女性目線を書く時は“自己否定”、男性目線を書く時は“他者肯定”

 2022年10月5日に“とけた電球”が1stフルアルバム『piece of film』を配信リリース!シングル「トラベル」「2番手」を含む新曲11曲に加え、過去にリリースしてきた「どうすんの?」「灯」「ふたりがいい」「彩」も収録された全15曲入りのキャリア初のフル・アルバムとなっております。ワンマン・ツアーの開催も決定しており、10月9日 下北沢440からスタート!
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな“とけた電球”の岩瀬賢明による歌詞エッセイを2週連続でお届け!今回は【後編】です。【前編】に綴っていただいたのは“歌詞を書く動機”でしたが、【後編】は“岩瀬が女性目線の歌を書く時の考え方”についてのお話。女性目線の曲を書く時のミソになっているものとは…? ぜひ、今作の歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください。



どうもどうも、とけた電球の岩瀬です。第2回ということで遂に最終回。ええ、時の流れは早いんです。人生の1秒も無駄にしないで下さいね。
 
さて、前回は“歌詞を書く動機”についてエッセイを書きましたが、今回は“岩瀬が女性目線の歌を書く時の考え方”について書きたいなと思います。前回と比べてかなりピンポイントなテーマですがそういう気分なんです。ちなみに今回は文体も変えたくて“ですます調”で書いてます。これも気分です。
 
先日リリースしたフルアルバム『piece of film』の中からだと「spring sleep」・「2番手」・「」・「ふたりがいい」・「君がくれたもの」の5曲が女性目線を取り入れた楽曲です。もちろん完全に女性目線だったり半分だけだったりマチマチですが。
 
まず前提として僕の性自認は男性です。正直言えば、女性の体でも心でもない僕に女性の気持ちが完全にわかるわけなんてないと思ってます。だから僕の描く女性目線は、「岩瀬の中にある女性目線」なんです。伝わるかな。単純な話だけどここが結構重要。
 
僕が女性目線の曲を書く時のミソになっているのは“恋人や異性に指摘されたこと”。たとえば「spring sleep」の<寝てばっかりいないでよ>は昔の恋人に指摘されたこと。「君がくれたもの」の<時計をちらちら見つめ 心がここにないと知った>実際は携帯だけど、これも昔の恋人に指摘されたこと。
 
かつて僕が嫌がられた行為に対して、自分の歌詞でその行為を嫌だと言ってるんです。つまり、自己否定。好きで描いてる歌詞の中で自己否定をしていくってなんか面白くないですか? 僕が女性目線のラブソングを作る時って、気付けば自分の嫌がられた行為から歌詞を書いていくんです。
 
反対に男性目線の歌詞を書く時は、嫌だった行為よりも“嬉しかった・思い出に残っている”行為から描く時が多い。なんでなんですかね。男性作詞家の皆さんの意見をぜひお伺いしたいところ。
 
長くなってしまいましたが
女性目線を書く時は“自己否定”
男性目線を書く時は“他者肯定”
から歌詞を書くことが多いなーと気付けました。
 
ラブソングひとつでこんなに考察ができて楽しいんだから、やっぱりこれからもラブソングを書き続けたいと思います。

<岩瀬賢明>


◆配信フル・アルバム『piece of film』
2022年10月5日リリース
 
<収録曲>
1. spring sleep
2. 鏡の国
3. トラベル
4. ごめんね
5. 弱いです
6. 2番手
7. 彩 
8. 軽率に恋して
9. どうすんの?
10. 灯
11. わがままま
12. ふたりがいい
13. 君がくれたもの
14. 夕焼けを見て音楽を聞こう
15. あなたへ