来年デビュー30周年を迎えるSING LIKE TALKINGが、カウントアップライヴ企画第三弾を東京・中野サンプラザで2日間にわたって開催! 今回は彼らのストレートなポップ感覚とワイルドなロックテイストそれぞれに焦点を当てたレアメニュー満載の内容で、熱心なファンから初めてのお客さんまでが数多く駆け付ける中、両日とも大盛況のステージとなった。
初日『Pop of the day』は、いきなり1stアルバム『TRY AND TRY AGAIN』(1988年発表)のナンバー「Fair ~Just The Two Of Us~」で幕開け。佐藤竹善(Vo&Gu&Key)が伸び伸びと歌い、藤田千章(Key&Syn)と西村智彦(Gu)が心地良いグルーブを奏でると、会場内にスーッと爽快感が広がり、瞬く間に手拍子もあふれ出す。赤い照明の下で西村のギターが華麗に鳴り響く「Love Express」、佐藤のハイトーン&藤田のカラフルかつ煌びやかな音色に早くも泣ける極上AOR「飛べない翼」と、序盤にして揺るぎないパフォーマンスを見せるSING LIKE TALKING。曲のイントロごとに、客席からは何度も歓声が上がっていく。
“お盆の中、よく来てくれました! 来年の30周年はみんなが知ってる曲をいっぱいやらなきゃいけないから、今回観に来てなければしばらく聴けないであろう、イブなりのスペシャル選曲でお送りします”と佐藤が宣言。続けて、藤田と西村が挨拶し、彼らにとって思い入れの強いホールである中野サンプラザでのひさびさの公演を喜ぶトークも展開された。さらに、佐藤が“20歳の時に書いた”という「City On My Mind」などで魅了する。
バンド編成はSING LIKE TALKINGの3人を含め、計9人。江口信夫(Dr)、松原秀樹(Ba)、塩谷哲(Pf)、黒田晃年(Gu)、露崎春女(Cho)、エリック・フクサキ(Cho)といった鉄壁プレイヤーたちがバックから演奏に彩りを添える。そして、「愛と言えるまで」では“この曲はどうしてもサックスがなければ成り立たない”と、そこに近藤和彦(Sax)を呼び込む初日のみの豪華サプライズも! その後も最新曲「6月の青い空」や壮大な愛のバラード「The Light Is You」を聴かせたり、“何もしゃべることを考えてこなかった”という佐藤の奔放ぶりを藤田が叱るマイペースな掛け合いで笑わせたりと、最後まで観客の心を掴んで離さなかった。
2日目は『Rock of the day』。昨日同様の布陣が組まれる中、佐藤はSEに合わせてヘドバンしながら登場し、「摩天楼の羊」へ勢い良く雪崩れ込む。コーラスのふたり、露崎とエリックもジャンピングクラップで盛り上げ、ロック寄りのパキッと硬いグルーブに痺れる滑り出しだ。続く「Jack Lemmon」では、佐藤がアコギで清涼感をプラス。藤田のアクションもじわじわ大きくなり、西村と黒田による熱く激しいギタープレイの応酬は会場を歓喜の渦に包んだ。
この日はバンドメンバーの紹介もゆったり時間を取って行なわれ、その中でエリックに「Historia de un amor」(彼が8月23日にリリースする初のミニアルバム『ある恋の物語』収録曲)を1コーラス歌わせる粋な計らいまで飛び出したりも。また、“アーウィン・ショーの小説『ビザンチウムの夜』を読まなければ、歌詞の意味がまったく分からないです”という佐藤の曲紹介で始まった「Evening In Byzantium」、ラテンの要素が入ったリズム&ブルース「涙の螺旋」、藤田がマリンバのような音色でリードする「未来のために」など、レアなセットリストでも楽しませてくれる。
ファンクのリズムが効いたハードなロックチューン「The Law Of Contradiction」を演奏したあとには、その収録アルバム『METABOLISM』(2001年発表)に触れながら、“あの頃はどうしたんだSING LIKE TALKING!? なんて言われたもんだよねぇ”“おしゃれだとか形容され出してきたもんだから、上等だよって感じで幼い動機で反発して作った(笑)”などと昔を懐かしんだ。
クライマックスは圧巻のライヴ運びで、オーディエンスをグイグイ惹き込んでみせる。昨今のソウル~ブラックミュージックやシティポップにも引けを取らないくらいにカッコ良い「Steps Of Love」、佐藤の美しいファルセットと藤田の幽玄なキーボードと西村のメロディアスなギターソロがドラマチックに重なる「Our Way To Love」、ジャジーなピアノの上で佐藤がスキャットしまくる「Starting Over~ありあまる想いで~」......この上なくハッピー&メロウな空気を保ったまま、本編が締め括られた。
佐藤がピアノ弾き語りでうっとり聴かせ、途中から他のメンバー全員がハンドマイクでコーラスして盛り上げたアンコールの「Spirit Of Love」。そして、最後はメンバー3人だけで「Utopia」を味わい深く披露し、『SING LIKE TALKING Premium Live 29/30~SING LIKE POP'N ROCK & MELLOW~』2デイズは幕を閉じた。SING LIKE TALKINGの職人気質ぶり、ユーモア、メンバーの風通しの良さが分かるステージだっただけに、30周年のアニバーサリームードはますます加速していきそう。10月リリースのニューシングル、同じく10月より全国順次公開の映画『Music Of My Life』(SING LIKE TALKINGのファンクラブ会員からの手紙、リアルなエピソードを基にしたもの)、年明け1月スタートのツアー(バックバンドは今回とは異なる若手が中心とのこと)と、今後も目が離せない!
撮影:横内貞久/取材:田山雄士
SING LIKE TALKING
88年のデビュー以来、アーバンな香り漂う爽やかミュージックを創出し続けるポップス・ファクトリー、SING LIKE TALKING。30代前後のヤング・エグゼクティヴ風男子を中心に高い人気を誇る。ソウル/ファンク/AOR/フュージョンの良質なエッセンスをニッポンという名の土壌で培養し、開花させた心地よいサウンドは、誰の耳にもすんなりと入ってゆくだろう。例えば、ラヴリーなステディとの湾岸ドライヴ、気の合った仲間との船上パーティなど......彼らの音楽はこういった素敵なシチュエーションをクリスタルに彩ってくれるはず。