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  • MACO
    「恋愛するとMACOの曲が聴きたくなるの」と私はいつでも言われたい。
    「恋愛するとMACOの曲が聴きたくなるの」と私はいつでも言われたい。

    MACO

    「恋愛するとMACOの曲が聴きたくなるの」と私はいつでも言われたい。

     2020年9月25日に“MACO”が新曲「夏風邪」を配信リリースしました。同曲は、秋に振り返りたくなる夏の思い出が描かれた切ないラブソングです。歌詞先行公開時には注目度ランキングの1位も記録!さらにこの新曲を皮切りに、異例の4ヶ月連続配信リリースが決定。MACOから届くフレッシュな新曲たちを、じっくりとご堪能ください…!    さて、今日のうたコラムではその4ヶ月連続配信リリースと連動して、MACOによる歌詞エッセイを4作連続でお届けいたします!今回はその第1弾。綴っていただいたのは、新曲「 夏風邪 」についてのお話。治らない風邪みたいな、ひどい恋煩いが、どうしようもない愛おしさが、長引いているあなたへ。その想いを重ねながら、このエッセイと歌詞を読んでみてください…! ~歌詞エッセイ第1弾:「 夏風邪 」~ 治らない風邪みたいだな これはひどい恋煩いなんだな 「 love letter 」/MACO love letterの歌詞を書いているときに ふっと浮かんだフレーズ。 当時、多分この風邪は一生治らないんだと思ったし 治らなくていいし、 なんならずっとこのままでいいと思った。 仕事の移動で見る新幹線からの景色はいつも同じで 嫌気がさしていたのに、 ある日その景色が素晴らしく思えて この世界はなんて美しいのだろうと思った。 移動中眠るのがもったいないと思った。 それなら今思ったこと全て 文字におこしておきたいと思った。 目の下のクマさえも愛おしく思った。 「恋は麻薬である」 と脳科学的にも証明されているらしい。 どうりで寝不足でも 元気に仕事に行けるわけで。 新曲のタイトルはなつかぜ、 表記は「夏風邪」にしよう。 だって大事な人を差し置いて 憧れの人に本気になりそうだったって 何考えてたんだろうこの主人公は。 長引かせずに早めに気付いてね。 プリプロ(仮歌)の日、 このタイトルと歌詞が印刷された紙を見て スタッフ一同引っかかっている様子。 私の予想通り。 歌詞の中で夏の風と歌っているから、 無難に「夏風」と思ったよね。 カタカナで「ナツカゼ」とかね。 でもそれじゃなんか違うし今の私の気持ちにリンクしないんだよなぁ爽やかだしありきたりだし。 「夏風邪」だからこじらせてる感が出せる。 いつだって真っ白な恋に一直線! と思っていても次の日に心変わりすることだってある。輝いていた世界は元通りの色に戻ったり、もう一人の自分が自分を見てバカだなと思うこともある。でもまた次の日には小さな出来事に心動かされ、花が咲くこともある。 私はその心に生まれた小さな想いやトゲに気付いて、切り取って歌にして、笑う人生がいい。 私の想いが届いて夏風邪が通り、 みんなの元へ夏風邪が届いた。 この後3ヶ月みんなの元には私の新曲が届く。 4ヶ月連続リリースはとっても嬉しい出来事。 あまり時差なく新鮮なまま音楽を届けられることの幸せ。私の日記。 「恋愛するとMACOの曲が聴きたくなるの」 と私はいつでも言われたい。 恋と私は切っても切り離せない。 <MACO> ◆紹介曲「 夏風邪 」 作詞:MACO 作曲:湯原聡史

    2020/10/02

  • Thinking Dogs
    青春時代×やりたいことをやる為の反骨心=ロック。
    青春時代×やりたいことをやる為の反骨心=ロック。

    Thinking Dogs

    青春時代×やりたいことをやる為の反骨心=ロック。

     2020年9月23日に“Thinking Dogs”がニューシングル「Heavenly ideas」をリリースしました。今作は、ドラマ『映像研には手を出すな!』の主題歌。大童澄瞳が『月刊!スピリッツ』で連載している同名原作は、“最強の世界”を夢見てアニメ制作に情熱を注ぐ女子高生たちの姿を描いた作品。齋藤飛鳥(乃木坂46)、山下美月(乃木坂46)、梅澤美波(乃木坂46)が実写版にキャスティングされたことでも話題となった作品です。  さて、今日のうたコラムではそんなドラマ主題歌の最新作を放った“Thinking Dogs”のTSUBASAによる歌詞エッセイをお届けいたします!綴っていただいたのは、今作「 Heavenly ideas 」の核となっている“ロック”についてのお話。そして、歌詞に込められた強い想いです。是非、楽曲と併せて、このエッセイを受け取ってください…! ~歌詞エッセイ:「 Heavenly ideas 」~ 今回「Heavenly ideas」という楽曲のテーマのひとつ、“ロック”について少しお話しします。 「Heavenly ideas」の中でのロックというのは、『青春時代×やりたいことをやりたいようにやる為の反骨心』。 ドラマ版『映像研には手を出すな!』の主題歌という話をいただいてからの制作だったので、作品の世界観と自分の世界観がリンクするような楽曲にしたい!というところからのスタート。真っ先に思い浮かんだ、僕自身の高校生時代と重ねながら作詞をしていきました。 高校生時代は夢と現実が交互に見えてくるもので、例えばパイロットになりたい!と思っても自分には勉強ができないから無理だ。。とか。プロの野球選手になりたい!と思ってもプロになっていった選手と比べて自分の実力が見合ってないなーとか。日を追うごとに諦めるのがうまくなってしまうような時期でもあったと思っています。僕自身も小さい頃からやっていたゴルフでプロになることを諦めたり、高校に入学してから所属したバスケ部でも思うように成績が残せなくてやめてしまったり。 そんな背景があるなかで始めたバンド。僕にとっては歌詞の中にある“未知の扉”であり“巻き戻せない今”を感じられる場所でしたが、いろいろな壁にぶつかったりして諦めようと思ったことが何度もありました。 2番の歌詞の中に<ヤツらに塞がれた空を塗り替え Flapping>とあるのですが、この一節は当時の状況からイメージしたこと。空っていうのは僕にとってはバンドのことで、“ヤツら”っていうのは「そんなもん続けてどうする」って言われたりとか、学校の規則で突然「バンドは禁止!」って言われたりとか、メンバーが楽器を親に取り上げられたりとか、チケットが売れなくてライブハウスにお金が払えなかったりとか。。。立ちはだかってきたすべてのモノのことです。 それらの壁を乗り越えていった“向こう側の世界”へ行くためのあらゆる手段だったり方法がタイトルにもある「Heavenly ideas」。ぶっ飛んだアイデアというよりは抗う心そのもの。 映像研の中でも3人の高校生が好きなことを形にする為に様々なことに抗いながら進んでいくので、自分自身の経験と“ロック”というキーワードでリンクさせることができたのではないかなと思います。 「Heavenly ideas」は、僕らの楽曲の中でもかなりライブを視野に入れて制作しました。新型コロナウイルスの影響で今までの様にライブをすることはまだできませんが、はやく皆さんともライブで、それぞれの“ヤツら”に抗うように一緒におもいっきり叫べる日がくることを心から願っています。 <Thinking Dogs・TSUBASA> ◆紹介曲「 Heavenly ideas 」 作詞:TSUBASA 作曲:Jun・TSUBASA ◆9th Single「Heavenly ideas」 2020年9月23日発売 初回生産限定盤 SRCL-11477~11478 \1,500 + tax 通常盤 SRCL-11479 \1,136 + tax

    2020/10/01

  • The Songbards
    歌詞が体感に変わる時。
    歌詞が体感に変わる時。

    The Songbards

    歌詞が体感に変わる時。

     神戸発4人組バンド“The Songbards”が、新たな挑戦として三部作を始動させることを発表しました。そして2020年9月23日、その第一章を飾る3rd Mini Album『SOLITUDE』(ヨミ:ソリチュード)をリリース。タイトルは“孤独”を意味する“SOLITUDE”です。誰しもが経験のある、他人と自分を比べた瞬間に訪れる“孤独”にぶつかった時、それを打ち破るキッカケを与えてくれるような内容となっております。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放つ“The Songbards”の歌詞エッセイをお届けいたします。 第1弾 に続く、第2弾を担当したのは、メンバー・松原有志。綴っていただいたのは“歌詞のある音楽”と“歌詞のない音楽”についてのお話。一体“歌詞のある音楽”とは、どんな力を持つものなのでしょうか…。是非、エッセイを読んだ上で、彼らの『SOLITUDE』の歌詞もじっくりお楽しみください。 ~歌詞エッセイ第2弾:歌詞が体感に変わる時~ この世の中には、“歌詞のある音楽”と“歌詞のない音楽”しかありません。 これはとても意外なことです。なんとなく、音楽にはたくさんのジャンルがあって複雑なものだという認識はありませんか。ロックやポップス、ファンクやヒップホップ、さらには雅楽やクラシックなど…様々に細かく説明できます。しかし、もっと広く見ていけば必ずその二つのどちらかに当てはまるという見方もできるはずです。 このことについて考えるきっかけとなったエピソードがあります。 音楽を始めるかなり前、僕は一人の音楽好きとして洋楽ばかりを聴いていました。友達との会話の中で“好きなバンド”の話に。その友達はとある日本のロックバンドが好きらしく、そしてそのバンドの歌詞が好きだということを熱く語り始めました。そんな友達を見て僕は羨ましく思ったのと同時に意地悪な気持ちにもなり、こんなことを聞いてみました。 「メロディーなしで歌詞を読むだけでも好きなん?」 その友達の反応は、 「いや、それやと別になんとも思わんな」 なるほど。この答えは意外でした。意地でもその歌詞の良さを説明してくると思っていたからです。つまり“詩”が“歌詞”になるにはメロディーがないといけない。細かく言えば、サウンドや歌声のキャラクターまでもが関わっているということです。よく考えれば、僕が洋楽を好きな理由には歌詞の良さは入っていませんでした。英語を話せないという単純な理由で。 それ以来僕は、どんなに当たり前のことを歌詞にしていても音楽に乗って心まで届くなら。その逆に、素晴らしい詩であっても歌にするせいでその良さが届かないなら。“言葉”の持つ能力を、音楽が生かすことも殺すこともできることを知りました。 “ただの音”と“ただの言葉”が人に届くということは、“記号としての言葉”が音楽と組み合わさることによって、“体感”する次元に引き上がることなのではないでしょうか。 <The Songbards・松原有志> ◆3rd Mini Album『SOLITUDE』 2020年9月23日発売 完全限定生産盤CD+書籍 VIZL-1783 ¥2,300 +tax 通常盤CD VICL-65406 \1,500 +tax] <収録曲> 1.孤独と海 2.リトル・ヴァンパイア 3.Dream Seller 4.夏の重力 5.窓に射す光のように

