早春賦

通い慣れたあの道も、窓から見ていた景色も、
どこか他人ごとで。

“まるで映画みたいだ”と二人で笑い転げてた、
そんな冬の終わり。

白紙のままだったその未来に戸惑い、
ただぼんやり眺めていた。青い春の残像を。

着崩した制服の胸ポケットに挿した、
花の名前は知らないけど何かが終わり告げた。

今日と明日の境い目さえ見失なってしまうほど、
眩しく過ぎゆく日々の中、僕ら夢を見ていた。
いつまでも。

ひとり電車に乗り込み、すみっこの席に座った。
雪が降り始めてた。

誰とも話したくなくてイヤホンして目を伏せてた。
そんな冬の終わり。

何気なくスマホの中の写真を見てたら、
あの頃の夢見がちな僕らがそこにはいた。

アスファルト突き抜けて道端に咲いている、
花の名前は知らないけど強く生きてゆかなきゃ。

冬と春の変わり目さえ見失なってしまうほど、
眩しく過ぎゆく日々の中、僕ら夢を見ていた。
いつまでも。

春とは名ばかりで、まだ寒い風吹く。
春と聞かなければ、知らずにいたものを。
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