2023年9月6日に“yutori”が2nd mini album『夜間逃避行』をリリース!夜をテーマにバラエティの飛んだ楽曲で紡がれた今作は、「煙より」「センチメンタル」「ワンルーム」といったデジタルシングルに加え、ライブでのみ演奏されてきた楽曲や完全新曲など、全9曲を収録。5曲目「ヒメイドディストーション」では、ヒトリエ・シノダがアレンジを担当するなど、彼女たちの名刺となる1枚が完成。9曲目「眠るためのうた」はCDのみの収録曲で、ボーカル・佐藤古都子による弾き語り楽曲となっております。
さて、今日のうたコラムではそんな“yutori”による歌詞エッセイを2週連続でお届け。今回は【後編】です。執筆は浦山蓮が担当! 今作を制作するにあたり1つ、自身に課したルールとは。そして、そのなかでもとくに「大変だったけどやりがいを感じた」2曲について綴っていただきました。歌詞と併せてエッセイをお楽しみください。
“今まで通り”をやっていたら埒があかないし、何よりバンドも音楽を作るのも嫌いになると思ったので、今回の2nd mini albumはやりたい事と書きたい事しか書かないようにした。
別に今までやりたくない事をやっていた訳でもないし全部リリースしたくて書いてる。書いてるのにどこか「まぁこんな感じかな」とか「このメロディー使ったからこの後はこのコード進行メロディーで…」の繰り返し、自分でも思う、これは最悪、舐めてる、気づいた時には他のやり方知らないしの悪循環。
逆に今気づけてラッキーって捉えます。自分をこれ以上嫌いになりたくはないし。
そんな今回の2nd mini album、自分が基本作詞作曲編曲をやっているのですが、1つ“今まで使ったコード進行を一曲も使わないようにしよう”って決めて進めた。今までのコード進行を使うともう、同じようなメロや構成しか出てこず、ボキャブラリーが限界を迎え部屋でのたうち回るしか無くなるから。
そう決めて作ったアルバム、正直しんどすぎた。そりゃ自分が今までやってきた事が通用しない、曲ができても何かが違う、そもそもこの進行変じゃね? 構成変じゃね? の繰り返し。
普通にアルバム制作放棄しようと思った。放棄しなかったから今リリース出来てる訳ではあるのですが、本気で制作を止めたくなった。
ただここで辞めたら自分に何も残らないのを自分が1番実感していたから辞めなかった。あの時の自分辞めないでくれてありがとう今とても気持ちが楽です!!!
そんな中で自分がメインコンポーザーとして作った曲で、大変だったけどやりがいを感じた曲が2つあって(勿論全部やりがい感じてるけどなんかこう、あるじゃん)、M2の「会いたくなって、飛んだバイト」とM5の「ヒメイドディストーション」だ。
M2の「会いたくなって、飛んだバイト」から話すと、イントロからサビ前までは1年6、7ヶ月以上前からもう完成していた。これは完パケ状態の時でも手直しゼロレベルで完成していた。
逆に言うとサビに1年6、7ヶ月、普通にかけすぎだと思う、流石にこれには俺も苦笑いするしか無い。
けどそれくらいサビのメロディーと歌詞が出てこなかった。まず“好きな人に会いたくなってバイトを飛ぶ奴がサビに伝えたいだろう事”から考えなきゃいけないのが只々難しかった。
歌詞的に言えばそのバイトを飛んだ子は振られて別れてはいるのだけど、じゃあバイトを飛ぶくらい好きだった人に振られて“おつかれ様でした(笑)”的なニュアンスで終わるわけが無いし、“もうなんか殺してやりたい”と思う位暗い子でもないとも思ったし(多分)、なのでサビ頭に何を伝えたいかが決まり、歌詞に起こしてサビ頭が完成した時、そこからはトントン拍子というか悩む事も正直あまりなかった。
さっき言ったサビに1年6、7ヶ月かけたというのが、厳密に言えばワンフレーズに1年6、7ヶ月かけたということになる。かなりコスパが悪い。それくらい愛を持って1曲に取り組めた事が、自分が、誇らしくなった。
曲作りを舐めてる、コンポーザーとして舐めてる、と初めは思っていたけれど、この曲を通して少し自分は“1年6、7ヶ月対峙したら大抵の問題を解決する事ができる”という称号を手に入れた。これはデカい、デカすぎる
そうして悩んで模索して1度投げ出して何個も選択肢を作った末に出来たこの1曲、誰よりも自分が1番のこの曲の理解者であり、ファンとなった。
そしてM5の「ヒメイドディストーション」についてだが、コレはもう正直わかりません。リリースをした今でさえ分かっていません。
