足を止めない、日々を止めない。一緒に歩み続けることを歌いたい。

 2021年9月8日に“Hakubi”がメジャーデビューアルバム『era』をリリース。先行配信シングル「アカツキ」「在る日々」「道化師にはなれない」、そして映画『浜の朝日の嘘つきどもと』の主題歌「栞」を含む全12曲を収録。バンドが歩んできたこれまでの歴史と、図らずもこの1年、一変した生活。その中で、自らと向き合いながら、それでも前に強く突き進んでいく、これから先の“時代”へのメッセージを詰め込んだ意欲作となっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“Hakubi”の片桐(Vo.)による歌詞エッセイを3ヶ月連続でお届け!今回は第1弾。綴っていただいたのは、新曲「悲しいほどに毎日は」についてのお話です。2020年の自身が真空パックされたようだというこの曲。ライブが思うようにできない日々のこと、ライブが再開する前の不安、そして今の想い…。是非、歌詞と併せて受け取ってください。

~歌詞エッセイ第1弾:「悲しいほどに毎日は」~

お久しぶりです。Hakubi vo./gt.片桐です。

今年2月に初めてエッセイなるものを書かせて頂いてから約半年。
またエッセイを書かないかと(しかも三ヶ月連続で)お話をいただきました。
とても嬉しくて早速書き始めたのですが
もしかしてBa.アルくんの方が適役かも?と早速筆が止まりました。
というのも最近、雑誌のインタビューやラジオなどで発揮する
Ba.のアルくんの話をまとめる能力が高すぎるのです。
Drマツコ曰く、
”あんまり打席には立たないけど打席立ったら必ずホームラン打ってくるやつ”
確かに。悔しいけどそうなのです。
自分は目瞑ってバットを振り回し続けることしかできないような人間なので
今回も拙い文章ではありますが、歌詞を書いている自分が思うままに書いてみます。


“悲しいほどに毎日は”
この曲はまさに2020年の自分自身を閉じ込めた真空パックだと思う。

自分たちの出る予定だったイベントや音楽フェス、
知り合いのバンドのツアーがなくなっていくこと。
知り合いのバンドがその足を止めてしまうこと。
“仕方がない”で心をごまかしていくことに慣れてしまった。
自分がおかしいのか、世界がおかしいのか。

昨年、ライブが思うようにできなくなってからというもの
バンドマンとしての自分を失ってしまっていた気がした。
目標も見つからないままに時々開催できた配信ライブで心を繋ぐ
そして何もなくやり過ごす毎日に戻っていく。
形のない”バンドマンのプライド”だけを残して。
前例がないから、マニュアルがないから。
もうそんなこと言っていられないほど時は過ぎていて、
状況を汲み取って新たな方法を見つけ歩き出す音楽人も増えた。

大きく変わったのは有観客でのライブが再開した、
2020年9月21日「KANSAI LOVERS 2020」
これまでとは伝え方の違う配信ライブが約半年間続いたことで、
今まで散々行ってきたライブハウスでのライブが分からなくなっていた。
あんなに望んでいた目の前に誰かがいることが怖く思えた。

そのマスクの下は笑ってくれているのだろうか。
自分たちがその心を消化できるのだろうか。
自分たちに”ライブ”ができるのだろうか。

そんな不安は杞憂に終わった。

会場全体の緊張感、高揚感、
音や言葉の一つ一つを受け取ってくれるのが
不思議なことに、マスクをしていてもわかるのだ。

ああ、これだ。
これがライブだ。
バンドが失くしちゃいけないものを、
忘れちゃいけないものを思い出させてくれた。
それどころか制限された中の言葉のない一体感が
ライブがくれる本当の繋がりをくれた気がする。
もっとライブが好きになった。

「これをしてはいけない」に、尚更燃え上がるのは
とても人間らしくて自分でも笑ってしまいそうになるけれど
いつかライブ会場で一緒に歌ってほしい曲ができました。

“悲しいほどに毎日は”

変わってしまった毎日が
なくなってしまった場所が
あっけなく過ぎてしまった時間が
もう二度と戻ってくれないことに気づいた今だからこそ
“仕方ない”と諦めるのではなく
悲しみに塞ぎ込むのではなく
それぞれ違う痛みを抱えながら、その先へ進む原動力に。
足を止めない、日々を止めない。
一緒に歩み続けることを歌いたい。

いつかライブハウスで一緒に歌えることを祈って。

読んでくれてありがとうございました。
来月は何を書こうかな。
今までの分、たくさん溢れてしまいそうだ。

<Hakubi gt./vo. 片桐>

◆メジャーデビューアルバム『era』
2021年9月8日発売
初回限定盤 WPZL-31869 ¥4,000(税込)
通常盤 WPCL-13298 3,000(税込)

◆アルバム『era』予約リンク
https://hakubi.lnk.to/era