    2020/09/30

  • Kitri
    父が「シンギュラリティって聞いたことある?」と言った。
    父が「シンギュラリティって聞いたことある?」と言った。

    Kitri

    父が「シンギュラリティって聞いたことある?」と言った。

     姉のMonaと妹のHinaによる、ピアノ連弾ボーカルユニット“Kitri”が、3作連続配信シングルをリリース!6月には第1弾、初のバラードシングル「Lily」を配信リリース。8月には第2弾、シャッフルビートでロックな味わいのシングル「人間プログラム」をリリース。10月にはどのような楽曲がリリースされるのが、お楽しみに…!さらに、9月23日には初のカヴァーアルバム『Re:cover』も配信リリース!是非、彼女たちの癒しの歌声をご堪能あれ…!    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放つ“Kitri”による歌詞エッセイを第1弾~第3弾でお届けいたします。今回は 第1弾 に続く第2弾!初のカヴァーアルバム『Re:cover』に込めた想い、そして第2弾シングル「 人間プログラム 」にまつわるお話を、Mona目線、Hina目線、それぞれで綴っていただきました。是非、楽曲と併せて彼女たちの言葉を受け取ってください。 ~歌詞エッセイ第2弾:「 人間プログラム 」~ <Mona> 全ては偶然なのだろうか。気に入っているあのメロディーも、どうしても入れたかったあの歌詞も、あの時に作っていなければ、きっと生まれていない。あの一言がなければ、きっと生まれていない。 とある夏の時期、私はある曲を書いていた。これまでのKitriにはない無機質な面白さを表現出来る曲を作ろうと思い、メロディーとピアノアレンジを考えていた。順調に進んでいたはずが、肝心の歌詞が浮かばない。自分が何を歌いたいのか考えれば考えるほど分からなくなって、何日間か険しい顔をして過ごした。 そんな、困った私を誰かが空かどこかから見ていて、そろそろヒントをあげようと思ったのだろうか。何かの会話の流れで父が「シンギュラリティって聞いたことある?」と言った。話を聞いていくと、どうやら人工知能によって私たちの未来に変化が生じるという概念のようだ。普段ならその話を素通りしてしまっていたかもしれないが、とっさに言葉が出た。 「あ、それだ!ありがとう。」 何への「ありがとう」なのかは言わないまま、急いで作詞に取りかかった。宙ぶらりんになっていたメロディーが探していた歌詞はこれだと思った。そうして、ずっと見つからなかったパズルの最後のピースを見つけ、完成したのが「人間プログラム」だ。ふとしたきっかけから、近未来的な世界観の一曲が生まれた。 無事に人間プログラムの作業も終わりに近づいていた今年の初夏、静かにもう一つの作業を進めていた。春のライブツアーが延期になって様々な予定が白紙になった後、この期間に何か自宅で出来ることはないだろうかと探していた。ライブで音楽を届けられない分、ほかの方法で音楽を届けたい。Hina、スタッフと話し合った結果、私たちはカバーアルバムの制作を始めることになった。 過去にライブや動画サイトでカバー曲を披露すると「カバーを音源化してほしい」「カバーアルバムを作ってほしい」そんな声をいただくことがあった。 「いつか作れたら」 そう思いながらもなかなか実現することができなかった。自分以外の誰かの思いがつまった大切な曲を、Kitriの声で歌ってリリースすることは、私にとって勇気のいることだった。だが、今年に入ってそういった言葉をもらうと、心の中で今までとは違った返事をしていた。 「いつかではなくて、今こそ作ろう。」 思うような活動ができずに戸惑っていた時、私自身さまざまな歌に心を動かされた。いつまでも色褪せずにそばにいてくれる名曲がどれほど勇気をくれたか。希望になっていたか。カバーを聴きたいと言ってくれた人の気持ちがよく分かった気がした。 カバーアルバム『Re:cover』のジャケットを眺めながら、リリースできた喜びを噛み締めてみる。あの時に作っていなければ、きっと生まれていない。あの一言がなければ、きっと生まれていない。日常の思いがけないところから、今度はどんな音楽を生み出せるだろう。 <Hina> 更け行く秋の夜、眠れずに永遠のリズムを刻んでいる。もう戻れない昨日のこと、そして楽しい明日のことを考えようか。いつか目的地に辿り着いた時、これが私の旅だったと振り返りたい。 先日、配信アルバム『Re:cover』をリリースした。念願だった初めてのカバーアルバムである。いつか作りたいねと話し、ぼんやりとは思い描いていたが、自粛期間中に急速に話が進み、まさかこんなに早く完成するとは。周りの方の尽力のお陰である。 この春から、多くの人の生活が一変した。より忙しくなった人もいるだろうし、暇を持て余した人もいる。気持ちが落ち込んだ人もいれば、少し心に余裕ができた人もいただろう。その全ての人に、ささやかなプレゼントを贈りたいと思ったのだ。私たちの音楽で少しでもみんなを励まし癒せたら…そんな願いがあった。 ところが、プレゼントをもらったのは私たちの方だった。なんと有難い誤算だろう。たくさんの応援や嬉しい感想の声が届き、その一言一言が私たちを喜ばせてくれる。私たちの音楽をより輝かせてくれる。このアルバムをリリースすることができたのは、紛れもなく、そうやって聴いてくれる人がいるからだ。音楽というものは、聴き手がいて初めて音楽になるのである。 そしてまた、私たちが選んだ9曲には、それを作った人や歌った人たちの大きな愛が詰まっている。そんな大切な作品たちを歌うことができた。そのことだけで頭が下がる思いだ。 沢山の人からもらった応援という名前のプレゼントは、かけがえのない宝物としていつも心の片隅に置いてある。それを眺めながら、この感謝の気持ちを歌に変え届けていけたら、と思う。 さて、そんなカバーアルバムより一足先に発表したオリジナル曲がある。「人間プログラム」だ。 日常にちょっとした快適さを求める時、AIと呼ばれるそれらに、気づかぬうちに助けられていると感じる今日この頃である。今朝はお気に入りの音楽を流してくれた。言葉を教えてもらったこともあれば、迷った時の道しるべとなってくれたこともある。 それらは、人間の知能に最大限近づけて造られているそうだ。いや、彼らが進化しながら私たちに近づいていると言った方が適切だろうか。人間の知能を完全に超えた人工知能は果たして誕生するのか。私には到底知り得ないことであるが、そんな空想の未来のようなものを歌った曲こそが、この「人間プログラム」である。 これは、リリースに至るまでかなりの時間を要した一曲である。初めてこの曲を聴いた時、Monaが既に歌詞も書いてくれていた。無論、後々ブラッシュアップという形で私も作詞に参加するわけではあるが。 <完璧を求めてみよう>から始まる歌詞に惹かれ、この近未来的な世界線にどんどん引っ張られていく感覚だった。少し怖いようで面白く、情熱と冷静さを同時に持ち合わせたこの曲は、さまざまな想像を掻き立ててくれる。私が好きな日本の小説家の一人、星新一を想起させる…と言ってしまうのはおこがましい話だが、私個人の主観では、どうしても重なってしまうのだ。彼の物語を読み終えた後、人間って良いな、と素直に感じることがよくある。この「人間プログラム」という曲も、聴き終えた後にそれとよく似た感覚をもたらしてくれる気がしている。 人間は面白い。人間には想像し創造する力がある。ただ感情の赴くままに、自分がやりたいことをし、作りたいものを作り上げることができる。何もないところから新しいものを生み出すことができる。また、感情は目まぐるしく変化し、いつどこで誰がどうなるか、全く分からない。それもまた面白いことだ。 近い将来、シンギュラリティという言葉の通り、AIが人間の能力を超える日が来たとする。それでも私は自分の意志で行動し、自分のこの手で作ることをやめたくない。心を込めるという作業を厭わず、音楽を作り続けたい。そんな暗黙の約束をMonaと交わすことができた気がするのである。この「人間プログラム」という曲を通して。 それにしても、AIというものは本当に便利である。私だけではなく、多くの人の生活を助けているに違いない。現代社会には欠かせないものだ。もっと言えば、これからもっと技術が発達し、より重要な役割をAIが担うことになるかもしれない。それも大いに素晴らしいことだ。しかし私はその恩恵に与りながらも、やはり人間らしい音楽なるものをやっていきたい。この先もずっと、それは変わらないはずである。いや、変わらずにいたいと思っている。 最後に、星新一のこんな言葉を思い出したのでここに記しておきたい。 「自分の一日を、そして一生を、人間というりっぱなおごそかな生命現象にふさわしい生き方で、足どりたしかに、かがやかしく、生きなければならない」 <Kitri> ◆紹介曲「 人間プログラム 」 作詞:Mona・Hina 作曲:Mona

    2020/09/29

  • 西片梨帆
    「黒いエレキ」ができるまで。
    「黒いエレキ」ができるまで。

    西片梨帆

    「黒いエレキ」ができるまで。

     2020年9月23日に“西片梨帆”が最新ミニアルバム『彼女がいなければ孤独だった』をリリースしました。彼女は、透明感のある声と、女性の恋愛心情の機微を表現する歌詞で同世代女性の共感を呼んでいるシンガーソングライター。今作でメジャーデビューを果たす。今後、年内は全国でのライブ展開を計画、年明けには待望のフルアルバムリリースも予定しているとのことなので、まずは是非、このミニアルバムをご堪能あれ…!    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“西片梨帆”による歌詞エッセイを【前編】と【後編】でお届け!今回はその【前編】です。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 黒いエレキ 」についてのお話。まわりと“同じでいること”を気にし過ぎてしまって苦しい気持ちを抱いているあなたへ。是非、歌詞と併せて、このエッセイを受け取ってください。 ~歌詞エッセイ【前編】:「黒いエレキ」ができるまで。~ この曲は、17歳のときに書きました。 当時の私は、高校に通いながら、 放課後の掃除当番を抜け出して、 急いで電車に乗り、ギターを背負って、 東京のライブハウスに行く日々を送っていた。 学校では、「同じでいること」を 執拗に求められる気がして、無理をしてた。 私の学校では、お昼休みに、 机をくっつけてグループになり、 ご飯を食べていたのだけど、 中には教室でひとり、ご飯を食べている人もいた。 <グループの誰かが私を嫌えば、 いつでもここからいなくなるんだろうなあ>と そんなことを考えていたら だんだん教室にいることが耐えられなくなって、 高校の残り半分は、 図書室でひとりご飯を食べていた。 窓際。中庭の緑と光が綺麗に見える席。 お昼休みに放送委員が流す陽気な音楽も 「楽しんでね、絶対」と 言われている気持ちになって、怖かった。 イヤフォンをして、 自分が好きな音楽を噛み締めるように聞いていた。 別にそんな無理はしてない、 明るくも、暗くもない曲。 そんな私にとってライブハウスで歌う日々は、 学校では教えてもらえないことを言葉ではなく、 雰囲気や感覚的に教えてくれるものだった。 ライブハウスは、照明も暗いし、 何かを諦めたような雰囲気の人もいて、 たとえば、街を歩いていたら、 だめな人だと思われるかもしれないけれど、 そんな人が、ステージで歌う姿は どんなものよりも美しかった。 誰かに自分の曲を聴いてもらいたいというよりも、 “ただ好きだから”というだけの、 半径30cmくらいの自分のための歌。 人に理解されなくても、 自分の信念を守ろうとする人。 「同じでいること」なんて どうでもいい人。 むしろきっと、 そんなことなんて気にもしていない姿が、 当時の私にはとてもまぶしく、羨ましかった。 その時の情景を残そうと思って、 書いたのが「黒いエレキ」。 この曲は、恋愛の曲だと思われることが多いですが、 自分はそういう思いで書いた曲ではなくて…。 今まで「こんな人にはなりたくない」とばかり 思っていた私が、ライブハウスで初めて見つけた 「いつかこうなりたい」と思った大人への 憧れの曲です。 <西片梨帆> ◆紹介曲「 黒いエレキ 」 作詞:西片梨帆 作曲:西片梨帆 ◆最新ミニアルバム『彼女がいなければ孤独だった』 2020年9月23日発売 COCB-54301 ¥2,300+税 <収録曲> 01. 黒いエレキ 02. リリー 03. 片瀬 04. 嫉妬しろよ 05. 23:13 06. 元カノの成分