なんだろう、どんだけこの曲を理解しても、「理解したつもりで楽しそうだねwww」って曲に馬鹿にされてる気がするし、そう言われている。言われているんですハッキリと。
今までやった事のない曲調、ビート、ハモコーラスの入れ方、、、何コレ、ウチの曲なの? こんなの作った覚えありません! と言いたくなります(しっかり制作合宿で作ったことを覚えています)。
「バンドでなんとなくで合わせてみようか」で合わせた一発目のヒメイドディストーション、勿論酷かったし正直聴いてらんないレベルでグッチャグチャ、縦合わなすぎ自信無くすって、、、、って思いました。本当です。
ただ今までで1番“あと何かが当てはまれば大化けする”とも思いました。本当です。
そうして“あと何か”がわからないまま時が進んでいって、あぁ!!もう!!わかんねー!誰かの助言を聴きたい!誰かからのヒントが欲しい!それを上手く自分の中で汲み取っt……って思ったその時、ヒトリエが浮かんでシノダ(さん)というギタリストが浮かんだ。
去年の3月、自主企画でヒトリエをゲストとして呼んでツーマンライブをする、という今考えてもワクワクが止まらないライブをして、今までで1番近くでヒトリエそしてシノダ(さん)のギターを見た自分が直感で思ったのが、「この方と一緒にこの曲をしばき上げたらそれはもうどうにかなっちゃうんじゃないか」と。
決して頼んだらやってくれるだろうとか1ミリとも思っていない。ただ自分の中でそういう想像をして、ヒトリエ(その時は具体的に言えばワンミーツハー、curved edge、アンチテーゼ・ジャンクガール)を聴いては、ヒメイドディストーションの酷いデモを聴いて、ここにこういうギターがあったりw、とかしてた。
そんな事を思ってからは居てもたっても居られずに「この曲の編曲、ヒトリエのシノダさんにやって貰ったりって可能性、少しでもありますかね?」って聞いた覚えがある。確か大阪でライブの時に楽屋で聞いた。そんな思いがあったからこそ、編曲としてシノダさんが決まった時は心底嬉しかった。
自分が作った何かが足りないこの良い曲を、最高すぎる物にしてくれる自信があったから。僕が編曲するわけじゃないのに何故か自信に満ち溢れていた。
そこからシノダ(さん)から編曲の案が来るまで毎日ワクワクしっぱなしだった。○日に来るとは思うと聞かされてからその日1日がふわふわ浮いてる心地だった。んなこと考えてたら案が来た。震える、え、あ、案来たんだ。ってなった。
その時リハスタに入っていたから、一旦練習中断してイヤホン持って喫煙所に真っ先に行った。そうして2分58秒の最高な音源が流れた。カッコ良すぎて手震えまくってタバコの灰落ちまくってた。それくらい良かった、本当に衝撃が凄かった。これは自己解釈にはなるんだけれどこの曲に足りなかったのは“破滅的な音”だったんだなって認識出来た。
「何かが足りないけど凄い良い曲」の「何か」に「破滅的な音」が加わった事によって、“破滅的な音が響く良曲”に変わった。感動。
そうして出来たこの曲の名前がこの時はまだ無くて、この曲名を皆と考えに考えて、“悲鳴”と歪みの“ディストーション”を混ぜて少し俺たちが好きだったあのボカロ感、を出したくて「ヒメイドディストーション」って曲名にした。
このアルバムで初めてyutoriを聴いてこの曲を聴いた人はこんな荒々しいバンドなんだって思うだろうし、今まで聴いてくれていた人がこの曲を聴いたらこんな荒々しい曲作っちゃうの?ってなると思う。聴いた人一人一人に聞いてまわりたい。
そんな思いが詰め込まれてる2曲を紹介しました。他の曲も勿論この『夜間逃避行』って名前のアルバムを語るには欠かせない曲しかないです。色んな角度からリスナーを夜から逃してあげれる曲がいっぱい詰まってます。
1年に1枚ペースでミニアルバムを出せてる環境にとても感謝してます。あなた達が聴いてくれてライブに来てくれて、反応をくれて、何より楽しみに待っていてくれるから僕達は好き勝手やりたい音を出せています。本当にありがとう。
逃げたくなる夜が多い世の中だけど、せめて自分だけは責めないで、肯定してあげれるといいなと思います。
<yutori 浦山蓮(Dr.)>
◆2nd mini album『夜間逃避行』
2023年9月6日発売
<収録曲>
1.ワンルーム
2.会いたくなって、飛んだバイト
3.センチメンタル
4.安眠剤
5.ヒメイドディストーション
6.もしも
7.煩イ
8.煙より
9.眠るためのうた (Bedroom ver.)※CD only