誰からも愛されるキャラで、誰からも愛される曲を作り、ひたすら歌い続けてきた10年――広い横浜スタジアムの広いステージでひとりスポットライトを浴び、アコースティックギターを爪弾きながら歌う彼の姿を観て改めてそう思った。秦 基博の10周年記念ライヴ『LIVE AT YOKOHAMA STADIUM』は集まった25,000人の愛に包まれた、ハートフルなライヴだった。宮崎県生まれの秦にとって横浜は、小学2年から移り住んだ第2の故郷。野球選手に憧れていたこともあり、彼にとっての聖地とも言えるこの場所で歌えることの喜びを爆発させつつも、想いを噛み締めながら歌っているようだった。
第1部では昨年行なったアリーナツアー『All The Pieces』でも素晴らしい演奏を披露したバンド&ストリングスでのアンサンブルを楽しませてくれ、第2部ではファンにはお馴染みの“GREEN MIND”=アコースティックスタイルで弾き語りを軸にじっくりと聴かせた。リリーフカーが登場したり、スタンドを使ったプロジェクションマッピングなど、メリハリがあるスタジアムならではの演出も。セットリストは「シンクロ」から「グッバイ・アイザック」「アイ」「朝が来る前に」、最新シングル「Girl」、さらに未発表の新曲まで、10年の軌跡を辿る構成。アコースティックギター1本でスタジアムに集まったひとりひとりの心の琴線を震わせるその歌声に、デビュー時のキャッチフレーズ“鋼と硝子でできた声”の意味を改めて感じた。「ひまわりの約束」では大合唱が起こり、アンコールの「70億のピース」では、スマートフォンのライトで照らされる。本人、そしてファンの心に深く刻まれた一日だったはずだ。