    2020/09/28

  • フレデリック
    遊ぶ=人が一番人らしく生きてる瞬間な気もする。
    遊ぶ=人が一番人らしく生きてる瞬間な気もする。

    フレデリック

    遊ぶ=人が一番人らしく生きてる瞬間な気もする。

     2020年9月22日に“フレデリック”がNew EP『ASOVIVA』をリリースしました。今作には、リモートで制作された新曲3曲と7月に配信リリースした「されどBGM」含む4曲を収録。そして、7月18日に行なったアコースティックオンラインライブから2曲の音源を収録、初回盤CDのみ1曲がさらに加わる。フレデリックのバンドセットとは異なる、アレンジの冴え渡るアコースティックスタイルを聴いて観て楽しめる内容となっております。  さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“フレデリック”の三原康司による歌詞エッセイを2週連続でお届け!今回は 【前編】 に続く【後編】です。綴っていただいたのは今作『ASOVIVA』に通ずるテーマ「遊び」についてのお話です。子どもも大人も、これまで当たり前にできたいろんな「遊び」を自粛せざるを得ない経験をしている今だからこそ、改めて考える“遊び方”とは。そして“遊びの力”とは…? ~歌詞エッセイ【後編】~ 後編は2020年9月22日に『ASOVIVA』というEPをリリースするにあたって、「遊び」についての話。 皆さんは「遊び」という言葉にどんなイメージが湧きますか? 様々なテーマパークや娯楽施設。または「私は遊びだったのね」なんてトレンディドラマにありそうな台詞が連想されるものなのか。人によって様々なイメージがあるでしょう。 僕は幼い頃さまざまな「遊び」をしてきました。漫画も15巻以上描いたし、お昼の牛乳キャップの蓋を組み合わせて巨大なドラゴンも作ったし、無敵の勇者のつもりで公園を徘徊したりしていました。幼少期は誰しもが遊びのプロだと思います。大人になるにつれ子供の頃の想像力はすごかったと感じる。 自分はこの遊びへ向けられる創作力、誰かと共に何かを生み出そうとする好奇心や意欲、それを面白いと感じ取れる感性こそ今現在求められている能力なんじゃないかと思う。 どんな状況であっても、常に目を輝かせ物事を楽しめる「遊ぶ」という力があれば、ひとりひとりが決められたルールの中でもリラックスしながら楽しめる人生を生み出せるんじゃないかと。そんな事を考える。 遊ぶ=人が一番人らしく生きてる瞬間な気もする。 自粛期間中、ランニングで通りかかった公園の遊具には黄色いテープが張り巡らされていたのを未だに思い出す。子供の自由の象徴とされる遊び場が使用禁止になったのだ。それは大人も同じく、様々な場所で遊ぶ事ができなくなった日があった。 一番好きな事に引け目を感じずに生きれたらどれだけ幸せだろうかと思う。当たり前な日常が変わってしまった今、この「遊び」というワードにより一層希望を感じられる。そんな事を、音楽を通して伝えていけたらと思う。 <三原康司> ◆New EP『ASOVIVA』 2020年9月22日発売 初回盤 AZZS-110 ¥2,400(tax out) 通常盤 AZCS-1095 ¥1,300(tax out) <収録曲> 1.Wake Me Up 2.されどBGM 3.正偽 4.SENTIMENTAL SUMMER 5.リリリピート (FAB!!) Live at FABO!! 2020 6.ふしだらフラミンゴ (FAB!!) Live at FABO!! 2020 ― 7.終わらないMUSIC (FAB!!) Live at FABO!! 2020 ※初回盤のみ収録

    2020/09/25

  • 川村結花
    御婦人3人組の楽しげなおしゃべりが耳に届いてきたのですが…。
    御婦人3人組の楽しげなおしゃべりが耳に届いてきたのですが…。

    川村結花

    御婦人3人組の楽しげなおしゃべりが耳に届いてきたのですが…。

     2020年は、シンガーソングライター“川村結花”のCDデビュー25周年のアニバーサリーイヤー!そこで、今日のうたコラムでは、その記念企画として1年を通じてのご本人によるスペシャル歌詞エッセイをお届けいたします。更新は毎月第4木曜!    シンガーソングライターとして活躍しながら、様々なアーティストへの楽曲提供も行い、ここ数年はピアノ弾き語りのLiveをコンスタントに続けている彼女。この1年の連載でどんな言葉を綴ってくださるのでしょうか…!今回は第9回をお届けいたします。 第9回歌詞エッセイ:「 初めての君 」 1年のうちでわたしが最も苦手な猛暑の8月が過ぎやっと9月、、、と思っていたらもう第4週でした。びっくり。それでもまだ湿度もそこそこあり半袖でいることには変わりなく秋モノを着る気にはなれずなんとなくどっちつかずで中途半端な格好をしている昨今であります。そういえばいつだったか、「麻の白シャツに心ときめかなくなったら秋」と思ったことがあり、それを周りに言うと割と同意してくれた記憶があります。今まさにその感じ、そしてさっきキャメルの薄手ニットを見てほんのちょっとだけときめいたので、ほどなく秋風が気持ち良い季節がやってきてくれるのでしょう。まあでも多分引きこもり生活が続きそうなのでわたしにはあまり関係ないかもですが。 そう、まだ暫くはライブ活動再開の見通しが立てられないでいる状況なのですが、大変ありがたいことに作品提供の御依頼を続けて頂戴し、先月先々月同様に楽曲制作メインの毎日を過ごしております。 そんな中、先月リリースのアルバムー、ミラクルボイスの持ち主と称される新進気鋭の若手演歌歌手、中澤卓也さんのオリジナル・ファーストアルバム『歩み Part1』にわたしの提供作品(作詞&作曲)である「初めての君」という曲を収録していただきました。 2017年にデビューされ、今年活動4年目となる中澤卓也さん。NHKの歌謡番組などでよくその歌声を拝聴するのですが、トーンが明るくのびやかできらびやかでなにより爽やか。それでいてけっして大味にならず繊細な肌触り感もあり、ミラクルボイスという形容がぴったりという印象でした。加えて24歳の素敵好青年ということで、巷ではマダムキラーとも呼ばれていらっしゃるらしく、わたしも一度コンサートにおうかがいさせていただいたのですが、その呼び名に違わず客席中それはそれは華やいだ御婦人がたによる乙女の花園でありました(そしてコンサートとっても楽しかった)。 その日、開演前にちょっと寄ったカフェで、隣のテーブルにちょうど今から中澤さんのコンサートに参加される70代とおぼしき御婦人3人組の楽しげなおしゃべりが耳に届いてきたのですが、もう本当に中澤卓也さんのことが大好きで大好きでというのが伝わって来て、それがもう本当に乙女のようで、ああ、なんかいいなあ、こういうの、そしてこの方々がうっとりしてしまうような歌、夢見心地になってしまう歌、とにかく幸せな気持ちになっていただける歌を書かなければ!とすごい使命感が湧いてきたのでした。 そして出来た「初めての君」。3連のロッカバラードというのでしょうか、♪オンリ~~ユ~~~、みたいなオールディーズ感溢れるそんな曲がいいな、というのはもう最初からイメージとしてありました。そして歌詞はベテランの男性プロデューサーから「女性が言われてうれしくなる言葉がいいなあ」というリクエストがあり、それなら、ということで 初めてなのさ 初めてなんだ そんなにまぶしい 瞳に出会ったのは というフレーズが浮かんだのでした。 可愛いとか優しいとかセンスがいいとか、ほめられるのはもちろんうれしいこと。でももっとうれしいのはその人にとって自分は特別ということを感じさせてくれた時なんじゃないだろうかという考えに至ったからでした。「そんなこと言ったの君が初めてだよ」「そんな考え方もあるんだね、初めて知ったよ」などなど。 それは恋愛においてだけじゃなく、友人関係でも上司と部下の関係でも、同じことなんじゃないかと思うのです。もちろん恋している相手から言われたらめちゃくちゃうれしいでしょう。ただ、そんなこと言われてすっかりその気になってしまったものの、相手は別に恋愛感情で言っていたワケじゃない場合も多々あるので、そこは注意が必要なのですが。 しかし、なにしろ今回の場合は絶対的に恋愛感情でなければならず、なのでどっからどう見ても相手に恋しているということがわかる出だしの2行にしたのでした。 ということで生まれたこの曲、先述の3人組の御婦人は聴いてくださったのでしょうか。どうか聴いてくださいましたように、そして幸せな気持ちになってくださいましたようにー。 <川村結花> ◆紹介曲「 初めての君 」 作詞:川村結花 作曲:川村結花 ◆プロフィール 川村結花(シンガー・ソングライター) 大阪府生まれ。東京芸術大学作曲学科卒業。1995年、アルバム「ちょっと計算して泣いた」でシンガーソングライターとしてデビュー。同時に作詞家作曲家として楽曲提供を行い、主な提供楽曲は、夜空ノムコウ(作曲)をはじめ2019年現在までに100曲以上。2010年「あとひとつ」(作詞作曲共作)でレコード大賞作曲賞を受賞。2017年、アルバム「ハレルヤ」をリリース。ここ数年は、提供楽曲の作詞作曲も行いながら、ピアノ弾き語りのLiveをコンスタントに続けている。 オフィシャルサイト: https://www.kawamurayuka.com ◆歌詞エッセイバックナンバー 【第1回】 【第2回】 【第3回】 【第4回】 【第5回】 【第6回】 【第7回】 【第8回】

    2020/09/24

  • The Songbards
    詩というものについて僕が文章を書くのは、まだ早すぎると思っている
    詩というものについて僕が文章を書くのは、まだ早すぎると思っている

    The Songbards

    詩というものについて僕が文章を書くのは、まだ早すぎると思っている

     神戸発4人組バンド“The Songbards”が、新たな挑戦として三部作を始動させることを発表しました。そして2020年9月23日、その第一章を飾る3rd Mini Album『SOLITUDE』(ヨミ:ソリチュード)をリリース。タイトルは“孤独”を意味する“SOLITUDE”です。誰しもが経験のある、他人と自分を比べた瞬間に訪れる“孤独”にぶつかった時、それを打ち破るキッカケを与えてくれるような内容となっております。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放つ“The Songbards”の歌詞エッセイをお届けいたします。第1弾を担当したのは、メンバー・上野皓平(Vo./Gt.)。綴っていただいたのは、歌詞にも通じている“詩”についてのお話です。みなさんは、歌詞や詩を読んだとき「難しい」「わからない」「理解できないから面白くない」と感じたことはありませんか。すぐに作品から背を向けるその前に、是非このエッセイを読んでみてください…! ~歌詞エッセイ第1弾:詩というものについて~ 詩というものについて僕が文章を書くのは、まだ早すぎると思っている。それでも書いてみようと思ったのは、これを書くことで少しでもまた詩に近づけたらいいなと思っているからだ。 詩というものは、とてもわかりにくいものだ。とずっと思っていた。今でも時々そう思う。もちろん親しみやすいポピュラーな詩が世間には溢れていて、谷川俊太郎、まどみちお、茨木のり子、長田弘、金子みすゞ、相田みつを、俵万智さんなど、国語の教科書で出会ったり、おばあちゃんの家の日めくりカレンダーで知ったりしながら、少しずつ親しんでいった。しかし詩をもっと好きになろうと、少しでも背伸びをしようものなら、突如としてどデカイ壁にぶち当たる。 初めてボードレールの『悪の華』(新潮文庫 訳 堀口大學)を読んだ時だった。当時高校生だった僕は、それなりに本を読むのも好きで少々難しい文章でも注釈があれば理解できるし、どちらかというと得意な方だとも思っていた。 しかし地元のインテリアショップで偶然出くわした『悪の華』は、単語自体そこまで難しいものがなかったにもかかわらず、本当に何一つ頭に入ってこない。それぞれの単語は理解できるのに、センテンスとして何一つ理解できないという初めての感覚に、だんだん吐き気を催してきて急いで本を閉じた。ボードレールという名前はなんとなく海外の有名な詩人の一人として認知はしていて、いつかは読んでみたいなと思っていた。ただ出会うのが早過ぎたんだと思う。 本が好きで得意意識を持っていたとしても、まったくもって井の中の蛙であったことは間違いない。高校生ながら僅かに感じていた得意意識はその時に根こそぎなくなった。これだけ有名な詩人の詩集が全くもって理解できないということは、自分には詩を読む資質がないんだと落ち込んだ記憶がある。それでもなお、詩の世界を彷徨いながら拙い詞を自ら書き始めたのは、ささやかな助言に出会ったからだと思う。 僕は中学生の頃から、ピースの又吉直樹さんが好きで、たまたまテレビで見かけたあの話し方と雰囲気になんとなくシンパシーを感じていた。そして高校生の頃にちょっとした興味から又吉さんのエッセイ集『第2図書係補佐』を読んですっかりファンになってしまい、『東京百景』『夜を超える』、せきしろさんとの『まさかジープで来るとは』『カキフライが無いなら来なかった』などすっかり又吉ワールドに引き込まれていった。 どの本の中にそのメッセージがあったのか定かでは無いが、「世の中に面白くない本なんかない、自分がそれを面白いと思えるレベルに達していないだけだ」という内容の文章だった。その言葉に出会ってからは、難しいとか、面白くないとか感じた本に出くわしても、気楽にそう思えるようになっていた。そして苦手、得意という意識の枠を飛び越えてより純粋に本を愉しめるようになったと思う。 詩に関してももちろん同じことが言えると今では思っている。リルケ、ヴェルレーヌ、ブレイクなど好きになった海外の詩人にも少なからず出会ったが、ボードレールに挫折してからも、中原中也、萩原朔太郎、北原白秋、高村光太郎、宮沢賢治など何度も挫折している。それでも理解できない有名な作家がいればいるほど、いつかそれらを愉しめる時が来るはずだと考えるとワクワクしてくる。そして自分で文章を書いたり、自分で詩を書いてみたりするとまた違った愉しみを見いだすことができる。 そんなこともあって、『SOLITUDE』というミニアルバムの完全限定生産版でも初めて短編詩というものを書いてみた。 「僕」と「詩というもの」についてのストーリーの途上にある作品だと思って手にとってもらえると嬉しい。ここで書いた詩は決してわかりやすい詩ではないと思うが、理解できるか、できないかの瀬戸際で読めた時が一番ワクワクするという僕の詩の愉しみを少しでもみなさんに味わっていただけたらなと思う。 冒頭で「詩というものについて僕が文章を書くのは、まだ早すぎる」と言ったのは、どデカイ壁がこの先何枚も続いていていることを知っているからだ。背伸びし続けることでしかその壁の向こう側を見ることはできない。それでもそのことに希望を抱けたのは、一つの言葉の可能性であって、これからもその世界を音楽とともに彷徨い続けたいと思う。 <The Songbards・上野皓平> ◆3rd Mini Album『SOLITUDE』 2020年9月23日発売 完全限定生産盤CD+書籍 VIZL-1783 ¥2,300 +tax 通常盤CD VICL-65406 \1,500 +tax] <収録曲> 1.孤独と海 2.リトル・ヴァンパイア 3.Dream Seller 4.夏の重力 5.窓に射す光のように

