片想い言えない、片想い言わない、きっときみを困らせちゃう。

あまりにも好きで
その気持ちを持ちこたえるのがつらかった
あまりにも好きだと何も望めないんだね
あまりにも好きで 
いっそ嫌いになりたかった
知らないままでいたかった
知らない頃にはもどれないけど
ずっと好きで今も好きで
この好きは何も望まないから
たぶん強く 守られる

 詩人・銀色夏生さんの『やがて今も忘れ去られる』という詩集から抜粋した言葉です。いっそ嫌いになってしまいたいと思うほど好きなのに、どうして相手に伝えないのでしょうか、どうして何も望まないのでしょうか。きっと、多くの方がその理由を知っていると思います。その人との“何か”が壊れることが怖いからなんですよね。<この好きは何も望まないから たぶん強く 守られる>…、結ばれることより自分にとって守りたい“大切”がある場合、そんな恋し方も、正しい道の一つであるような気がします。
 
 さて、今日のうたコラムでは同じく“伝えない”という選択肢を選んでいる主人公の恋心を描いた、やさしくあたたかなバラードをご紹介いたします。シンガーソングライター・ももちひろこが11月23日にリリースする「好きだから言えない」という新曲です。柔らかな切なさをまとった透明感ある歌声が魅力の彼女。「and I...」や「きみを幸せにするからね」といった代表曲が、自然発生的に“MixChannel”で女子中高生を中心に人気が広がり、歌ネットでも非常に歌詞の支持率が高いアーティストなんです。

きみの姿今日も探してる
出会ってもう2年が経つけど
大事なこと言えずにいるのは
全てが壊れそうで

無邪気に笑いかけるきみを
このまま胸に閉じ込めたい
ずっと変わらないままでいたい
こんなに臆病なわたし初めて知ったよ
「好きだから言えない」/ももちひろこ

 出会ってからもう2年。トモダチという関係を続けた時間が長ければ長いほど、恋心を伝えるのは難しくなっていきますよね…。そしてやはり<大事なこと言えずにいるのは 全てが壊れそうで>と、今の関係を崩したくないからこそ、想いを自分の胸の中だけに留めているのです。ただ、彼女が「好き」だと伝えない理由はそれだけではありません。

帰り道に偶然を装って 
何度かふたりで歩いたね
話すことは映画と音楽 時々あの子のこと

きみの気持ち わたしの気持ち 
矢印は向き合わないのに
消し方なんてわからなくて 
恋するって苦しいって わたし初めて知ったよ
「好きだから言えない」/ももちひろこ

 おそらく“きみ”は、大好きであるものに<映画と音楽>、そして<あの子>が並んでいるのでしょう。もしかしたら“わたし”は何度か恋愛相談に乗ってあげていたのかもしれません。そんな相手の恋心を知っているから、告白してもフラれる可能性が高いことをわかっており、サビでは自分自身に言い聞かせるかのように次のフレーズを繰り返すのです。

好きだから言えない 好きなんて言えない
トモダチでいい そばにいたい
こんなに切ないのに

好きだから言えない 好きなんて言えない
きっときみを 困らせちゃう
だから言えないよ だから言わないよ
きみが好きだから
「好きだから言えない」/ももちひろこ

 好きだけど、好きだから、『言えない』。それは、勇気が出せないゆえの“諦め”のようでもあります。しかし、『言わない』という選択はある意味、切ない“覚悟”にも感じられますね。そして彼女もまた、冒頭でご紹介した詩のように、歌詞の中で今以上のことを何一つ望んではいないのです。恋人になりたいとも、手を繋ぎたいとも、触れたいとも、綴ってはおりません。ただそばにいたいから<トモダチでいい>。この曲から“好き”だという気持ちが痛いほどまっすぐに伝わってくるのは、その“好き”が強く守られているからなのかもしれませんね…。
 
 『言いたい』あなたにも、『言えない』ことに悩んでいるあなたにも、『言わない』という苦しい選択をしたあなたにも、聴いていただきたい、ももちひろこの「好きだから言えない」。リリースより一足早く歌詞が公開されておりますので、まずは是非、MVと併せてその世界観に浸ってみてください。

◆ニューシングル「好きだから言えない」
2016年11月23日発売
TECI-511 ¥1,000+税