大きく温かな拍手を、声を、笑顔を! 見落とさないように、焼きつけるように、この曲を歌います”と続け、「Sign」が始まった。まさにツアータイトルどおり、ファンへの感謝の気持ちをしっかりと何度も届けようと努めるMr.Children。表現力豊かな桜井のヴォーカルを前面に出し、田原健一(Gu)と中川敬輔(Ba)が自然体で静かに演奏を支え、鈴木英哉(Dr)が笑顔で叩きながらコーラスする。多くのリスナーが見てきたように、その構図は25年前から微塵も変わっていない。

“出し惜しみとか一切なしでやります!”という宣誓もあった、デビュー25周年記念のドーム&スタジアムツアー「Thanksgiving 25」日産スタジアム2日目。冒頭「CENTER OF UNIVERSE」から桜井が中央の花道に駆け出して歌い、「ヒカリノアトリエ」はバンドごとセンターステージへ移動し、チャラン・ポ・ランタンの小春(アコーディオン)らを従えた8人(同曲のレコーディングメンバーであり、昨年〜今春まで行なわれたホールツアーもこの編成で回った)で披露したり、さらに鈴木がヴォーカルを取る「思春期の夏~君との恋が今も牧場に~」も挟んだりと、奔放なパフォーマンスでライヴは快調に進む。

前半のハイライトは夕暮れ時のブロック。“夏にぴったりな僕らのデビュー曲です”と始まった「君がいた夏」、もはや説明不要の超名曲「innocent world」「Tomorrow never knows」が畳みかけられると、オーディエンスは心の窓を大きく開け、たまらない想いで歓喜の声を上げる。リスナーそれぞれの記憶とミスチルの楽曲がリンクし、ピュアな熱量が辺りに充満していくのが目に見えるかのような盛り上がり! “ああ、あの頃こんなことあったな”“ダメになりそうな時、すごく励ましてもらったんだよ”という感じで、Mr.Childrenの曲はみんなの人生に強く結びついている。たとえ大ファンじゃなくても、Mr.Childrenの曲で何かしらのときめきが甦る。そんな経験って多くの音楽好きに共通してあるものなんじゃないか、とも思う。

「innocent world」で自身初のオリコン週間チャート1位を獲得以降、Mr.Childrenは譲れぬ夢を抱えて歩き続けてきた。それは途方もなく難しいことなのだけれど、目の前には愛に満ちた光景が確かに存在しているのだからすごい。感激で言葉を失ってしまう。同曲の間奏では4人が舞台中央に集まり、笑顔が弾ける。ベースとギターの美しいフレーズに合わせて、桜井が中川と田原を誇らしげに紹介した。そして、「Simple」は桜井のアコギ弾き語りのみで披露。ステージ上のビジョンに歌詞が映し出される中、ファンのみならずメンバーへの感謝も滲ませたりと、グッときて仕方ない。

快晴の青空の下で17時過ぎに始まったライヴもとっぷり日暮れ。日産スタジアムに涼しさが訪れた頃、桜井がおもむろに口を開いた。“ほとんどシングル曲でお送りしてますが、次に聴いてもらうのはたぶんあまり知られてない曲です。でも、僕らにとっては大事な曲で、旅、人との出会い、愛すること、自由、家族、平和、日本......いろんなことを歌ってます”――そんなMCを受けての「1999年、夏、沖縄」。曲の途中では、桜井が胸の奥に秘めた想いを感慨深く打ち明ける。“昔ノストラダムスの大予言ってのがあって、1999年に世界は滅亡するって言われてたんです。でも、結局は滅亡なんてしなくて、2002年にMr.Childrenはデビュー10周年になってました。当時の僕らはまだ若くて、素直じゃなくて、自分たちのことをいいって誉めてくれる人も、どうせすぐ他のところに目移りしちゃうんだろって。10周年なんて、事務所やレコード会社が話題作りのためにやってるだけで、自分たちは1日1日を一生懸命に過ごしていくだけです。そんな風に思ってました。でも、10周年を過ぎたら、月日が経つのはすごく早くて。気がつけば25年......こうやって見渡せばわかるように、今も僕らの音楽に耳を傾けてくれて、コンサートに足を運んでくれる人たちがこんなにたくさんいること、本当に幸せに感じてます。どうもありがとう。同時に、いつまでこんなふうに楽しく歌って演奏していられるんだろうと考える機会が増えました。同世代のミュージシャン、友達、近しい人も病気になったり亡くなったりしてる。だからこそ、なおさらステージに立っていられる時間を、みなさんといっしょに過ごせる時間を愛おしく思ってます”。

後半の「足音 ~Be Strong」「ランニングハイ」へと続く展開は、この上ないほどにドラマティック! 桜井のがむしゃらな熱唱をはじめとする泥臭いパフォーマンスに心がグググッと引き寄せられたところで、田原のギターで「ニシエヒガシエ」が始まれば、もうひたすらに踊り狂うしかない。レーザー光が飛び交い、ホーンセクションがアッパーに高鳴る中、7万人のオーディエンスは明日に向かって生きていくビートをビシビシ感じていた。

クライマックスには、最新曲「himawari」を渾身の力を込めて聴かせたMr.Children。「掌」では会場全体が掌をかざし、「fanfare」「エソラ」とスタジアムバンドの凄みを活き活きと爆発させるのだった。

アンコールのラストは、“この曲だけは過去じゃなくて、ただただ未来だけを見据えて演奏したい”と語られて披露された「終わりなき旅」。イントロでどデカい雄叫びを上げる桜井、シンプルかつ全身全霊で掻き鳴らされる名曲に対し、ファンも喜びをあらわにする。なんてデビュー25周年にふさわしい、美しい光景なんだろう。夜風がスタジアムを心地よく吹き抜け、空には満月が輝いていた。

撮影:薮田修身(W)/取材:田山雄士

Mr.Children

純粋なロック・バンドが、いわゆるアイドルや歌謡曲(Jポップ)のアーティストと同様にチャートを賑わせるようになって久しい。ホコ天バンド人気やヴィジュアル系の台頭などと連動してそういった状況が生まれたと思われるが、Mr.Childrenは着実なライヴ活動で叩き上げられ、トップに昇りつめたバンドである。

89年に桜井和寿(vo&g)、田原健一(g)、中川敬輔(b)、鈴木英哉(dr)の4人によって結成され、92年に第5のメンバーともいえる小林武史プロデュースによるミニ・アルバム『EVERYTHING』でデビュー。93年頃から徐々に注目を集め、ついにシングル「CROSS ROAD」が120万枚以上のセールスを記録した。以後、日本を代表するロック・バンドとして不動の地位を確立しながら、「innnocent world」(第36回日本レコード大賞受賞)「終わりなき旅」「Sign」(日本レコード大賞・金賞)「GIFT」「HANABI」など数々の大ヒット・シングルを発表。オリコン・シングル・チャートにおいては「innocent world」以降の全シングルが初登場1位を獲得しており現在も記録を更新中である。

壮大なサウンド・アレンジが光るバンド・アンサンブルと、桜井自身の直情ともとれる歌詞——ポップ感あふれるノリのいいナンバーも、アコースティックが冴えわたるバラード調の曲も、真っ向勝負でかます4人の真摯な姿勢には、ロック・バンドとしての自信と新境地へ向かう勇気を垣間見ることができる。