    2020/09/23

  • 宇宙まお
    微風みたいな希望を感じられる朝が、一日でも多い人生にしたい。
    微風みたいな希望を感じられる朝が、一日でも多い人生にしたい。

    宇宙まお

    微風みたいな希望を感じられる朝が、一日でも多い人生にしたい。

     2020年9月23日に“宇宙まお”が自身初のベストアルバム『Best Moment』をリリース。今作にはインディーズ時代の楽曲やコラボレーションソング、弾き語りでの新曲を含む全17曲が収録されます。新曲「君に幸あれ」は、新型コロナウィルスの影響で卒業式などが中止になっていたことを受け、3月に宇宙まおが毎朝行っていた配信ライブの中で、ファンとコミュニケーションを取るなかで制作された楽曲とのこと。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放つ“宇宙まお”による歌詞エッセイをお届け!綴っていただいたのは、ベストアルバム『Best Moment』をリリースするにあたって、改めて振り返ってみた自身の“三つの大陸”のお話。そして、今作に収録されている新曲「君に幸あれ」に込めた想いです。是非、楽曲と併せて、このコラムもじっくりとご堪能ください…! ~歌詞エッセイ『Best Moment』~ こんにちは!シンガーソングライターの宇宙まおです。この度、デビュー8年目にして初めてのベストアルバム『Best Moment』をリリースします。バンドをやっていた学生の頃から数えると、10年以上前からオリジナル曲を書いてきたことになるのですが、まずは自分を誉めたいと思います。よくここまでこれたな! ここ最近、これまで曲を書くとき自分がどの場所に立っていたか、ということが、地図を眺めるみたいに俯瞰できるようになりました。そうすると、これまで私はギターを持って、だいたい三つの大陸を移動してきたことがわかりました。 まずひとつ目、宇宙まおの音楽が最初に産声を上げたのは、インナー大陸です。ここにいる時の私は、自分の内面を深く掘っていくことが主な仕事です。2枚目のミニアルバム、その後のファーストフルアルバムまではここで生活していました。 それから、二つ目に移動します。ソーシャル大陸です。社会のどこかのコミュニティや何かの概念のスピーカー的な役割を、歌に持たせようというチャレンジをする場所です。3枚目のミニアルバム、2枚目のフルアルバムはここで作りました。 三つ目にたどり着いたのは、ストリート大陸です。インナーとソーシャルの中間に位置しています。かつては家から学校までの通学路みたいに捉えていた空間で、馴染みは深いのになんとなく居場所がないように感じ、早足で素通りすることが多かった場所です。でも、ここが一番広い。なんでもできる。ちょっと家でも建ててみようかしら。そんなポテンシャルに気づいたのがここ2、3年で、直近のオリジナルアルバム2枚は、ここで完成させました。 常にウロウロ歩き回りながら、遠い大陸を目指す旅をしてきました。ひとつひとつの曲は、その都度残してきた自撮り写真のようなものです。背景が変わると、被写体が受ける影響も変わってきます。太陽を背負えば逆光のこともあるし、白い壁と向き合えば反射を受けることもある。フォトライブラリーをスクロールしていくと、全く印象の違う絵面が並んでいる。でも写っているのは全部、自分しかいない。しかも、自分で撮っている。ゲシュタルト的な何かが崩壊するのも、無理ないですよね? 自分ってなんだっけ? これ私だっけ? シンガーソングライターは自分に飽きないようにするのが、一番大変な仕事だと思いますわ。 そうした旅の記録が『Best Moment』です。いろんな瞬間を積み重ねてきました。どの曲が、どの大陸で作られたのか、一緒に旅をしながら聴いてもらえたらと思います。 このなかでひとつだけ、新曲を入れました。次の旅への準備みたいな歌です。「君に幸あれ」といいます。 この先の人生を、幸せに送れたらいいなって思いませんか。でも、時間の大きさが果てしなすぎて諦めそうになりますよね。一日という単位だったらどうでしょうか。「今日はいい日になりそうだな」という予感だけで、気持ちは楽になりませんか。「今日もがんばろう」とか「今日もいい日にしよう」じゃない。「なりそうだな」「なったらいいな」って、他人任せ・運任せでいいやつ。 そんな微風みたいな希望を感じられる朝が、一日でも多い人生にしたい。私は朝が苦手だから、終わらない生活にうんざりする時があるとすれば布団から起き上がる動作の最中だから(夜はなんとなく、「今日も一日なんとかやれたぜ」という謎の満足マインドに勝手に達する)。聴いてくれるあなたの“朝”を、祝福したい。 未来をイメージするとき、そこにあるのは自分自身の肉体だけじゃなく、足元には世界があり、社会がある。私に合う靴を履いて、おまじないを唱えて、私の意思で歩いていきたい。明るい未来、私たちはどこの大陸を、踏みしめているのだろうか。 <宇宙まお> ◆ベストアルバム『Best Moment』 2020年9月23日発売 MUCD-1461 ¥2,800(tax in) <収録曲> 1.ロックの神様 2.満月の夜 3.あの子がすき 4.声 5.哀しみの帆 6.夢みる二人 7.無限の力 8.サボテン 9.UCHU TOURS 10.ヘアカラー 11.ベッド・シッティング・ルーム 12.涙色ランジェリー 13.愛だなんて呼ぶからだ 14.電子レンジアワー 15.もう踊れない 16.東京 17.君に幸あれ(弾き語り新曲)

    2020/09/18

  • ヒグチアイ
    太陽の指輪。
    太陽の指輪。

    ヒグチアイ

    太陽の指輪。

     2020年9月2日に“ヒグチアイ”が自身初のベストアルバム『樋口愛』をリリースしました。彼女は、静と動が混在するスリリングなライブステージで、聴く者に呼吸することを忘れさせてしまうくらいの表現力持ったアーティスト。自身の活動キャリアから名曲の数々を選りすぐった作品となります。新曲「八月」「東京にて」の2曲も収録…!  さて、今日のうたコラムではそんな最新作をリリースした“ヒグチアイ”による歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回は 第1弾 、 第2弾 に続く最終回です。綴っていただいたのは収録曲「 東京にて 」に通ずるお話。この歌詞の背景を、想いを、リアルを、是非彼女の言葉から感じてください。 ~歌詞エッセイ最終回:「 東京にて 」~ 東京のビルがこんなに高く伸びるのは、たくさんの人間のエネルギーを吸っているからだ。人がいなくなれば養分が摂れなくなって、そのビルは倒れてしまう。 人間は、生きているだけで何年も何十年も内臓を腐らせない。死んだら、数日なのに。だから、生き続けるってことは、すっっっっごいことなんです。みんなが思っている以上に。 高校生のときに、家で生まれたウサギがいた。繁殖させようとしたつもりもなく、ただいろんな偶然が重なって、家で妊娠したウサギはわたしが受験勉強をしているときに子どもを産んだ。生まれた子どもたちの中でとても小さく、身体が弱かった1羽をうちで引き取ることにした。 名前はむう。夢宇。どキラキラネームをつけた。 むうはわたしと共に上京し、一緒に暮らしていた。昔の彼氏がくれたBOSEのヘッドフォンを噛みちぎったり、わたしが歌詞を書いた紙を食べて、なんて書いてあったのかわからなくさせた。ウサギに怒ったってわからないだろうし、ストレス溜まるだけだろうから、ということで、一切怒ることはなかった。その分過剰に可愛がることもないし、悩みを聞いてもらったり、慰めてもらったなあ、という経験もない。お互いに、自由に暮らしていた。 その後、彼氏と同棲することになり、その彼氏はアレルギーがあったので、むうと一緒に引っ越すことができなかった。友だちがお世話を引き受けてくれるということで、その友だちにむうを譲った。それ以来、むうに会うことがなかった。 何ヶ月か前に、むうが死んだ。ウサギの中ではかなり長生きだったらしい。病気もなかった。途中から飼ってくれてた友だちが定期検診に連れて行ってくれたり、よくお世話をしてくれたから、ここまで生き延びたのだと思う。 どこかで、むうを捨てたんだ、という記憶が残っている。ちゃんと愛してあげた記憶がない。今更感じてもしょうがない後悔が入道雲のように膨れ上がっていった。 その友だちに話をした。そうしたら「小さなときにストレスを感じてなかったからここまで生きてこれたんじゃないかな、ってお医者さんが言ってたよ」と教えてくれた。 わたしは、後悔を背負っていくしかない。消えることはないから。でも、その後悔のせいで足を絡めとられてはいけない。歩く力がなくなってはいけない。 太陽のような指輪を作ってもらった。その中に、むうのちいさな遺骨が入っている。今では、たくさんの後悔も、わたしを照らしてくれる太陽になっている。 <ヒグチアイ> ◆紹介曲「 東京にて 」 作詞:ヒグチアイ 作曲:ヒグチアイ ◆BEST ALBUM『樋口愛』 2020年9月2日発売 TECG-33130 ¥3,000-(tax out) <収録曲> 1. ココロジェリーフィッシュ 2. 前線 3. 東京 4. まっすぐ 5. わたしのしあわせ 6. ラジオ体操 7. 猛暑です- e.p ver - 8. 八月(新曲) 9. 黒い影 10. わたしはわたしのためのわたしでありたい 11. 最初のグー 12. 備忘録 13. 東京にて(新曲)

