そのとき

そのとき すみれの花びら こぼれて
あなたが 静かに 席を立つ
そのとき 開いた 扉のすきまで
ざわめき 一瞬 また消える

すこし大人のふりして あなたを
責めてみたくって 泣いてみたの だけど

街は引き潮
わたしはひとりで
浪打ち際を
追いかけてゆくの いつまで
胸に満ちてく 悲しい言葉に
足もとの砂をさらわれ
帰れなくなる

そのとき わたしが笑えばよかった
誰にも 優しい人だから
そのとき あなたにもらったブレスが
涙をふくたび 音たてた

すべて許して 打ち明けあうのは
恋じゃないよって 誰か言うわ だけど

頬にエチュード
せつなくかなでる
金の調べは
最後に残った プレゼント
胸は欠けてく 月の影ぼうし
忘れもののよに わたしを
隠してゆくの

街は引き潮
わたしはひとりで
浪打ち際を
追いかけてゆくの いつまで
胸に満ちてく 悲しい言葉に
足もとの砂をさらわれ
帰れなくなる
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