氷のように涼しぶっても、本当の熱さを忘れちゃいけないなって。

イチオシ!
氷のように涼しぶっても、本当の熱さを忘れちゃいけないなって。
今日のうたコラムでは、人気コーナー『言葉の達人』にもご登場いただいた作詞・作曲、プロデュースで活躍中の“カミカオル”さんによる歌詞エッセイを全5回でお届けいたします。TAEMIN、日向坂46、SHINee、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE、AAA、W-inds、福原美穂などなど様々なアーティストに楽曲を提供している彼女。歌詞とは?作詞とは?音楽とは? 第1弾 、 第2弾 、 第3弾 に続く、第4弾をお楽しみください…! ~歌詞エッセイ第4弾~ ◇氷のように冷たい女と私◇ 先週、少女時代さんの『 DIVINE 』について書くと言っていたんですが、数日前に観た、いや、観させて頂いた山下達郎さんの配信ライブ(2020年7月30日コロナ禍)の余韻がとにかくおさまらず、今だにあの『震わす何か』に感激が止まらないので、topicを変えてお送りしたいと思います。。! 達郎さんとまりやさん、そしてCITY POPやニューミュージックと語られるであろう音楽たちを好きになった経緯や敬意に触れだすと、もはやコラム終わらないので。。。とにかく数日前の配信ライブを軸に、確かに感じた感覚を記したいと思って。すみません。 はい、で、動く達郎さんが観れるレアな映像の配信。それは確かにライブ、でしたね。いつでも観られる無料のYouTubeなんかとは、感じ方がやっぱり違う。便利すぎるって、なんかリッチじゃない。そんな、便利すぎる時代に2度と観られないレアな配信は、その瞬間、その場所だけのマジックで、YouTubeじゃ決して得られない感覚でした。ライブマジックがあったんですよ、過去映像なのにね、不思議です。 観ていた間は、終始、アップテンポでも明るい曲でも涙が止まらず。。この涙は、私、プライベートで教会に行く時があるのですが、教会のパイプオルガンの前に座り、その音を浴びた時に流れてくる涙と同じもののような気がしていて。。 言葉なんて役に立たない。そんな瞬間でした。ただただ音楽が。音が。空気が。「いいんだよ」って抱きしめて。赦してくれる瞬間。浄化されて。解放されて。ありのままの自分を受け入れてくれる瞬間。日々に流されて、一生懸命ひた走って生きていても。ぽっかり空いた場所が知らない間に大きくなっていて。その埋まらない場所は一生埋まらなくても、音楽ってそばにいてくれるんですよね。こんな涙があるなんて。音楽って本当に素晴らしいなって思います。 説明できない涙が音楽。説明できない感動が音楽。音楽ファンだからこそ、作詞をはじめた頃は言葉をのせる立場として、どう書くべきか、私に果たして書けるのか、かなり迷ったり、矛盾を感じたりしている時もありました。言葉が音楽を邪魔してないか、って。かなり模索しました。特に当時は、ありのままの自分の葛藤のようなものが響くストーリーとしてもてはやされていて、そんなリアリティを語らなきゃいけない当時の音楽の風潮もあったりで。 でも何となく違和感もあったんですよね。ストーリーを語りすぎるのもイヤ。言葉が音楽を邪魔するのもイヤ。その感覚が無意識にあるから、私のアップテンポやダンス曲の歌詞は「言葉が踊る」と言われるスタイルに寄っていったんじゃないかな、という気がしています。 でも、「踊る言葉」たちを少し、新しいベクトルに軌道修正したくなってきました。達郎さんの音楽は、あるべき音、あるべき言葉しか存在しない、蒸留水のような無駄のないPOPS。作詞を始めた頃は、その良質なサウンド自体に影響され、言葉が音楽のグルーブを邪魔しちゃいけない、となぜか勘違いしていたけれど。先日の配信を見て、その勘違いを再確認。 達郎さんも、まりやさんも、歌詞はどちらかというと、すごく熱かった。それを歌って表現する際の歌の表現方法が、涼し気だっただけ、ということ。だって、私がキャッチして涙していたのは、むしろ都会的、涼しげなものにカムフラージュされていた人間らしさや、想い、念、どうしても溢れる愛、許す優しさ、そこだったんだから。言葉が涼しげだって、ちゃんと熱い。 そして、達郎さんが神なのは、その蒸留水のように無駄のないめちゃくちゃかっこいい音像の中で、ちゃんと愛を伝えてくれるところだったんだ、と。すごくタイトなのに愛が溢れてくる。ただただ愛に打ちのめされ、赦され、心が震えてくる。 10歳の時、まりやさんの『 夢の続き 』や『 時空の旅人 』って曲を聞いて、すごくまりやさんが好きになって。。さらに、本当の達郎さんの恐ろしさを18歳くらいで知っていって。。そこからものすごい時間が流れていた中で、また気づかされてしまった。。 氷のように冷たい女だと ささやく声がしても Don't worry! 『 プラスティック・ラブ 』 こんな熱い歌詞。書いてみたいよ。氷のように涼しぶっても、本当の熱さを忘れちゃいけないなって。じゃないと、やっぱり伝わらないなって。 この時代、暑苦しくなることを少し忘れていたり。涼しぶってるつもりが、本当にただ冷めてしまったり。予定調和が上手になっていたり。そんな自分で日常をやり過ごせてしまっているかもしれないけれど。 今度、言葉をのせる時には。もっと、愛を。音楽の中で正直にさけんでいきたい、と今回の配信ライブ後、号泣しながら思いました。 Withコロナの時代の音楽。達郎さんはその溢れる愛で、どうにか配信ライブの未来をたぐりよせようとしてくれているのかもしれないです。 やっぱり人間、愛がなきゃダメなんだなと。思います。その愛が、ライブであり、音楽であるはずなんだって。いち音楽ファンの私は、言い続けてゆきたいと思います。 <カミカオル> ★information Abema TVなどで放送 日韓合同男性アイドル発掘オーディション番組 『G-EGG』課題曲作詞 TeamC『I Don't Care』 2020年6月3日リリース Abema TV『今日好きになりました。』 人気メンバーからなる限定ユニット ERROR 『TRIGGER』 ★カミカオル 『言葉の達人』登場回