    2020/09/17

  • ちゃんみな
    “美”に支配される。
    “美”に支配される。

    ちゃんみな

    “美”に支配される。

     2020年9月9日に“ちゃんみな”がニューシングル「Angel」をリリース。全4曲が収録される今作。タイトル曲「Angel」はラテン調のギターのリフが印象的なサマーチューンで、エナジードリンクブランド『モンスターエナジー』の新商品“モンスター ウルトラパラダイス”とのタイアップ曲となっております…!    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“ちゃんみな”によるスペシャルエッセイを【前編】と【後編】でお届け! 【前編】 に続く【後編】で綴っていただいたのは、音楽にも通ずる面がが多いという“美”についてのお話。他人の理想の美や、自分の理想の美に囚われすぎているあなたへ、彼女のエッセイと音楽が届きますように。 ~歌詞エッセイ【後編】:“美”に支配される~ 時々、一体何人の人間が自身の美の欠落に絶望をして自ら命を絶ったのだろうと考える。 私が思うに美しさというのは、音楽と共通するところが沢山ある。どちらも奥が深すぎて、一時はとんでもなく楽しくて癒されるものだが、それを追求していけばいくほど、抜け出せなくなり、深海よりも深くて謎めいたところから睨み返される。とても恐ろしいものだ。美しさと、芸術、芸事、アートは切っても切れないものがある。 じゃあ、美しさとは一体何か。もちろん種類は沢山ある。感情的な美しさ、外見的な美しさ、内側に秘める美しさ、自然美、植物美、動物美、刹那美、儚い美、グダグダな美、淫らな美...つまり、生きていると普通に数々の美に触れている。 問題なのは、常に問題になっている事。それ自体が紛れもない問題だ。 今回は人間美について考えてみた。まずは、人間の内側の美について話そう。私が人間としての美しさ、つまり魅力を感じる部分については沢山ある。純な心を持ち、自分の色を理解できている、人に歩み寄れる、何かを信じている、何かを生み出せる強さがある、などなど。でもそんなのは正直、10割で来られるとしんどいものがある。つまらない。出来すぎている事が美しいかといったらそうでもないし、人間の特性によりけりで、それを持つものの人格と心とが重なりバランスが整ってやっと美しい。いや、さらに言えば、その全てのバランスが整った人間が私に出会って、やっと、やっと美しいんだ。 何でって、だって、今まで散々言ってきた事は全て私の「好み」に過ぎないからだ。だからこそなのか、こういう話は、合う、合わない、という表現をされる事が多い。 本題は、人間の外見の美しさについて。これは内面に比べて、それこそ「好み」が浮き彫りになるし、わかりやすい。何と言っても、人間の第一印象、窓口になる。地球上には色々な骨格、肌の色、目の色、があるにもかかわらず、好みがどうとかを置いておいて、単純にストレスが多いのも事実。 ここ最近は、SNSに簡単に顔を上げられて簡単に裁判台に上がる事ができる。それと同時に私たちは、簡単に人の顔を見ることができて、簡単に裁判長になれる。他人の美の理想に押し潰されそうになったり、自身の美の理想に押し潰されそうになったり、なんだったら自分の美で他人を押し潰そうとしたり。とにかくみんなペッシャンコだ。 私もその一人。私は人に比べて、小さい頃から私が美しいか美しくないかを目の前で意見される事が多かった。物心がついた時からクラシックバレエをやっていたり、ヒップホップダンス、芸能事務所のオーディションを受けまくりの幼少期。芸事にどっぷりはまり、とにかくステージが大好きだった。 でもステージには、そのようなジャッジが付いて回る。他人の好みに支配される事は多々ある。そこから高校生ラップ選手権に挑戦し、メジャーデビューを果たし、今の今まで一体何万回美しくないと言われ、何万回美しいと言われたかわからない。 私の場合は、自身の美の理想にペッシャンコになった。その理想というのは、他人からも自分からも作られているものだった。とにかく人生で何度も、痩せたり太ったりを繰り返した。自分好みの美になるために。そしてこれは矛盾しているのだけど、他人にもそれを認めて欲しかった。 今思えば、何をやってもね、どんな見た目でいようが、人の好みがある限りは好きとか嫌いとか言われてしまうんだよ。そんな世の中は悲しいけど、自分に好かれるには“好き”を増やしていくことしかないと思った。前回のエッセイの、人を許せる時に自分も許せると同じで、人を好きになる時に、自分も好きになれるのだと、私は思う。 どんな見た目の人間も涙が出るほど美しい、そう心から思えた時にはもう、私の心は私に夢中になっていた。女として生まれた私の体や顔、表情には、沢山の知識と経験が詰め込まれている。人が私を美しいと認めてくれる事も諦めたわけじゃない。自分の理想の美が、紛れもなくこの私である事を信じている。もちろん、たまに疲れる時もあるけど、その時は、休もうと思う。 必死になりすぎると、自分の顔に刃物を刺したくなるような気持ちになる事もある。そう思った事がある人は少なくないと思う。美しさには、音楽同様正解がない。あるのは、好みだ。その好みというのが厄介者だが、私たちはそれよりももっと寛大だと信じている。 これからも、そんな美しさと音楽を作っていきたい。 <ちゃんみな> ◆New Single 「Angel」 2020年9月9日発売 初回限定盤 WPZL-31771 ¥2,300+税 通常盤 WPCL-13226 ¥1,300+税 <収録曲> M1. Angel M2. Very Nice To Meet You M3. Rainy Friday M4. As Hell

    2020/09/16

  • フレデリック
    顔が同じではない双子が同じ生き方を選んだ話。
    顔が同じではない双子が同じ生き方を選んだ話。

    フレデリック

    顔が同じではない双子が同じ生き方を選んだ話。

    2020年9月22日に“フレデリック”がNew EP『ASOVIVA』をリリースします。今作には、リモートで制作された新曲3曲と7月に配信リリースした「されどBGM」含む4曲を収録。そして、7月18日に行なったアコースティックオンラインライブから2曲の音源を収録、初回盤CDのみ1曲がさらに加わる。フレデリックのバンドセットとは異なる、アレンジの冴え渡るアコースティックスタイルを聴いて観て楽しめる内容となっております。  さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“フレデリック”の三原康司による歌詞エッセイを2週連続でお届け!今回は【前編】です。まず綴っていただいたのは、フレデリックというバンドの軌跡。そして今作『ASOVIVA』が誕生するまでの想い、これまでと今とこれからの意志についてです。『ASOVIVA』を堪能するその前に是非、このエッセイをじっくりお楽しみください…! ~歌詞エッセイ【前編】~ とあるラジオ収録の前、駅近のカフェに入った。このコラムを書く為アイスコーヒーを頼み居座るという魂胆で。そういえばカフェに入ると決まってコーヒーを頼む。もう習慣付いて他に手を伸ばしてない事に気づき意欲的じゃないなどとグラスの水滴を拭きながら考えてた。 何を書こうか、まず自己紹介させていただくと自分はフレデリックというバンドで作詞作曲をし、ベースを弾いている。 今回少し歌と兄の話をしようと思った。 なぜ兄なのかというとフレデリックというバンドは実の兄である健司がボーカルで我々は双子である。双子と聞くと真っ先に想像するのは同じ顔。しかし自分達は二卵性双生児という顔が似てない双子である。誕生日が同じ兄弟のようなもの。そんな兄に誘われこのバンドが始まった。 結成当初、ボーカルの椅子は奪い合いました!双子同じ考えなので!という面白エピソードもなくパートは決まっていた。同じ日に生まれ、同じ環境で育った僕らは心と体の成長と共に性格や考えにも違いが出て、健司は「歌」自分は「作り手」という自分らしさをすでに磨いていたからだ。だから話は早かった。 話は現在に戻り今年2月下旬、バンドは全国ツアーを経て二度目のアリーナ公演を演った。その直後、状況は変わり緊急事態宣言が発令された。そこで自分達なりにすぐさま行動し制作した作品が今回の2020年9月22日リリース『ASOVIVA』というEPだ。 制作前、この春に緊急事態宣言が出てリモートでの話し合いの中、健司の発した言葉に感銘を受けた。「俺らは音楽を絶やさないよう届けよう」という些細な一言。その言葉から感じる姿勢は長年のライブステージでの立ち姿と同じだった。 そこからEPの制作が始まった。こちとらその姿勢を見せられたなら頑張っていい曲作ってやんよという闘争心みたいなものも生まれてくる。これは兄弟ながらなのか。ひたすら歌について考える。そして完成が近づき健司の歌声が入る瞬間、いつも景色は変わるのだ。 そんなお互いの居場所を理解して違いを認め楽しみ尊重し生きてきた自分達は、同じになんてならなくていい、ということを感じてきた。人との違いを楽しみたいと常に思ってる。混乱した時、人は人を傷つける、違いを認められないから。それぞれ個性が合わさってひとつになる素晴らしさを知ってる自分達だからこそ、この「個性」を絶やさず音楽にするんだとも思う。 そんなこんな書いてるうちにラジオの時間が迫る、これから健司と2人だ。よくあがるラジオネタの双子あるあるを違う顔で笑いながら和気藹々と話すと思う。次カフェに来た時はいつもと違うドリンクを頼もうと思う。 <三原康司> ◆New EP『ASOVIVA』 2020年9月22日発売 初回盤 AZZS-110 ¥2,400(tax out) 通常盤 AZCS-1095 ¥1,300(tax out) <収録曲> 1.Wake Me Up 2.されどBGM 3.正偽 4.SENTIMENTAL SUMMER 5.リリリピート (FAB!!) Live at FABO!! 2020 6.ふしだらフラミンゴ (FAB!!) Live at FABO!! 2020 ― 7.終わらないMUSIC (FAB!!) Live at FABO!! 2020 ※初回盤のみ収録

