時間旅行について

 2023年5月10日に“クジラ夜の街”がメジャーデビュー1st EP『春めく私小説』をリリースしました。今作には、ライブでもすでにファンからも 大反響のダークファンタジーな世界観を描いたEPリード曲「BOOGIE MAN RADIO」を含む全6曲が収録!
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“クジラ夜の街”の宮崎一晴による歌詞エッセイを3回に渡りお届け!第1弾は今作の収録曲「時間旅行少女」にまつわるお話です。ありふれた日常をファンタジックにする、とあるアイテムとは…。ぜひ歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください。


時間旅行少女という曲名を考えついた日、例えば『時空を超えた大冒険活劇!』だとか『タイムマシンが登場するSF物語!』なんかを歌詞に起こすんじゃなくて、あくまで日常の中の、ささやかな“経過”と“回想”に光を当ててみたい、と俺は思いました。
 
クジラ夜の街はファンタジーを創るバンドです。空飛ぶ少年、囚われのプリンセス、魔法使い、そんなお伽話のような世界を、これまでずっと歌ってきたのですが、この曲では、なんでもないシーン、ありふれた情景を幻想的に映し出すことで、クジラを再定義というか、アップデートというか、、、そんなんをしてみたかったのです。挑戦ですね。挑戦。要は
 
真の「ファンタジーを創るバンド」ならば
元がファンタジーでないモノでも
ファンタジーに昇華して然るべきなのでは!?
と、思ったわけです。多いですね。ファンタジーが。
 
“子どもの頃に書いた日記を大人になって読み返す”。時間旅行少女はたったそれだけの歌です。劇的な展開や魔法の様なやりとりは、歌詞中で一切起きません。
 
ただ、俺は。日記っていうのは、未来へ宛てた手紙で、一種のタイムトラベルなんじゃないかと思っているフシがあります。過去の自分の思念が、時を超えて届き、感情に影響を与える。同じ「自分」なのに、日記に書かれた言葉はどこか他人のようで、友人のようで。それは一方通行だけど、時空を超えた邂逅。立派な時間旅行なんじゃないかと。
 
ファンタジーでないモノをファンタジックにする、このテーマに、日記というアイテムはもってこいだったわけです。
 
とまー、やいのやいの書いてきましたが、時間旅行少女、俺は大好きです。形があるならば、毎晩抱きしめたくなるようなメロディだと思います。我ながら。いや素晴らしい。素直な感想、大事。
 
この曲もいつか日記のようになっていくのかな。どれだけ時が経っても、歌うたびに、記憶が蘇ったりして。それはとても素敵だな。進むべき未来で、ガッツポーズをしている自分に会うために、俺はこれからもステージに立ちます。よと。これも、そんな、未来への書き置き。
 
<クジラ夜の街・宮崎一晴>



◆紹介曲「時間旅行少女
作詞:宮崎一晴
作曲:宮崎一晴

◆メジャーデビュー1st EP『春めく私小説』
2023年5月10日発売
 
<収録曲>
1. 時間旅行 (Prelude)
2. 時間旅行少女
3. BOOGIE MAN RADIO
4. 浮遊 (Interlude)
5. ハナガサクラゲ
6. 踊ろう命ある限り