ストリート・ストーリー

通い慣れた駅の改札を抜けたら、
いつもの場所を目指してく。

美術館の跡地は面影だけを残して、
街を彩るギャラリーになった。

雑踏に掻き消されてゆく歌声と、
刹那に響いたギターの音。

終わりかけた夏のまだ青い陽射しが、
傾き始めても僕の影を揺らしてる。

家路を急ぐように行き交う人の群れ。
その幸せの数だけ歌い続けていた。

日が暮れてゆくほど賑やかさ増してく、
北口とは対照に。

夜が帳を下ろした暗い南口には、
誰も知らない物語がある。

来ることのない恋人待つ少女。
今宵は何処に帰るのだろう?

恋をしてた夏のまだ蒼い残像を、
街灯がそっと、ただそっと照らしてる。

帰る場所 失くした彼女の目に映る、
その悲しみの数だけ歌い続けていた。

君に話した夢の破片(かけら)は、
未だ見つからないまま。

あの日 歌った詩(うた)など、
もう消えかけていて、
失くしてしまいそうだよ。

雑踏に掻き消されてゆく歌声と、
刹那に響いたギターの音。

いま最終バスが通り過ぎてくけど、
座り込んだまま僕は歌い続けてる。

帰る家さえない人たちの泪と、
その寂しさの数だけ。

夢を見てた夏のまだ蒼い想いを、
街灯はずっと、ただずっと照らしてる。

さよならの数だけ痛みも知ったけど、
それでも願う。この歌が届きますように。
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