    2020/09/15

  • Kitri
    もう会えない人に夢の中で逢えることができたなら。
    もう会えない人に夢の中で逢えることができたなら。

    Kitri

    もう会えない人に夢の中で逢えることができたなら。

     姉のMonaと妹のHinaによる、ピアノ連弾ボーカルユニット“Kitri”が、3作連続配信シングルをリリース!6月には第1弾、初のバラードシングル「Lily」を配信リリース。8月には第2弾、シャッフルビートでロックな味わいのシングル「人間プログラム」をリリース。10月にはどのような楽曲がリリースされるのが、お楽しみに…!是非、彼女たちの心の奥底に刺さるリリックと癒しの歌声をご堪能あれ…!    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放つ“Kitri”による歌詞エッセイを第1弾~第3弾でお届けいたします。今回はその第1弾!3作連続配信リリースが決定してからの想い、そして第1弾シングル「 Lily 」にまつわるお話を、Mona目線、Hina目線、それぞれで綴っていただきました。是非、楽曲と併せて彼女たちの言葉を受け取ってください。 ~歌詞エッセイ第1弾:「 Lily 」~ <Mona> 一度で終わらない楽しさが好きだ。映画のエンドロールの後におまけの映像があると期待が膨らむし、初めて行くお店でランチをしたらデザートも味わってみたい。スタンプラリーで未完成のカードを眺めて次はどこへ行こうかと考えるのもやってみたい。 6月、Kitriにとって初めての配信シングル3作連続リリース企画がスタートした。この企画を考えていた寒い冬の頃は軽やかな気持ちだったことを覚えている。「面白そうですね。早く発表したいなぁ」なんて言ってスケジュール帳にリリース日を書き込んでいた。 そんな中、今まで当たり前にあった日常は少しずつ形を変えていき、花の香りがしないまま春が過ぎた。自然とこの連続配信企画の持つ意味合いと私の気持ちは変化していた。辛い思いをしている人や音楽で癒しを求めている人に、ほんの少しでも楽しい時間を届けたい。3度味わってもらえるこの企画が誰かの小さな希望になればと願いながらリリースを迎えた。 第一弾の「Lily」 百合の花をイメージしたこの曲は、百合の開花時期に合わせて6月のリリースとなった。ストリングスアレンジを担当して下さった網守将平氏、演奏で参加していただいた吉田篤貴カルテットの皆さんの手によって美しく幻想的な音楽へと昇華し、初めて完成した曲を聴いたときは鳥肌が止まらなかった。 人生は、出会いがあれば別れがある。これまで色々な歌の中で聴いてきたし、どこかで誰かに教わったこともある。節目節目で自分自身も体験してきたはずだ。それなのに、これまで別れを知らなかったかのように、自分ではどうすることもできないようなやりきれない気持ちになる時がある。 そんな時、誰かに思いを打ち明けると言うよりは黙々と時間が過ぎるのを待つ。それでもどうしようもない時はピアノに触れてみる。ピアノは聞き上手だ。作曲で上手くいかない時は無言で待っていてくれるし、ちょっとデタラメな即興ソングも許してくれる。それでいて話し上手でもあって、私の気持ちを驚くほど素直に音で表現してくれる。素敵な友達だ。 確かあれは暑い夏の日だった。私は無性にピアノに話しかけたくなって、心のおもむくままに音を鳴らしてみた。言葉は発さなかったけれど、なんだか痛みを感じる音だった。思うままに続けて弾いた。後に「Lily」のイントロ部分となるそのメロディーは、その時の私にとって、悲しみを掬い上げるような音だった。 ふいに生まれたこのメロディーを音楽として形にしたいと思った。その日のうちにワンコーラスを仕上げて、すぐにHinaに聞いてもらった。この曲において私は全てをメロディーに落とし込んでいて、歌詞が浮かばなかった。というより、普段から自分の思いを静かに秘めているHinaなら、このメロディーにぴったりな歌詞を書いてくれるだろうと思っていた。曲を渡した翌日には歌詞を書き上げてくれた。 「もう会えない人に夢の中で逢えることができたなら」 私はこんなことが言いたかったんだなと、Hinaの歌詞が教えてくれた。普段、私たちは滅多にお互いの感情を伝え合うことをしないけれど、音楽の中で思いを共有でき、繋がりあっていることを感じた。 小さな部屋で生まれた曲を、遠くにいる誰かが受け取ってくれる。もしかしたら、たった今誰かが聴いてくれているかもしれない。私にとって、すごく特別なことだ。私も改めてこの曲を聴いてみよう。もしまたやりきれない気持ちになった時、今度はそばにピアノとこの歌がある。 <Hina> 「メロディはまさに音楽の花である。」どこかの作曲家がそう言ったらしい。それを実感する出来事が私にも訪れた。 ある夏の昼下がり、季節の変わり目で風邪を引き、ぼんやりしていた私の寝床に新しいメロディが舞い込んできた。柔らかく流れるピアノと透き通った歌の旋律。「綺麗」という言葉だけでは飽き足らず、「優しい」と形容するには物足りない。まさに、ひとひらずつ舞う花のようで、その儚さに私は一瞬で魅了された。あの日のことは、未だに強く記憶に残っている。 それはそうと、いつもMonaから新曲を聴かせてもらう時は、どうしようもなく胸が高鳴る。どんな音だろう、どんな言葉を書こう、どんな気持ちを込めようか、と様々な想像を巡らす楽しいひと時である。 中でも「Lily」は、私の琴線に直接触れてきた曲であり、その空気感や雰囲気を掴むのは容易いことだった。 揺れるカーテン。隙間から溢れる光。もう会えない誰か。会えるのではないかという期待。温かい思い出。そうした一つ一つを、生命の美しさとともに表現するべく、丁寧に慎重に言葉をのせていった。あくまでも情景とそこにある愛のみを描いてみよう。心情は聴いてくれる人それぞれに任せることにしようか。そんな風にして、この曲の歌詞が完成していった。まるで一枚の絵画を見ているようだ…そんな感覚に陥ってもらえれば、こちらの思う壺である。 時が過ぎ、いよいよ本番レコーディングの日。ただひたすら祈りを込め、歌を重ねた。聴いてくれる人の心に響いてほしい、今はいない誰かにも届いてほしい、と考え目を閉じる。そこから先は何も思い出せないほどに集中していたようだ。ありったけの精神を歌に注ぎ込んだことだけは確かである。 出来上がった音を聴きながらリリースを待ち望み、新しい春を迎えた私たち。新型コロナウイルスの影響に伴い、世界中のあちこちで不安が募る日々が始まった。人に会うことはおろか、外に出ることさえ大きな緊張を強いられる状況。ツアーも延期となり、少しばかりの空白ができてしまった。 そんな今、自分にできることは何かと考えてみたが、何のことはない。答えはとてもシンプルに、音楽を届けることだった。待ってくれている人に楽しんでほしいという思いは、より強まっていた。そうして二か月に一度、新しい曲を配信することとなった。嬉しかった。音楽を届けられるということが。それまで当たり前だったことも、全てが有難いことだったんだと分かり、思わず手を合わせた。また楽しみがひとつ増えた。 3作のうちの第一弾が「Lily」。百合の花にちなんだタイトルから、初夏に聴いてほしい曲だと感じていたため、ちょうど良い時期にリリースできたと思っている。 近頃は大切な人と会うのが少し難しくなった。それでも大切に思う気持ちがあれば、心の中でいつでも会えるということ。その人と過ごした時間や思い出が空白の時間をも彩ってくれるということ。今だからこそ届けたい想いを沢山閉じ込めたこの曲が、誰かの元で、その人なりの愛を感じてもらえる音楽になっていればいいなと願う。 リリース後、色んな人から貰った嬉しい言葉たちを何度も思い返し、噛み締めている。胸が一杯になりつつ、今日もこの曲を聴いてみようと思う。 <Kitri> ◆紹介曲「 Lily 」 作詞:Hina 作曲:Mona

    2020/09/14

  • ちゃんみな
    最悪の質問。
    最悪の質問。

    ちゃんみな

    最悪の質問。

     2020年9月9日に“ちゃんみな”がニューシングル『Angel』をリリース。全4曲が収録される今作。タイトル曲「Angel」はラテン調のギターのリフが印象的なサマーチューンで、エナジードリンクブランド『モンスターエナジー』の新商品“モンスター ウルトラパラダイス”とのタイアップ曲となっております。是非、今のちゃんみなが表現する4曲をご堪能あれ…!    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“ちゃんみな”によるスペシャルエッセイを【前編】と【後編】でお届け!【前編】のタイトルは「最悪の質問」です。多くのインタビューを受けるなか、彼女が“最悪の質問”だと感じるものとは? その理由とは? そして、音楽と共に生きるにつれ、徐々に見つけつつあるひとつの答えとは…? 今作『Angel』に通ずる想い、受け取ってください。 ~歌詞エッセイ【前編】:最悪の質問~ 六本木にあるデッカイビルの最上階 目を精一杯吊り上げたメイクに ブランド物で着飾った私は混乱を隠せずにいた。 『この作品はどういう方に聞いてもらいたいですか?』 「えーと。。」 『どうしてそんなに強くあれるのですか?』 「えぇそんな」 『アーティストを目指したきっかけを教えてください』 「えっとですね、、、」 『目指しているアーティストは?』 「んー、、」 『ラッパーになったきっかけは?』 「、、、」 何十本目かのインタビュー これはどれも私にとっては最悪の質問だ。 いや、もちろんインタビュアーさんが悪いわけじゃない 最悪だ、、と思う理由がある その理由は 自分でもサッパリわからないから。 かといって性格上“適当”な回答は出来ない。 もちろん、答えを探そうと あらゆることをしたし行動もしてきた でも、わからないものはわからない。 時々、いつから人間の頭の中は言葉ではっきりと 表現ができるようになったというの? という疑問を抱きしめて一緒にベットに入る。 そして付き合いたての彼氏のように 次の日の朝、昼、夜、長い時は一週間 ソイツは私の側に居座る。面倒くさい。 あの“最悪の質問”に何も考えずに答えるならば 私の作品は誰に聞いてもらいたいとかは別に無いし、 強いかなんて自分ではわからないし アーティストになりたい!とかは 物心がついた時には思っていたし 目指してるアーティストなんていないし、 ラッパーになったというよりかは みんなが私をラッパーと呼ぶから、、だよ、、。 というなんとも性格の悪い回答になってしまう。 もしかしたらもう少し大人になったら、 必然と正しい回答がわかるのかもしれないが 今のところ、これが真実なんだー!!と投げやり気味。 でも私はそんな悩みと長いお付き合いをしながら、 ゆっくりと答えを見つけている。 こんなことがあった とっても冷たい雨が降っていた秋の終わりの事 ハロウィンあたりだったかな。 その時に交際していた彼とちょっとした喧嘩をした。 彼の家を出て、自分の家に帰っている途中 ハロウィン明けで汚れている町を見て 隅の少し、ほんの気持ち、綺麗な場所に 無性に行きたくなった そう思えば、さっき私を追いかけてくる彼を 追いのけて向かった先は家とは逆方向だったな そのまま町の隅のベンチに座って その日のリハーサルで たまたま持っていたギターを出した 自分の今の感情に合ったコードを鳴らして、 デタラメな歌を歌った。 その時はじめて、私は自分が傷ついている事と、 裏切られた事、悲しい事、彼を好きな事、に気付いた。 変かもしれないが、私はそうやって自分を知る そうやって、自分の感情を確認する 音楽の力を借りて。 恋愛に限らず、仕事、友情、人付き合い、人間関係、 全ての事から感じる感情の連絡口が音楽だ。 ハッピーな事も、悲しい事も、悔しい事も その時によって音楽のジャンルも違う。 同じ状況なのにHIPHOPの時もあればROCKの時もある さっきラッパーと呼ばれるのは、、 みたいに言ったけどそういう事じゃない 限られたくないだけなんだ。 生涯の感情を一つに絞れない。 これを読んでいる人は、 ゲ!気持ちわる!ロマンチストすぎ!とか 思うかもしれないが、そう思われてもおかしくない だってそうなんだもん。好きに呼べばいい。 ある意味、音楽をしていない時の私は、 無というか、不感というか、大丈夫というか、、 もしかしたら、そういうところを 人は強いと思ってくれるのかもしれない 知らないけどね 時に、初対面の人には、 いきなりキレたりする人かと思ったとか言われるけど そんな事ない。キレないよ、普通に。 そんな風に思われているのか、、と たまにガッカリするけど 正直、ああいう歌書くし性格もちょっぴり悪いと思う。 でも、これについて私が曲を作るとなると どんな感情が出てくるかはわからない。 ビックリ箱と一緒だね。 私には、頭の中や心の中をアートなしで、 言葉だけで伝えるのは難しいし面倒くさい でも自分の中身に興味を持たれる事は死ぬほど嬉しい。 今では、自分の中身と外見のギャップを楽しんでいるし 愛してやまない。 一年前は、そうじゃなかった どの作品も二面性が出てしまい また、作品と私自体とのギャップもある それが一年前の私には許せなかった。 でも、いつの間にか人を許せるようになったのと同時に 自分を受け入れ、自分の許しを貰えた。 人間味が1番出るであろう恋愛よりも 私にとっては音楽が1番人間味がダダ漏れなんだろう。 私の曲の中でも恋愛の曲が多い印象を 受ける人は少なくないと思う 中には、恋愛の曲のつもりで書いてないのに そう聞こえる曲も多いはずだ。 それは、そもそも私が音楽に 惚れ込んでいるからなのかもしれない。 いつも私の心の代わりになってくれて有難う 最悪な時も、側にいてくれて有難う 天使のように形が無く、簡単に人間を魅了させ 悪魔のように簡単に人間の人生を狂わせる あぁ音楽が大好きだ。 そんな事を思いながら雨の夜 今作『Angel』を創り上げた。 <ちゃんみな> ◆紹介曲「 Angel 」 作詞:ちゃんみな 作曲:ちゃんみな・Ryosuke“Dr.R”Sakai ◆New Single 「Angel」 2020年9月9日発売 初回限定盤 WPZL-31771 ¥2,300+税 通常盤 WPCL-13226 ¥1,300+税 <収録曲> M1. Angel M2. Very Nice To Meet You M3. Rainy Friday M4. As Hell

    2020/09/11

  • ヒグチアイ
    備忘録。
    備忘録。

    ヒグチアイ

    備忘録。

     2020年9月2日に“ヒグチアイ”が自身初のベストアルバム『樋口愛』をリリースしました。彼女は、静と動が混在するスリリングなライブステージで、聴く者に呼吸することを忘れさせてしまうくらいの表現力持ったアーティスト。自身の活動キャリアから名曲の数々を選りすぐった作品となります。新曲「八月」「東京にて」の2曲も収録…!  さて、今日のうたコラムではそんな最新作をリリースした“ヒグチアイ”による歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回は 第1弾 に続く、第2弾です。綴っていただいたのは収録曲「 備忘録 」に通ずるお話。この歌詞の背景を、想いを、リアルを、是非彼女の言葉から感じてください。   ~歌詞エッセイ第2弾:「 備忘録 」~ 「俺、25歳で売れてなかったら死ぬww」と言っていた大学の同級生は、30歳になった今、音楽をやめて結婚をして子どもができて、順風満帆に暮らしている。 当時、19歳のわたしは、大学のジャズ科に通いながらポップスを歌っていたので、先輩には白い目で見られていたし、先生には「お前の声はジャズ向きだからジャズシンガーになれ」と言われていた。天邪鬼なわたしは、絶対にポップスで売れてやるのだと思いつつ、売れなかったら死ぬと言えばその言葉に首を絞められるだけだから、とのらりくらりと話をかわしながら、内なる炎を消さないように歌を歌い続けてきた。 きっとあの頃も変わらず、冷めていたのだと思う。遡れば中学生の頃から冷めていた。ずっとここじゃないどこかに行けば、みんなみたいに笑い続けられる居場所があるんだと思ってた。 悲しいけど、そんなユートピアは存在しない。そこに行きたいのなら、今いるその地を開拓するしかない。汗水垂らして、自分の力で、作っていくしかない。しかもそれは、いとも簡単に壊れてしまうアンバランスな国だ。 冷めていることは、なにも良いことじゃない。(と今は思う。今後変わるかもしれない。) いつでも面白いと思うハードルは下げておくべきだし、何事にも前のめりでいるべきだ。売れてなかったら死ぬ、って言ってしまえば、死ぬ気で売れようとしたかもしれない。今となっては、全て過ぎてしまったことだけど。 わたしは、言葉にがんじがらめにされることがこわい。最近はSNSでの誹謗中傷問題がよく話題にあがるけど、わたしからしたら、発した言葉に支配されないで済むことが信じられない。誰かに向けた言葉を一番近くで聞いてるのは自分なのに。言葉として自分から離れても、なかったことにならないことなんて、自分が一番よく知っているはずなのにね。 言葉を使う代わりに使われている。なんか等価交換のようで、わたしにはしっくりくる職業である気がする。ソングライターってのは。 <ヒグチアイ> ◆紹介曲「 備忘録 」 作詞:ヒグチアイ 作曲:ヒグチアイ ◆BEST ALBUM『樋口愛』 2020年9月2日発売 TECG-33130 ¥3,000-(tax out) <収録曲> 1. ココロジェリーフィッシュ 2. 前線 3. 東京 4. まっすぐ 5. わたしのしあわせ 6. ラジオ体操 7. 猛暑です- e.p ver - 8. 八月(新曲) 9. 黒い影 10. わたしはわたしのためのわたしでありたい 11. 最初のグー 12. 備忘録 13. 東京にて(新曲)

    2020/09/10

  • ひかりのなかに
    どんだけ絶望したって落ち込んだって孤独を感じたって。
    どんだけ絶望したって落ち込んだって孤独を感じたって。

    ひかりのなかに

    どんだけ絶望したって落ち込んだって孤独を感じたって。

     2020年9月2日に、東京出身スリーピースロックバンド“ひかりのなかに”が新曲「ムーンライト」をリリースしました。今作は6ヶ月連続配信リリースの第三弾です。現在18歳のひかりのなかにが、大人には語れない、大人になる前の葛藤を描く心情を歌った等身大の楽曲となっております。是非、その歌詞をじっくりとご堪能ください…!  さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“ひかりのなかに”のヤマシタカホによる歌詞エッセイを3ヶ月連続でお届けいたします。今回はその第1弾!綴っていただいたのは、新曲「 ムーンライト 」に通ずるお話。容姿、思想、環境、現状、様々な面で“他人”と“自分”を比べてしまう。そんなあなたに読んでいただきたいエッセイです。 ~歌詞エッセイ第1弾:「 ムーンライト 」~ 今回から『今日のうたコラム』にて 僭越ながら文章を書くこととなりました。 ひかりのなかにのヤマシタカホです。 先日私達は「ムーンライト」という曲を リリースしたんですがこの曲について お話ししようかなあと思っています。 皆さんは「他人」のこと、気になりますか? 私は死ぬ程気になります。 それは、容姿からはじまり 内面的な部分、技術的な部分 全てにおいて比べたがる節があって、 自己肯定感というものがいつの日か 欠落してしまったが故に、 自信なんて湧いてこなかったんですが この考えが最近少しだけ変わってきました。 具体的になにが変わったかというと 勿論、根は変わらず深夜に何時間も同じことを 考え込んだりする性格のままなんですが この行動も全て 「この後、自分にいい作用をするんだ」 ということに気づけたんです。 過去に悩んでいた悩みは どれだけ時間がかかったとしても 必ず昇華されて 私の場合そのおかげで書けた曲があったり 他人を意識することによって 気づかぬうちに本当は過去の自分よりも より理想的な自分に近づけていたり、と もう頭がかち割れるくらいに悩んで 時には泣いたりしながら考え込んだ全てに 無駄なことなんて一度もなかったなと 思えるようになってきました。 今回リリースした「ムーンライト」は そんな考え方にやっとなれた私が 過去の私へ向けて書いた曲です。 思春期を過ぎたとて悩みは尽きないし むしろ困難なことばかりで ひとつもうまくいかない日だって めちゃくちゃある、 もうどうしようもなくなる日もある。 でも どんだけ絶望したって 落ち込んだって 孤独を感じたって その全てが未来の自分に良く作用する 出来事に昇華していくはずだと信じて グッと踏ん張って 一緒に頑張っていきましょう、!  それでも負けてしまいそうになったら ひかりのなかにはいつでも味方でいるので 音源なり、映像なり ライブなり、逃げてきて下さい 全力で受け止めにいきます。 これを読んでる皆々様が 「ムーンライト」という曲で またひとつ、強くなれますように。 <ひかりのなかに・ヤマシタカホ> ◆紹介曲「 ムーンライト 」 作詞:ヤマシタカホ 作曲:ヤマシタカホ

    2020/09/09

  • サイダーガール
    産まれた瞬間に生き方が決まるなんてたまったもんじゃない。
    産まれた瞬間に生き方が決まるなんてたまったもんじゃない。

    サイダーガール

    産まれた瞬間に生き方が決まるなんてたまったもんじゃない。

     2020年9月2日に“サイダーガール”が両A面ニューシングル『落陽/ID』をリリースしました。ドラマ『おじさんはカワイイものがお好き。』の主題歌として書き下ろされた「落陽」は、内なるエナジーを最大限にぶつけた、疾走感あるロックチューン。アニメ『炎炎ノ消防隊 弐ノ章』エンディング主題歌として書き下ろされた「ID」は、理想と現実の葛藤を抱える不器用な自分も、いつか愛せるようにと希望を込めた、ミドルテンポの優しいメロディが心地よい楽曲。サイダーガールの魅力を存分に詰め込んだ一作です…!  さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“サイダーガール”による歌詞エッセイをお届け 【前編】 に続く【後編】は、メンバー・Yurinが執筆。綴っていただいたのは、新曲「 ID 」にまつわるお話です。今、自分の生き方を愛せていないひとへ、自分自身のことを好きになれないひとへ、このエッセイと歌詞が届きますように。 ~歌詞エッセイ【後編】:「 ID 」~ 産まれた瞬間から生き方の半分ぐらいは決まってしまうのではないか、と考えていたことがある。それは遺伝だったり、環境だったり、起因するものは様々である。 例えば、ありがたいことに私は音楽家を生業とさせていただいている。もし両親が何かの楽器に通じていたり、音楽が好きで日常に質の良い音が溢れていたり、はたまた著名で実力のある音楽家であったとする。子供が将来音楽に関わる仕事をしたいと思うのなら、かなりのアドバンテージになり得るだろう。何にせよ周りの環境というものは、生きていく上でかなり重要だと思う。幸い我が家にはよく歌う母がいて、ピアノがあった。音楽に興味を持つには十分だった。才能の有無は別として。 私は、残念なことに努力の限界というものは存在してしまうと思っている。正確には才能の限界なのかもしれない。よく友人と「金持ちと顔の良さは才能だよな」と冗談と嫉妬交じりで話す。悲しい。誰しもが、あの人になりたい、あの人の人生を歩みたかったと、当人の苦悩や葛藤をよく知りもせず思ったことがあるだろう。どんなに頑張ったとしても、憧れる人そのものにはなれない。容姿も声も才能も人間関係も、生きてきた軌跡も、その人だけのものなのである。 私は私に音楽の才能があるとは思っていない。器用貧乏。劣等感も常にある。憧れは遠い。いつまで音楽で生きていけるかもわからない。傍から見るとないものねだりなのかもしれないが。 ただ、そう自覚した上で、私自身のことを好きでいられている。好きになれたのは最近になってからだと思う。嫌いだった部分を好きだと言ってくれる人もたくさん出来た。きっと一人で音楽をやっていたらとうの昔に辞めていた。メンバーや両親や友人達、周りで関わってくれている人達に本当に恵まれていると思う。その人達がいることが私にとっての一番の才能だと思っている。まあただ単にポジティブすぎるだけかもしれない。 ここまで云々書いておいてなんだが、別に何かの才能があろうとなかろうと、環境が良かろうと悪かろうと好きなことをすればいいと思う。劣等感まみれで生きればいいと思う。産まれた瞬間に生き方が決まるなんてたまったもんじゃない。自分の好きなところを増やすことも大切だが、嫌いなところもずっと持ち続けてもいいと思う。それが強みになる時と場合がある。不思議である。 いつか最低な自分を愛せますように。 <サイダーガール・Yurin> ◆紹介曲「 ID 」 作詞:Yurin 作曲:Yurin ◆5th Single『落陽/ID』 2020年9月2日発売 初回限定盤(CD+DVD) UPCH-7568 ¥2,000(税抜) 初回限定アニメジャケット盤(CD) UPCH-7569 ¥1,300(税抜) 通常盤(CD) \1,200(税抜) / \1,320(税込) UPCH-5974 UNIVERSAL MUSIC STORE 限定 『サイダーガール アニメジャケット盤絵柄 T シャツ』付初回限定アニメジャケット盤 ¥5,500(税抜)

    2020/09/08

  • サイダーガール
    夕焼けと思い出はセットだ。
    夕焼けと思い出はセットだ。

    サイダーガール

    夕焼けと思い出はセットだ。

     2020年9月2日に“サイダーガール”が両A面ニューシングル『落陽/ID』をリリースしました。ドラマ『おじさんはカワイイものがお好き。』の主題歌として書き下ろされた「落陽」は、内なるエナジーを最大限にぶつけた、疾走感あるロックチューン。アニメ『炎炎ノ消防隊 弐ノ章』エンディング主題歌として書き下ろされた「ID」は、理想と現実の葛藤を抱える不器用な自分も、いつか愛せるようにと希望を込めた、ミドルテンポの優しいメロディが心地よい楽曲。サイダーガールの魅力を存分に詰め込んだ一作です…!  さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“サイダーガール”による歌詞エッセイをお届け!【前編】はメンバー・知が執筆。綴っていただいたのは、新曲「 落陽 」にまつわるお話です。みなさんには、憧れはありますか?コンプレックスはありますか? 「落陽」に込められた想いを是非、歌詞と併せて受け取ってください。 ~歌詞エッセイ「 落陽 」~ 夕焼けと思い出はセットだ。 夕焼けを見ていると色んなことを思い出す。愁いでいる時にふと窓の外を見れば、夕焼けが街を赤く染めている。そんな単純明快な日々の中、生きてきたのだといつも思う。 大人になれば好き嫌いが減ると思っていた。そんな理想の大人にはなれず、好きなものも嫌いなものも、段々と増えていった。比例して、自分の好みを大っぴらに人に話す機会もあまり無くなった。自分を顧みると、減るのではなく言わないだけなのかな、とも思う。誰でも、好きなものは心の中に抱えているんだと改めて感じると、沈んでいた気持ちがほんの少し軽くなった。 原風景は覚えていないが、気が付いたらバンドサウンドが好きで、友人と好きな音楽を共有している時もバンドの話ばかりだった。そうして当然のように自分もエレキギターを手にしてからは、振り返る過去にはギターが、バンドが、音楽が、必ず付いてくるのだ。古いTシャツからじっとりと感じる汗の匂いのように、僕の人生からはあの時初めて鳴らしたEコードの音がどうやっても染み付いて消えない。 こんにちは。知です。ともって読みます。サイダーガールのギターを担当しています。作詞作曲もしています。 今回、「落陽/ID」リリースにあたり、うたコラムを書かせて頂くことになりました。よく爽やかな曲を書いてるので本人も爽やかなんでしょう、と言われますが全然そんな事はありません。休日は引きこもってゲーム実況を見ながらずっと寝ています。あまり外出しないので、外に出るとすぐ日焼けします。友人にバレたくないというネットリテラシーの高さ故に、顔出しをしていないバンドをやっています。どちらかと言えば間違いなく陰属性なので、生温かくて滑る何かを触るように読んで下さいね。 僕は憧れとコンプレックスについてよく考えます。それがあるからこそ音楽という形を通して自分を表現したいのかもしれません。不思議なものですが、憧れは常に変わります。誰かに認められたいからではなく、自身が認めたいからなのだと思います。憧れになれない自分に対する劣等感で胸がいっぱいになります。そんな事でばかり悩んでちゃ損だよ、とたまには自分を慰めたくなります。 しかし、それを忘れてしまうとなんだか自分ではなくなってしまう気がしてしまうのです。人それぞれが持ち合わせている原動力、エナジーがたまたま僕の場合はこの二つだっただけなのです。 ギターロックって格好良いじゃん。そんな安直な思いから生まれた曲ですが、体現できたと思います。ただ単に、僕がギターロックが好きで憧れているからでしかないのです。とやかく言いましたが、この曲がどんな曲かなんてそれぞれの感性で受け止めてもらって構わないです。でも、この「落陽」を聞いて感じるものが、少しでもあなたのエナジーになればいいなと思います。 夕焼けと思い出はセットだ。 あの時初めて鳴らしたEコードを思い出しながら、今日もまた夕焼けが僕を赤く染めている。 <サイダーガール・知> ◆紹介曲「 落陽 」 作詞:知 作曲:知 ◆5th Single『落陽/ID』 2020年9月2日発売 初回限定盤(CD+DVD) UPCH-7568 ¥2,000(税抜) 初回限定アニメジャケット盤(CD) UPCH-7569 ¥1,300(税抜) 通常盤(CD) \1,200(税抜) / \1,320(税込) UPCH-5974 UNIVERSAL MUSIC STORE 限定 『サイダーガール アニメジャケット盤絵柄 T シャツ』付初回限定アニメジャケット盤 ¥5,500(税抜)

    2020/09/07

  • ラブリーサマーちゃん
    悪戯に、自己アップデート欲求を刺激されても、私は簡単になびかない
    悪戯に、自己アップデート欲求を刺激されても、私は簡単になびかない

    ラブリーサマーちゃん

    悪戯に、自己アップデート欲求を刺激されても、私は簡単になびかない

     2020年9月16日に、ピチピチロックギャルの“ラブリーサマーちゃん”が、4年ぶりとなるフルアルバム『THE THIRD SUMMER OF LOVE』をリリース!今作は、UKロックやネオアコースティック、ローファイなどへの憧憬が感じられるロックアルバム。ライブ会場のみで披露されていた人気曲「More Light」「豆台風」「I Told You A Lie」などの新曲を含む全11曲が収録されております。  さて、歌ネットではそんな最新作から新曲「AH!」の歌詞先行公開スタート!さらに、今作の初回限定盤限定ブックレットに収録の「AH!」セルフライナーノーツも独占先行公開です!今、あなたには“自己実現欲求”がありますか? その欲求は、見えない誰か、何かに、無責任に刺激されているものではありませんか…? 是非、歌詞と併せて、彼女の想いを受け取ってください。 ~M1.「 AH! 」セルフライナーノーツ~ 2019年の年始、映画『ファイト・クラブ』を観た。私が“こんなのおかしい”と思ってきたことがクリティカルに表現されていて、触発されてこの曲を書いた。 この歌詞を書いた2019年4月頃、私は大学4年生だった。芸術系の大学だったためか、皆何かを作りたがり、何者かになりたがっていた。やりたいこと・なりたいものがあり、それに対して一生懸命になるのは素晴らしい。だが、そういった自己実現欲求を養分にして誠意のかけらもない金儲けをするシステムがあり、そういった輩に騙されるアホな自分や友達がいた。 例えば声優や俳優の養成所、「これを飲むだけで-10キロ!」と謳うYouTubeのダイエット広告、スター発掘番組。まともな養成所もダイエット商品も何処かにはあるのだろうが、私の周りにあったものは違った。4年間俳優の養成所に通った友達は無給のエキストラ止まりだった。彼の才能が無かっただけかもしれない、養成所に通い続けることを選んだのは彼自身であるからそれで良い。だが、彼が支払ったレッスン料で、売り出し中のタレントの広告が打たれている。なんでもないことかもしれないがやりきれなかった。 「太ったら恋人に浮気され、痩せて見返して幸せをゲット!」といったストーリー仕立てでダイエット商品を売るYouTubeの広告も、「なんでもなかった君が一夜にしてスター!」と謳うテレビ番組も、“今の自分より高度な自分になりたい”という夢とか希望とかいったものを悪戯に煽って弄んでいるようにしか見えなかった。 ダイエット商品の購入も、オーディション番組に出演するという決断も悪くはない。その人が満足していればそれでいいが、“今の自分より高度な自分になるべき、今より良い暮らしをするべきなんですよ”と見えない何かからいつの間にか洗脳されているなんてことはないだろうか。 本当に、今より高度な自分になるべきなのだろうか。今のままでも十分なのではないか?今の自分じゃ足りない!ダメだ!痩せなきゃ!頑張らなきゃ!と思い続けるのは辛いことなのではないか?今のままの自分に十分に価値があると思えないから、胡散臭いシステムや商品にお金を払いそうになってしまうのではないか、それは悲しいことなのではないか。 そして、“自分をアップデートしなくてはならない”という価値観が、誰かの金稼ぎのために巻き起こったものだとしたら? ファイト・クラブは、戦後 資本主義と個人主義が推し進められた現代を、病める時代として描いた作品であると解釈している。 戦時中、人は大勢戦死するが、自殺者は少ない。戦争によって巨大な敵が現れ、敵に勝つという目的、役割、やるべきこと、意義が与えられ、国民は団結してアイデンティティを獲得できるためである。 戦争に限ったことではない。受験後の燃え尽き症候群、定年退職した人の鬱、そして犬を飼うことによってその鬱が良くなっていく等。人は“やるべきこと”を失って暇になると精神のバランスを崩す。 戦後、日本やファイト・クラブの舞台となっているアメリカは、他国と戦うという大義を失った。 社会学者、デュルケームは、自殺の要因を大きく四つに分け、その中の一つを“アノミー的自殺”とした。アノミー的自殺とは、社会の規範の弛緩や崩壊により、個人の欲求への適切なコントロールが働かなくなる結果、無制限の欲求に駆り立てられる個人における、幻滅、虚しさによる自殺である。 以下にデュルケーム「自殺論」を引用する。 豊かさは、それが与える力から、自分の力でなんでもできるという幻想をいだかせる。それは、物がわれわれにおよぼしていた手ごたえを減じさせるので、そのため、われわれは、物をいくらでも手に入れることができると思いこんでしまう。ところで、人は、自分に限界が課せられていないと感じると、あらゆる制限をますます耐えがたいとおもうようになるものである。 ~中略~ 今確認してきたこの第三の種類の自殺は、人の活動が規制されなくなり、それによってかれらが苦悩を負わされているところから生じる。その原因にちなんで、この種の自殺をアノミー的自殺と名づけることにしよう。 ファイト・クラブの主人公のセリフを引用する。 「宣伝文句にあおられて要りもしない車や服を買わされてる 歴史のはざまで生きる目標が何もない 世界大戦もなく 大恐慌もない 俺たちの戦争は魂の戦い 毎日が世界大戦で、毎日が解放の日だ テレビは言う“君もある日、ミリオネア、ムービースター、ロックスター” だが それは違う その現実を知って俺たちはムカついてる」 この通りだと思った。このセリフを曲にしたいと思って曲を書いた。勿論私は戦争を肯定しない。絶対に起こってほしくないことだと思っている。しかし、大きな困難や意義がなくなった時代で人間が次に戦うのは自己である。自己との戦いは大きな精神的苦痛である。そしてその自己との戦いを資本主義が加速させていく。 本来私たちは生まれながらにして尊厳を持っている。太っていたって、何者かでなくたって誰だって持っている。なのにいつの間にか財布も尊厳も、見えない誰か、何かに握られている。“そんなの何も気にしてない、自分は自分に満足しているし自己をアップデートしなくてはいけないような気にさせられたことなどない”と言う人も勿論いるだろうが、ある日の私や私の周囲はそうでなかった。 夢みがちな“If”の話を無責任にこちらにチラつかせ、畏怖させ、洗脳し、誰かの尊厳を少しづつ削る世の中を思うと、アーーーーーーーーとしか言えなかった。 そして、アー!と歌いまくり、この曲ができた。 悪戯に、自己アップデート欲求を刺激されても、私は簡単になびかない、騙されない。そういうことを歌いたかった。 <ラブリーサマーちゃん> ◆紹介曲「 AH! 」 作詞:ラブリーサマーちゃん 作曲:ラブリーサマーちゃん ◆3rd Full AL『THE THIRD SUMMER OF LOVE』 2020年9月16日発売 初回限定盤 COCP-41239 ¥3,300 + tax 通常盤 COCP-41240 ¥2,500 + tax <収録曲> M1. AH! M2. More Light M3. 心ない人 M4. I Told You A Lie M5. 豆台風 M6. LSC2000 M7. ミレニアム M8. アトレーユ M9. サンタクロースにお願い M10. どうしたいの? M11. ヒーローズをうたって

    2020/09/04

  • ヒグチアイ
    贅沢。風呂トイレ別ってだけで。
    贅沢。風呂トイレ別ってだけで。

    ヒグチアイ

    贅沢。風呂トイレ別ってだけで。

     2020年9月2日に“ヒグチアイ”が自身初のベストアルバム『樋口愛』をリリースしました。彼女は、静と動が混在するスリリングなライブステージで、聴く者に呼吸することを忘れさせてしまうくらいの表現力持ったアーティスト。自身の活動キャリアから名曲の数々を選りすぐった作品となります。新曲「八月」「東京にて」の2曲も収録…!  さて、今日のうたコラムではそんな最新作をリリースした“ヒグチアイ”による歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回はその第1弾です。綴っていただいたのは、今作の1曲目に収録されている「 ココロジェリーフィッシュ 」にまつわるお話。この歌詞の背景を、想いを、リアルを、是非彼女の言葉から感じてください。 ~歌詞エッセイ第1弾:「 ココロジェリーフィッシュ 」~ 19歳。はじめての一人暮らし。 実は、父親に同棲させてくれと頼んだら、一人暮らしもしてないのに絶対ダメだと言われ、渋々同じマンションに引っ越すことにしたのだ。洗濯機も冷蔵庫も買わないはじめての一人暮らし。 はじめてならこんな物件がオススメですよ。不動産屋は口がうまくなけりゃ務まらない。父親のバックアップがあるとわかれば、相場より高い物件を勧めてくる。 世の中、当たり前だと思っていることが、実は全然違うことってある。一軒家で育つこと、クリスマスにはサンタが来ること、長い休みには祖父母の家に行くこと。両親が築き上げたものを、当たり前として提供してくれていただけのことだった。 風呂トイレ別。それだけで贅沢だった。塀をよじ登れば入れる、形だけのオートロックマンションは、今住んでいる家より高かった。 そこに住んでいた一年半で、どん底の貧乏を味わうことになる。お客さんの差し入れのお菓子を晩ご飯に食べて、ポケットや鞄に迷い込んでる100円を探して、銀行窓口へ通帳を持って行き三桁の小銭を下ろす。風呂トイレ別がわたしにくれたものは貧乏だけ。オートロックが教えてくれたものは、鍵を忘れて出ていくと大変なことになるってことだけだった。 それでも、下手くそながら作る料理も、それを一緒に食べる行為も、二人で布団に入りながらアニメを見る夜も、全てが楽しかった。その中で書いた曲が「 ココロジェリーフィッシュ 」だ。今作の中で一番古い曲。未だに人気のある曲。当時の彼氏がさしていた黒い折り畳み傘は歌詞に出てくる。 苦労から抽出されたエネルギーをいつまでも燃料にしていられない。でも未だに、その日々がわたしを照らしてくれている。その灯りで、わたしはわたしを見つけることができるのだ。 <ヒグチアイ> ◆紹介曲「 ココロジェリーフィッシュ 」 作詞:ヒグチアイ 作曲:ヒグチアイ ◆BEST ALBUM『樋口愛』 2020年9月2日発売 TECG-33130 ¥3,000-(tax out) <収録曲> 1. ココロジェリーフィッシュ 2. 前線 3. 東京 4. まっすぐ 5. わたしのしあわせ 6. ラジオ体操 7. 猛暑です- e.p ver - 8. 八月(新曲) 9. 黒い影 10. わたしはわたしのためのわたしでありたい 11. 最初のグー 12. 備忘録 13. 東京にて(新曲)

    2020/09/03

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